見た目はシャープ、だが打つとやさしい。そんなクラブが増えてきているが、その流れはついにウェッジをはじめとしたクラシックな形状のクラブにまで押し寄せているようだ。ギアライターの高梨祥明が、最新ウェッジ、そしてアイアンのテクノロジーを解説。

内部に異素材を配置し、比重差で最適重心を狙う。

3月22日にタイトリストのボーケイフォージドウェッジが発売される。バックフェースをみれば非常にオーソドックスでシンプルな本格派ウェッジなのだが、このウェッジ、見えないところでものすごい先端技術が使われているようだ。

画像: フラットなバックフェースでクラシカルに見える、タイトリスト ボーケイフォージドウェッジ

フラットなバックフェースでクラシカルに見える、タイトリスト ボーケイフォージドウェッジ

とりあえず、その構造を分解イメージ画像で見ていただきたい。フェースを外すと、軟鉄ヘッド本体には3つに仕切られた部屋がある。そこに本体とは違う金属がはめ込まれ、そのあとにもう一度一体で鍛造されているのだ。

画像: 軟鉄ボディの内部に重たいタングステン(青部)、軽いチタン(黒部)を正確に配置し、一体鍛造する独自の技術Co-Forging。

軟鉄ボディの内部に重たいタングステン(青部)、軽いチタン(黒部)を正確に配置し、一体鍛造する独自の技術Co-Forging。

便宜上、青く表示されている部分がタングステン(高比重)だ。黒く見える部分がチタン(軽比重)である。画像の分解イメージはロフト52度のもの。トウ側を重たく、ヒール側とフェース上部を軽くすることで、一般のウェッジよりも重心がセンターに近づき、しかも低く設定することに成功しているのである。

タイトリストのボーケイウェッジは、独自のプログレッシブCGというロフト別の最適重心設計コンセプトをグローバルモデルのSM7でも採用している。46度〜52度は一般ウェッジよりも低重心、54度〜56度は一般ウェッジと同等、58度以上は一般ウェッジよりも高重心になるように工夫が凝らされている。こうすることによって打点と重心が近づき、より安定したウェッジショットが可能になる。つまり、使いやすいウェッジにすることができるのである。

SM7ではバックフェースの肉厚を変えることでロフト別の重心コントロールを行っている。厚い部分は重く、薄い部分は軽い、これにより重心位置を調整しているわけだ。今回のボーケイフォージドでは、バックフェースの肉厚はフラット。その代わりヘッド内部に比重の違う異素材を配置することによって、精密なロフト別の重心設計を実現したのである。

超絶難しそうなタイガー・ウッズのアイアンも、実は異素材複合!?

クラシカルで、一見難しそうに見えるウェッジでも最新の鍛造製法を用いることで、大いなるやさしさを付加することができる。実はこうした裏技的な重心設計は、トッププロが使うマッスルバックアイアンでも行われている。タイガー・ウッズがナイキ契約時代に使っていた、VR PROのマッスルバックアイアンがそうだ。

写真はその当時のプロトタイプのサンプルだが、ブレードの下部に丸い穴が開き、その傍にビレット状の金属が写っている。これが高比重金属タングステンである。なぜ、ここに重たい金属を仕込んだのか、その当時開発担当者に聞いたことがある。

「タイガー・ウッズのアイアンの打点を分析したところ、フェースセンターよりもややトゥ方向で打つ傾向がみられた。その打点にヘッドの重心を合わせるためにタングステンを埋め込んだんだ」(当時のナイキ開発スタッフ)

画像: タイガー・ウッズが使用していた、ナイキ製ブレードアイアンのサンプルヘッド。

タイガー・ウッズが使用していた、ナイキ製ブレードアイアンのサンプルヘッド。

狙いとしてはボーケイフォージドと同じである。クラシカルな形状を変えることなく、重心の位置を調整するために異素材を組み込んでいたのだ。ウッズのアイアンのように最終的にメッキをかけてしまえばタングステン圧入の痕跡はなくなり、傍目にはずっとオールドスタイルで、難しいアイアンを使っているように見える。しかし、実は裏技ともいえる新技術を使って、効率のよい重心ヒットを可能としていたわけである。

タイガー・ウッズは現在、テーラーメイド契約となり新しいパーソナルアイアンを開発中。詳細は明らかになっていないが、このアイアンでも見えないところで異素材コンポジット技術が使われている可能性は十分に考えられる。

難しそうに見えて、実はやさしい。“オオカミの皮を被ったヒツジ”のようなクラブが、技術革新によって生み出されている。古く見えるモノほどハイテク? そんなことも疑ったほうがいい時代である。

This article is a sponsored article by
''.