ゴルフのスウィングは、時代によって進化するゴルフクラブの影響を受け、これまた時代に応じて変化していくもの。「実は、パッティングにもそのような変化が見られます」と、ティーチングプロの永井延宏は言う。21世紀型のパッティング術と、そのために必要な道具について聞いた。

「チタンヘッドの大型化、軽量化の影響で、スウィングはパーシモン時代はもちろん、小型メタル時代と比べても大きく変化しています。一言でいえば、手先の動きを抑え、鍛えた体幹部分で振るようなやり方です。実は、そのようなスウィングの進化が、パッティングにも影響を与えています」

そう語るのは2006年にレッスン・オブ・ザ・イヤーを受賞したティーチングプロの永井延宏。永井はこの変化を、アドレス時の両ひじを結ぶ線を境として「ひじから先」と「ひじより手前」に分けて説明する。

「最近のスウィングのトレンドは、いかに『ひじから先』の手先を使わずに、『ひじより手前』すなわちより体幹に近い部分を使うかというもの。世界のトップ選手たちはクラブが大型化し曲がらなくなったことで、体幹部分からどれだけパワーが出せるかを競っている様にも見えます。そのため、今はスタート前にジムに行ってトレーニングをするのも当たり前の時代になりました。以前は朝までお酒を飲んで、ホテルのバーから1番ティに向かってそのまま優勝するのがプロゴルファーのダンディズムなんていう頃もありましたが(笑)」

画像: 鍛え上げられた筋肉がわかるブルックス・ケプカのトップ。曲がらないクラブを背景に、パワー合戦的側面が今のゴルフにはあると永井は指摘する(撮影/岡沢裕行)

鍛え上げられた筋肉がわかるブルックス・ケプカのトップ。曲がらないクラブを背景に、パワー合戦的側面が今のゴルフにはあると永井は指摘する(撮影/岡沢裕行)

そしてパットでも同じように「『ひじから先』をいかに使わないかを最近のプロたちは考えている」と永井は指摘する。

「背景には、グリーンの高速化とパター自体の進化が挙げられます。以前のL字やキャッシュインといったパターは、かがんで構えて身体を固め、手先の感覚で打つのが正解でした。しかし、それだとどうしても高速グリーンでシビれてしまう。緊張すると手先が震えますよね。つまり、ひじより先は器用な反面プレッシャーに弱い。そこで、体幹でパッティングする技術がスタンダードになり、それに適した弁当箱のような形状のパターや、極太のグリップをツアープロが好んで使うようになってきたのです」

画像: 太グリップを採用し、右手はクローグリップのジャスティン・ローズ。ヘッドも大型だ(撮影/姉崎正)

太グリップを採用し、右手はクローグリップのジャスティン・ローズ。ヘッドも大型だ(撮影/姉崎正)

永井によれば、「体幹でパターをコントロールするためのインターフェースとしては、太いグリップのほうがやりやすい」のだという。

「太いグリップに弁当箱型ヘッド、それに右手ならクロウグリップ、左手ならアームロックとひじから先を『殺す』握り方を採用することで、プレッシャーに強い“体幹パッティング”が完成します。代表選手がキーガン・ブラドリー。彼はアンカリング規制後の低迷から昨年復活優勝を遂げましたが、アームロックとクロウグリップのミックスです。まさに時代の最先端という感じがしますね」

画像: 左腕を中尺パターに固定するアームロック式を採用するブラドリー(撮影/姉崎正)

左腕を中尺パターに固定するアームロック式を採用するブラドリー(撮影/姉崎正)

ただ、ブラッドリーやマット・クーチャーなどが採用する、中尺パターを左腕に固定してストロークするアームロック式パットは、アドレス時に自然とハンドファーストになるため、パター自体にロフトをつけたりネックをオフセットにするなどチューニングが必須となり市販のパターををそのまま使ってという訳にはいかず、現状ではツアーサポート環境下でないとやりにくいという。

パットを体幹で打つ感覚が身につけば、それがスウィングに好影響を与える可能性がある。「パットに型なし」という言葉があるが、進化を続ける道具の恩恵を受けようと思えば、大型ヘッドに太グリップを組み合わせ、ひじより手前の感覚でストロークすれば、ひじから先でパットしていたゴルファーには別世界が見えるかも。

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