世界ジュニアなどで常に好成績を残す日本のジュニアゴルファーたち。しかし、米国で自身がジュニアゴルファーとして過ごした経験を持つツア・アッキー永井は、日本のジュニアゴルフには様々な問題点があると語る。あまり語られない、ニッチな問題点を抽出した。

気温が安定的に2桁の数字になり、5時でも日が差す時期になってきた。いよいよゴルフシーズン到来、これから全国各地でどんどん試合が開催される。まずは世界ジュニア予選が始まり、地方地区ごとの予選と9月のJGA主催日本ジュニア、さらに10月にはLPGA主催全日本小学生ゴルフトーナメントとビッグイベントでカレンダーは埋め尽くされている。

今回はそんなイベントで1度は必ず見たことがある関東きってのトップジュニア達によるゴルフ合宿に潜入してきた。そこで見えてきたのはジュニアを育てる家庭だからこそ直面してきた様々な問題点だった。

問題点1:試合を見つけるのが大変。登録にも手間がかかる

たとえば女子プロの試合であれば基本的にLPGAのホームページを見れば一目瞭然なのであるが、ジュニアの試合となるとそれに代わるものがないのだ。また、プロと違っていわゆるJGAが主催する「公式戦」以外の試合も数多く存在するのだが、それらの情報が埋もれてしまっている。

そのため重要度の高い試合よりも、たまたまインターネットで検索がヒットしやすい小さな試合に強豪が密集することさえあるそうだ(グーグルやヤフーなどで『ジュニア ゴルフ 試合』と検索すれば現状はすぐに分かるはずだ)。

画像: 試合を“探す”だけでも一手間。親にはさらに登録し、エントリーするという手間がかかる

試合を“探す”だけでも一手間。親にはさらに登録し、エントリーするという手間がかかる

また、各々の試合がそれぞれ特設のホームページを運営していることが多く参加申し込み方法もまちまちな上に各団体に対して「選手登録」をしなければならないこともあってエントリーだけでもジュニアの親にとっては何重にも重なるコストとなってしまっている。

今のジュニア世代の火付け役ともいうべき宮里藍、石川遼が現れて久しいがいまだにこうした問題は解決されずに残っている。

問題点2:ジュニア事情に精通したクラフトマン不足

ジュニアのクラブ選びは大人以上に難しい。日々成長する体に合わせてクラブを合わせなければならず、必然的に買い替えの周期は早くなる。とはいえ少し先を見越してオーバースペックなクラブを使ってしまうとたちまちスウィングは乱れてしまう。

親としては今の成績を大事にしてあげたい気持ちとお財布事情との板挟みというわけだ。しかし問題はそれだけではない。ジュニアの体格にあった既製品は限りなく少ないため、どうしてもカスタムメイドになってしまうのだ。今でこそハイテクな解析が可能となり、徐々にフィッティングをしてからクラブを買う、または組み上げるという文化がアマチュアの中にも浸透してきたがまだまだそれは「大人の趣味」。

ジュニアのためにフィッティングや組み付けをした場合にどういったクラブが出来上がるのか把握できているクラフトマンは少ないのだそうだ。

たとえば、今回の合宿でパッティング解析機「CAPTO」を使ってジュニアたちのパッティングをチェックしたところ、インサイドアウト軌道でストロークする傾向が顕著であった。これは長すぎるシャフトと、アップライト過ぎるライ角の影響を受けてのものであろう。

また、長すぎるドライバーもジュニアにとって扱いづらいのだ。長すぎるとあまりにも重心が遠く、重みがかかるのでバックスウィングに影響が出て、腰痛の原因になる可能性が高い。ジュニアの身体を考慮してクラブを組み上げることができる人材、またはそういった機会の提供が不足していると言えるだろう。

問題点3:ジュニアの居場所探し

1人だけでプレーして、誰にも見られていないところでバーディーを取って喜べる子どもは少ないことだろう。それはおそらく大人も同じで、人間は小学2年生頃を境に「自己優位感」というものに気づき求めるようになるという。逆にそれ以下の年齢だと徒競走で1位を取れなくてもあまり悔しがらない傾向がある。

優位であること以外にも「楽しい」時間を共有することは子供たちにとってかけがえのない宝となるのだが、ゴルフという競技の特性上なかなかそうした居場所を作るのが難しい。まして親がゴルフをしない家庭の場合は尚更である。

どうしたらみんなと楽しくゴルフが学べるのか、どうしたらちょうど良いレベルで一緒にプレーしてくれるジュニアと出会えるのか、親はゼロから調べることになる。

画像: 「気の合う仲間と切磋琢磨する」環境を見つけること自体が難しい

「気の合う仲間と切磋琢磨する」環境を見つけること自体が難しい

そうすると当然頼りになる情報源はまずインターネットであり、その次に練習場付属のジュニアスクールとなる。ジュニアゴルフスクールと言ってもそのサービス内容は多種多様。何をしたらもっと上手く、強く成長できるのか、適切なタイミングで指導が得られる環境はまだまだ足りていないのが現状だ。

これからも親の努力こそジュニア育成の要であることに変わりはないが、指導者・施設・協会等から歩み寄るような施策がもっと必要になるだろう。

毎年夏にアメリカ、サンディエゴで行われる世界ジュニア本戦の結果を見れば分かるが日本の高校生以下のレベルは世界トップクラスだ。

ただ、これだけレベルが高いのにも関わらず課題は山積している。逆に言えば、我々の目に映るジュニアゴルファーというのはそれら課題を何らかの形でクリアしてきたのであって、見えないところで多くの子どもたちがゴルフを諦めたり、挫折を経験しているのかもしれない。

現在のJGAジュニア会員は1万5000人を切り、ここ数年下降を続けている。「今は昔に比べて選択肢が増えたから」と言う前に、今できることから少しずつ何かをしなければと思わされる2日間であった。

写真提供/アッキー永井

画像: ただ踏み込むだけじゃない!“地面反力”を正しく理解しよう~井上透と幡野夏生のこれってどうしてる?~ youtu.be

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