アーノルド・パーマーインビテーショナルでツアー3勝目を挙げたフランチェスコ・モリナリ。昨年から欧州ツアーを含め短期間で4度優勝し、調子が上向いているモリナリ。その要因は技術面よりも“メンタル面”での進化が大きかった。

PGAツアー初優勝以来出場12試合で3勝を挙げた

昨年は、クイッケンローンズナショナル、全英オープンと年間2勝を挙げたフランチェスコ・モリナリ。先週のアーノルド・パーマーインビテーショナルでツアー3勝目を飾り、昨年のクイッケンローンズナショナル優勝以来、PGAツアー出場12試合で3勝を達成した。

この勝利により、フェデックスカップで151位だったのが、一気に20位まで浮上。世界ランクも7位とランクアップした。昨年から今年にかけてのオフは、「冬の間はできるだけ長く休みを取って、リラックスしてからゴルフに取り組めるのがいいと思っていた」そうだが、その作戦が功を奏し、マスターズ前の3月上旬にビッグイベントで優勝。「スロースターター」のモリナリにとって今季序盤から、好スタートを切ることができたようだ。

画像: アーノルド・パーマーインビテーショナルで今シーズン1勝目を挙げたフランチェスコ・モリナリ(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

アーノルド・パーマーインビテーショナルで今シーズン1勝目を挙げたフランチェスコ・モリナリ(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

最終組から10組前にスタートしたモリナリ。最終組でスタートしたマシュー・フィッツパトリックは3日目を終えて昨年のディフェンディングチャンピオンであるローリー・マキロイに1打差をつけ首位に立っていたが、最終日のプレーぶりは米ツアー初優勝のプレッシャーからか、2バーディ1ボギーと停滞気味。そうこうしているうちにモリナリがノーボギーの64でホールアウトし、トータル12アンダーでクラブハウスリーダーとなった。

「だんだんグリーンが硬く、早くなってきていたし、きっと上位陣にとってもやさしくはないだろうと思っていた。とすれば、僕のような蚊帳の外の人間にもチャンスがある」

自身、パットは人生で最も決まっていたと記者会見で語っていたが、持ち前のショットの精度の高さにおいては、「ストロークゲインド・ティ・トゥ・グリーン(ショットのスコアに対する貢献度を示す指標)」で大会1位を記録していたほど。ツアーでは飛ばないが曲がらないと定評のある彼は、大会中にホールインワンも記録し、最終日には64という好スコアをマークした。

「決してやさしいコンディションではないが、自分自身の中で変わったことがあるとすれば、今から3〜4年前よりも精神的にずいぶん良くなってきたということは言える。たった一晩でよくなるものでもないし、時間はかかる。どんなことが起きてももっと準備ができた状態で受け入れることができているから、優勝争いをしている時にボギーなしのラウンドができるようになってきているんだと思う」

ホールアウトから約100分間、ロッカールームで最終組の上がりを待ち続けたモリナリは、プレーしている時よりも、クラブハウス内で座ってテレビを観ていた時のほうが緊張したという。全英オープン、WGC・HSBCチャンピオンズなどのビッグイベントでさらりと優勝し、昨年のライダーカップではトミー・フリートウッドと組んで全勝、シングルス戦でも勝利を挙げて一躍ヒーローとなった。一見、ポーカーフェースで、どんなことが起きても顔色一つ変えないタイプだが、彼の強さの理由に、このメンタル面での強さが挙げられる。

「去年、(欧州ツアーの)ウェントワース(BMW PGA選手権)でロリー(・マキロイ)と一緒に回って優勝争いをして勝った時に、自信がついたんだ。別に僕は自分がエリート集団の中にいるとは思わないけど、たしかに以前よりももっと自信を持ってプレーできるようになったことは確かだ。誰と戦っても怖いことはないが、今の自分の立場を想像することは本当に難しいよ」

彼は全英オープンに勝ってメジャーチャンピオンになろうが、以前とまったく変わらない、素朴で親切なナイスガイだ。時々私もギアの話を聞いたり、レッスン取材などをお願いすることがあるが、昔から彼は嫌な顔を一つせず、対処してくれるので助かっている。

画像: 昨年の全英オープンでイタリア勢初のメジャー制覇を成し遂げたモリナリ(写真は2018年の全英オープン 撮影/姉崎正)

昨年の全英オープンでイタリア勢初のメジャー制覇を成し遂げたモリナリ(写真は2018年の全英オープン 撮影/姉崎正)

また試合中に顔を合わせても、必ず声をかけてくれるやさしい選手だ。非常に謙虚で、淡々としているが決して根暗な男ではない。昨年のライダーカップでは、トミー・フリートウッドとペアを組み、全勝していたが、あまりにも二人のコンビがよかったために「モリウッド」というニックネームがついたほどだ。ああ見えて、意外に冗談も言うタイプで、欧州チームのムードメーカー的な存在でもあった。

とはいえ、決して派手な選手でもないのだが、精神面でも安定感があり、技術的にもアイアンの名手として知られ、底力のある選手として評価が高い。どんなコースに行ってもロースコアで回ってくる自信があると自ら語っているが、練習もコツコツとこなし非常に熱心だ。彼の強さはそんな変わらない精神面と努力にあるのだと思う。

また、ちょうどアーノルド・パーマー招待の週から契約をしたキャロウェイのアイアンも彼の強さを支えている。過去も契約外でキャロウェイのクラブを使っていたが、契約するにあたってアイアンを彼の希望通りの削りに調整し、思い通りのアイアンが出来上がってきたそうだ。

アーノルド・パーマーは3年前に亡くなったが、主なき今も彼の庭には毎年大勢のギャラリーが集まり、世界各国のプロたちが頂点を目指してしのぎを削る。パーマーがかつてよく着用していた「赤いアルパカのセーター」が、優勝者へのジャケット代わりに授与されているが、クラレットジャグに続き、パーマーのセーターと、モリナリは着々とイタリアのレジェンドへの道を歩んでいる。

「アーニー(アーノルド・パーマー)は特別な人で、ゴルフというゲームの世界的なアイコンだ。イタリアからやってきた僕のような者には、アーニーやジャック(・ニクラス)は神様のような人だが、だからこそここ(アーノルド・パーマーのお膝元)で勝てたことは本当にスペシャルで嬉しいことなんだ」

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