女子ツアーはオフシーズンの真っ最中。ツアーで活躍する女子プロ・幡野夏生は2019年シーズンに向けて、「地面反力」を取り入れたスウィングの習得を目指しているという。最近目にすることの多い「地面反力」をプロたちはどのように考えているのか。幡野をはじめ数多くの女子プロを指導してきたプロコーチ・井上透に聞いてみた!

オフシーズン、女子プロたちはトレーニングや練習を重ねて開幕へ向けて調整していくわけだが、長期間試合がないということはシーズン中には手を出しづらいスウィング改造に取り組める期間とも言える。

ツアーで活躍する女子プロ・幡野夏生もそのうちの一人。2018年8月から11月にかけて行われたファイナルQT(翌シーズンの出場権をかけた予選会)で49位の成績を残した彼女は、全試合に出場できるというわけではない。

「2019年の目標は数限られた試合の中でシード権を取れるように、まずはパーオン率とドライバーの飛距離アップを頑張ります」(幡野)

そう語る幡野が現在取り組んでいるのが、ヘッドスピードの向上。そのために地面反力を活かしたスウィングを身に着けているという。

「今までは体の回転だけで振っちゃってたんで、地面反力を活かして振りたいなと思っています」(幡野)

昨今なにかと取り沙汰される「地面反力」。簡潔に言えば、スウィング中に足を強く踏み込むことで地面から返ってくるエネルギー(反力)を回転力に変えてヘッドスピードを上げるという理論。

PGAツアーのトップ選手をはじめ、地面反力をスウィングに取り入れているプロは多く、アマチュア向けのゴルフ雑誌にも度々登場するので一度は目にしたことがあるのではないだろうか。地面反力を取り入れた幡野のスウィングを体の回転だけで振っていた頃と比較してみると、たしかに右足の踏み込みが強くなり、全体的に力強さが増している。

画像: 体の回転だけのスウィング(写真左)よりも地面反力を取り入れたスウィング(写真右)の方が地面を強く踏み込んでいるのがわかる

体の回転だけのスウィング(写真左)よりも地面反力を取り入れたスウィング(写真右)の方が地面を強く踏み込んでいるのがわかる

この地面反力という理論について、幡野はもちろん、成田美寿々、川岸史果ら数多くの女子プロを指導してきたプロコーチ・井上透はどういう捉え方をしているのだろうか。

「ここ3年くらい地面反力っていう理論が世界的に広まってきて、少しずつ選手たちにも取り入れてもらおうと思っています。地面反力と聞くと『難しくてできないのでは?』と感じてしまうアマチュアゴルファーの方もいらっしゃると思うんですけど、実はプロアマに限らず、誰がやっても効果があります。

僕も検証のため実践してみた結果、ヘッドスピードが大体47.5m/sくらいだったんですけど、(地面反力を活用して振ると)50m/sくらいまで上がりました。ヘッドスピードが2m/s上がるってすごいことで、飛距離に換算したら15~20ヤード伸びています」(井上)

地面反力が非常に有効であることは疑いようがないが、その一方で選手が結果を出す手助けをする立場として、考えなければならないことも多いという。

「少しタイミングが難しいんです。地面反力を得るためには、比較的早い段階から重心を左下にかけてそこから蹴るという動作を使わなければいけないわけですけど、体重を左下に入れすぎて蹴るタイミングが遅れたり、今度は早く蹴りすぎたり、上半身と下半身がズレたりと、テクニック的に難しい点が数多くあります。簡単にアマチュアの人が『はい蹴りましょう!』みたいな感じで上手くいくほど甘くはないのがこの技術です。

私なりの地面反力の捉え方なんですが、まず今までのゴルフの技っていうのは体操界でいう『ムーンサルト』くらいの立ち位置なんです。ムーンサルトでオリンピックの金メダルが取れていた時代がありましたよね。でも現在最大H難度まである体操競技の技の中でムーンサルトはC難度、簡単な部類なんです。それだけ技の難度が上がっていて、それはゴルフでも同様です」(井上)

体操競技でムーンサルトだけでは勝てなくなったように、ゴルフもトッププロの世界では既存の技だけでなく地面反力も活用していかなければならない。しかし目に見えて成果が出る一方で、そのタイミングの難度ゆえに100%成功するとは言い難いのが非常に悩ましいポイントだ。

「たとえば地面反力を活かして300ヤード飛ばせるテクニックを会得しても、成功確率が悪かったら確実に成功する『ムーンサルト』のほうが良いわけです。だから、技術を選手に提供するということに関しては、確率と飛距離を天秤にかけなければならないと正直思っています。コーチとして非常に悩ましいのは、これが出力の高い方法だとわかっていながらも、確率が高いのはどっちなんだということを常に考えさせられているということ。

だからアマチュアのみなさんもぜひ一回は試してみてください。やってみると当然出力は高くなります。でもそれがイコール確率が高くなるとは限らない。ここが難しいところですよね」(井上)

そう、まずは試してみなくては始まらない。そして、新シーズン、試合会場で幡野夏生を見かけたら、地面反力を使ってスウィングしているかどうか、ぜひチェックを。

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