スポーツ・バイオメカニクスの世界的権威、ヤン・フー・クォン教授によれば、地面反力を最大限に活用するためには誰しもが一度は習った“てこの原理”が重要だという。クォン教授と吉田洋一郎プロの共著「驚異の反力打法~飛ばしたいならバイオメカ」より、2日連続でお届けする「地面反力で飛距離が上がる仕組み」を解説するシリーズ、その前編をお届けする。

てこの原理をスウィングに生かそう

ゴルフスウィングは「前後軸」、「垂直軸」、「飛球線方向軸」の3つの軸を持った動きです。この共通認識のもと、「地面反力」がゴルフスウィングにどのように作用するべきかを、より詳しく説明していこうと思います。

画像: スウィングには3つの軸がある(イラスト/浦上和久)

スウィングには3つの軸がある(イラスト/浦上和久)

「前後軸」に対して「地面反力」が作用して回転を促進する模式図(写真A)を見てみましょう。この写真の歯車の中心部分を、同じ「地面反力」でより効率よく回すためにはどうすればいいかわかりますか?

画像: (写真A)体の重心を中心とした回転運動を考えたとき、「地面反力」は、回転を促進する力として非常に有効(撮影/姉崎正)

(写真A)体の重心を中心とした回転運動を考えたとき、「地面反力」は、回転を促進する力として非常に有効(撮影/姉崎正)

答えは、歯車の直径を大きくすればいいのです。よりわかりやすくイメージするのであれば、歯車ではなく、中心=重心点にあるナットをスパナで回す様子をイメージしてみてください。このスパナの柄が長いほど、同じ反力で高い回転力を得られるということがわかると思います。

これは、誰でも知っている「てこの原理」です。物理の世界ではこのスパナの柄を「モーメントアーム」と呼びますが、「モーメントアーム」が長ければ長いほど、「地面反力」を高い回転力に変換することができるというわけです。

画像: モーメントアームが長いほど地面反力は高い回転力に変換される(イラスト/浦上和久)

モーメントアームが長いほど地面反力は高い回転力に変換される(イラスト/浦上和久)

これを再度スウィングに置き換えて考えると、「地面反力」が作用するポイントを、「前後軸」の中心(=体の重心)よりも遠いところに置けば、「モーメントアーム」は長くなるということです。具体的には、「地面反力」のベクトルが(通常はダウンスウィングの初期に)重心の右側を通っていれば(体の正面から見て)、反時計回りのトルクが生じます。

「地面反力」のベクトルが重心を通過してしまっては「モーメントアーム」の長さがゼロになって回転力が生まれませんし、反対に重心よりも左側を通るようなことがあれば、スウィングの回転と逆方向のトルクが生じ、スムーズなスウィングを妨げることになってしまいます。

では「地面反力」のベクトルをコントロールするためにはどうすればいいのか。それについてはまた明日お話します。

※次回、後編は2019年1月14日(月)16時半公開予定です

「驚異の反力打法~飛ばしたいならバイオメカ」(ゴルフダイジェスト社)より ※一部改変

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