先週開催された「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」はフィル・ミケルソンの勝利で幕を閉じた。48歳にしてまったく強さが色褪せないのは一体なぜなのか、海外での取材経験豊富な元ゴルフ誌編集長が秘密を探った。

ツアー通算44勝は歴代9位

先週の「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」を制したのは、48歳のフィル・ミケルソン。昨年のWGCメキシコ選手権以来11ヶ月ぶりの優勝で、ツアー通算44勝を記録し、PGAツアー優勝記録で45勝のウォルター・ヘーゲンにあと1つと迫った(史上9位)。

ペブルビーチとの相性も非常によく、ペブルビーチで優勝したのはこれで5回目。これはマーク・オメーラとともにペブルビーチ最多優勝記録である。大会中は悪天候のため中断が繰り返され、日曜日は日没サスペンデッドに。ミケルソンは2ホールを残して翌日にプレーを持ち越したが、仕切り直した月曜日は早朝から晴天に恵まれ、最終ホールではバーディフィニッシュ。2位のポール・ケイシーに3打差をつけて優勝したのだった。

「ここはボクにとってとても特別な場所なんだ。なぜならペブルビーチがオープンした1919年から、祖父がここのキャディをしていたから。そしてプロ入り後初めて出た試合が、ペブルビーチでの大会(全米オープン)だからね。ここには素晴らしい思い出がいっぱいあるし、ここでこうして今週勝ててとても嬉しい」

画像: 48歳にしてツアー通算44勝目を飾り、ますます元気なミケルソン(写真は2019年のウェストマネジメント・フェニックスオープン 撮影/姉崎正)

48歳にしてツアー通算44勝目を飾り、ますます元気なミケルソン(写真は2019年のウェストマネジメント・フェニックスオープン 撮影/姉崎正)

1919年、世界的に有名な風光明媚なリンクスコース、ペブルビーチGLが誕生。その当時のハウスキャディのオリジナルメンバーの中に、モントレー生まれのミケルソンの祖父、アル・サントスがいた。当時はまだ1バッグ担いで25セントという時代で、オリジナルキャディたちのモノクロの集合写真がペブルビーチ内に飾られていたと記憶しているが、その中にミケルソンの祖父の姿も写っている。そしてその祖父がくれたという、シルバーの1900年の1ドルコインを、ミケルソンはペブルビーチで戦う際は必ず使用しているのだ。

サントスは04年1月に亡くなったが、それはマスターズでミケルソンが初優勝を挙げる3ヶ月前のこと。もしかしたらかわいい孫の悲願のマスターズ優勝を、天国から見守ってくれていたのかもしれないし、今回の優勝も含め過去5回の優勝は、ペブルビーチを知り尽くした祖父が天国から導いてくれたものなのかもしれない。

全米オープンへ視界良好「過去最高にヘッドスピードが出ている」

さて、そのような神がかった想像をするだけでは、ミケルソンに対して失礼だろう。彼自身、実はオフの過酷なトレーニングによって柔軟性、筋力アップなどを図った結果、今年は約15ヤードほど飛んでいるのだという。現距離300ヤード以上の若手飛ばし屋だらけのPGAツアーにおいて、平均飛距離316ヤードは堂々5位の成績だ。

もうすぐ49歳を迎えるベテラン選手とは思えないほどの飛ばしっぷりである。以前ミケルソンといえば、ライバルであるタイガー・ウッズが程よくしまったアスリート体型であるのに対して、でっぷりとお腹の出たイメージが強かったが、最近では栄養士をつけ、生理学とスウィングについて勉強し、体調面でもコントロールされた状態にあるという。

彼のスウィングコーチ、アンドリュー・ゲトソンは「彼はどんどん強くなっている」と語るが、ヘッドスピードもアップし、本人曰く「過去最高にヘッドスピードが出ている」のだという。ミケルソンの弟で、バッグを担ぐティムもまた「ボクの方が7歳も年下なのに、彼の方が柔軟性もあるし、栄養面においてもいい状態。これはちょっと悲しいね(苦笑)」と語っているほど、今年のミケルソンの健康面・体力面では過去最高なのだそうだ。そして彼の弱点でもあったパッティングにおいてもまた、過去最高に入っているのだという。

「過去を振り返ってもたいてい40代に突入すると、2つのことが劣ってくる。パッティングとスウィングスピードだ。だが、ボクのパッティングについては、ここ3年間で改善し、28年間のツアー生活の中でもベストと言えるし、スウィングスピードに関しても過去最速となっている。一生懸命練習をしてきたこともあるが、去年と比べても5〜6mph(2メートル/秒)くらいは速くなっているんだ。実際はここ3〜4ヶ月の話だけどね」

画像: パッティングも「過去最高に入っている」という(写真は2019年のウェストマネジメント・フェニックスオープン 撮影/姉崎正)

パッティングも「過去最高に入っている」という(写真は2019年のウェストマネジメント・フェニックスオープン 撮影/姉崎正)

ここ最近のミケルソンは、自身が語るように過去最高のパフォーマンスを40代後半になって発揮しているのだ。大抵は飛距離も落ち、老眼が進んでライン読みも怪しくなり、思うようにパットで手が動かなくなってくるのが普通だが、彼は逆。食生活にも気を配り、柔軟性が失われる年齢だからこそ、ストレッチやトレーニングもしっかり行うことで、維持するどころかまだまだ進化を遂げている。恐るべき48歳である。

6月16日はミケルソンの49回目の誕生日であるが、この日はペブルビーチで開催される全米オープンの最終日でもある。今週のコンディションと全米オープンでは、同じコースでも全米オープンの方がラフは長いし、グリーンも硬くて速いからまったく別物だと語りつつも、今回の優勝によってさらに「ペブルビーチとの相性の良さ」を確信したに違いない。全米オープンで優勝すればキャリアグランドスラム達成というミケルソンにとって、ペブルビーチほど偉業達成にふさわしい場所は他にないだろう。

祖父からもらったシルバーコインをポケットにしのばせ、悲願の全米オープン優勝とグランドスラム達成の夢を、祖父の見守るペブルビーチで実現することができるかに注目が集まる。

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