スポーツ・バイオメカニクスの世界的権威、ヤン・フー・クォン教授によれば、「地面反力」を有効に使うためにはまず従来のスウィング理論を見直す必要があるという。クォン教授と吉田洋一郎プロの共著「驚異の反力打法~飛ばしたいならバイオメカ」より、地面反力を活かす体の動きについてご紹介。

左のカベは「地面反力」が作ってくれる

「地面反力」を有効に使うために。従来のスウィングの考え方と異なるイメージを持ってほしい点がいくつかあります。

従来のスウィング理論では、ダウンスウィング以降で体が左に流れるのを防ぐ「左のカベ」を重視し、「左足を踏ん張る」とか「左ひざを曲げたままキープする」というような指導が多く行われてきました。しかしこういった考え方は、「地面反力」を使ってスウィングする上では、スムーズな動きを阻害し、「地面反力」の働きを損なうことにつながります。

「地面反力」は、地面を押したときに地面から体に対して反対方向に発生します。発生した力は、それを妨げることなくセンター・オブ・マス(体の質量の中心・重心)のヨコを上方向に突き抜けていくことで、体の回転を最大限に加速します。切り返しで左足を踏み込んだらダウンスウィング中に左ひざを伸ばして、地面から発生した反力を有効に使わなくてはなりません。

このとき「左ひざを踏ん張る」とか「左ひざを曲げたままキープする」という意識を持っていると、「地面反力」を生かすことができなくなるというわけです。

ジャスティン・トーマスやレクシー・トンプソンのようにインパクトでジャンプするように見える選手は、この加重と「左ひざを伸ばす」動作を非常にスピーディに行っています。こういったタイプの選手は、右足を「蹴る」というように表現することが多いですし、比較的静かに行うタイプの人は左足を「踏む」とか「地面を押す」というような表現になりやすいと言えます。

画像: ジャスティン・トーマスのように、左に踏み込んだあと、左足を踏ん張らずに「伸ばす」ことで地面反力をムダなく回転に利用することができる(写真は2018年の全米オープン 撮影/岡沢裕行)

ジャスティン・トーマスのように、左に踏み込んだあと、左足を踏ん張らずに「伸ばす」ことで地面反力をムダなく回転に利用することができる(写真は2018年の全米オープン 撮影/岡沢裕行)

このとき反力は、センター・オブ・マスの左側 (左足寄り)を通るので、体が左に突っ込むのを防ぐ力にもなります。「左のカベ」は、踏ん張ることによって自分の内力で作ろうとしなくても、外力である「地面反力」が自然と作ってくれるというわけです。

上下動はタブーではない

もう1つ、従来のスウィング理論の概念から意識改革をしてほしい点があります。それはスウィング中の上下動です。

スウィング中に体が上下に動くのは、ミート率を損なう原因として、従来のスウィング理論の多くでタブーとされてきました。これは、「垂直軸」のことだけを考えてスウィングするうえでは間違っているとは言えませんが、「前後軸回転」も考慮し、「地面反力」を使ってスウィングするうえでは明らかに不適切です。

実際、ゴルフスウィングはクラブや腕といった重量物が上下左右に動く動作です。そのなかでは、前述のように「飛球線方向軸」の回転を使うなどしてクラブの遠心力と体が引っ張り合うことが重要で、そのためには必ずしも上下動がタブーにはなりません。むしろ、積極的に上下動を使ってスウィングするほうがヘッドスピードを上げる上では非常に有効なのです。

具体的には、まず右足で地面を押した反力で伸び上がりながらバックスウィングしていきます。そして切り返しで左にしっかりと踏み込んで地面に圧をかけるので、ここで重心は下がります。そしてその反力を使ってクラブを加速させていくとともに、クラブの遠心力と拮抗するため、インパクト前後からフォロースルーにかけては伸び上がる動きが生じます。つまり、スウィング中に体は、「上→下→上」と上下動を繰り返すのです。

スライスに悩むアマチュアゴルファーの多くには、ダウンスウィングで腰が前に出て上体の前傾角度が大きく起き上がってしまうケースが見られます。そういう人は「インパクトで伸び上がる」と指摘されることも多いと思います。

しかし、こういった「悪い伸び上がり」は、バックスウィングでボールから遠ざかる感覚を嫌がるあまり、バックスウィングで沈み込み、その反動でダウンスウィングで伸び上がっているものです。むしろ、バックスウィングで伸び上がることを恐れなければ、ダウンスウィングでの悪い伸び上がりを防げるケースも多いのです。

「驚異の反力打法~飛ばしたいならバイオメカ」(ゴルフダイジェスト社)より

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