クラブの進化に伴って、日進月歩が続くゴルフスウィングの歴史。ベテランゴルフライター塩田正が、専門誌の記者としてその目で見てきたアメリカ式モダンスウィングの技術革新の歴史を、自身の著書「ゴルフ、“死ぬまで”上達するヒント」よりご紹介。

22歳、23歳、28歳で初のメジャーを制した「ビッグ3」たち

昭和32(1957)年、日本はカナダカップにおいて中村寅吉プロ、小野光一プロのチームで団体優勝。中村寅吉プロは個人優勝もさらって、日本に大きなゴルフブームを巻き起こした。しかし、まだその余韻が覚めやらぬころ、アメリカではスウィング技術の革新が、かなり進んでいた。

私はゴルフ専門誌のデスクに座っていて、昭和35(1960)年ごろから、メジャートーナメントの優勝者として、若手プロの名前がどんどん出てくるのに、大変びっくりさせられたのを覚えている。とくに後に「世界のビッグ3」といわれるようになったアーノルド・パーマー(米)、ゲーリー・プレーヤー(南ア)、ジャック・ニクラス(米)の活躍には、目を見張るものがあった。

画像: アーノルド・パーマー、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラス。後に「ビッグ3」と称された彼らはモダンスウィングをいち早く取り入れ、若くからトーナメントを席巻した

アーノルド・パーマー、ゲーリー・プレーヤー、ジャック・ニクラス。後に「ビッグ3」と称された彼らはモダンスウィングをいち早く取り入れ、若くからトーナメントを席巻した

一時期、ビッグ3が優勝カップを持ち回るがごとく4大トーナメントを席巻したのだが、加えてメジャー初制覇の年齢を見ると、ニクラスが22歳(1962年全米オープン)、プレーヤーが23歳(1959年全英オープン)、遅いパーマーでも28歳(1958年マスターズ)という若さ。この若いプロたちは、モダンスウィング開発の先駆者であったバイロン・ネルソンとベン・ホーガンの理論を継承した代表選手でもあった。

ネルソン以前の技術は、ハリー・バードンやボビー・ジョーンズのスウィングタイプが中心で、上体のねじり(コイル)やスウィング中の体重移動にあまり重きをおかず、上体のローテーションとクラブフェースの「オープン・トゥ・クローズ」(手首を使ってフェースをやや開いて上げ、インパクトでは手首の返しで元のスクェアフェースに戻す打法)の打ち方が主流であった。

このスウィングタイプに対して、当時の若手プロたちが目指したネルソンやホーガンのモダンスウィングは、まったく新しい打法であった。

ネルソンの新打法は「バックスウィングでは右ひざ、ダウンスウィングでは左ひざを曲げたまま、飛球方向へ平行移動させる動きが目立った」(『Method of Teaching』PGA of America=1972年刊)と、これまでにない動きが指摘された。

結果的に、スウィング中に腰の回転が少なく、アップライトな軌道で、インパクト以降もフェースを長く飛球線上にとどまらせる役割を果たした。形の上ではフィニッシュが、それまでの「直立型」から「逆C型」に変わったのだが、これも新しさを印象づける大きな要素だった。

画像: モダンスウィングではフィニッシュ時に体が反るような形に。その見た目から「逆C型」と呼ばれた

モダンスウィングではフィニッシュ時に体が反るような形に。その見た目から「逆C型」と呼ばれた

このネルソンの新打法は、エネルギー保存による効率活用とスウィング弧の大きさという点で、質的にも画期的な進化といえた。

大きな筋肉を使ったスウィングが生まれ、永遠の願い「飛んで正確に」に近づく

アメリカのスウィングの技術革新は、ネルソン後にベン・ホーガンがさらに改良の輪を広げていく。そのポイントは

・両手のY字が、ほぼ右ほおに向くスクェアグリップ
・両足の動きを制限して上体を回転させ強いコイルを生むバックスウィング
・ヘッドスピードを加速させる両ひざリードのダウンスウィング
・左手首の外転によるインパクト

などである(『Method of Teaching』既出)。

ホーガン打法には、ネルソンの新しい打ち方が多く採り入れられているが、さらに進化させている点は、バックスウィングで強力なコイルをつくり、ボディターンのパワーを高めるという動きである。それにインパクトで手首を使わずにボディターンと手首の外転力を利用したことなども目につく。もちろん、インパクトでのホーガンの外転力は、彼が推奨するスクェアグリップにその基本があったことはいうまでもない。

ホーガンのグリップは、第1点のように、両手のひらが飛球線とほぼ直角になるように握る、いわゆるスクェアグリップだが、インパクトではこの形に戻すために、下向きに下りてきた左手のひらをやや上に向くように回転させている。これが外転(サピネーション)である。このとき左手首は自分から見て、ほんの少し「く」の字になり凸型に見えるように変わった。目で見ると小さな変化だが、質的には上体のターンと手首で弾く打ち方から、コイル、ウェートシフト、ローテーションというボディアクションによる打ち方へと変化を遂げたのである。極端な話だが、小手先の打ち方から大きな筋肉を使ったスウィングへと変わったといってもよいかもしれない。

このネルソンやホーガンのモダンスウィングの利点は、インパクト時のヘッドの加速とスウィング中のオンプレーンが明確になった点である。いわば、ゴルファー永遠の願いである「FAR&SURE(飛んで正確に)」に1歩も2歩も近づいた進化といえるだろう。

「ゴルフ、“死ぬまで”上達するヒント」(ゴルフダイジェスト新書)より

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