PGAツアーの最高峰イベント「ザ・プレーヤーズ選手権」でツアー15勝目を挙げたロリー・マキロイ。今季はここまで絶好調が続くマキロイには、マスターズでのキャリアグランドスラムの期待がここ数年かかり続けている。今年こそ達成なるのか、海外での取材経験豊富な元ゴルフ雑誌編集長が分析する。

タイガー、ステンソンに次ぐ「史上三人目の偉業」も達成

この勝利はいよいよ来月に迫る海外男子メジャー第1戦「マスターズ」で、歴史的偉業を目の当たりにする序章となるのか……世界の強豪が一堂に会する第5のメジャー「プレーヤーズ選手権」。PGAツアーのフラッグシップトーナメントである今大会は、今年から再び3月開催となったが、今年は北アイルランドのロリー・マキロイが優勝。

ジム・フューリック、ジョン・ラーム、トミー・フリートウッド、ジェイソン・デイら強豪を抑え、ゴールドに輝く新しくリニューアルされた優勝トロフィを手にした。ツアー15勝目であり、昨年のアーノルド・パーマー招待以来となる1年ぶりの勝利。

この優勝によりフェデックスカップランクは1位に、世界ランクは4位に浮上した。また、タイガー・ウッズやヘンリク・ステンソンに続き、メジャー、世界選手権(WGC)、フェデックスカップ、プレーヤーズ選手権すべてで優勝したことのある、史上3人目の選手にもなった。これは歴史的快挙だ。

「これまでなんども優勝争いをし続け、なかなか勝てなかったが、こうして今日やっと一線を超え、優勝することができた。今年に入って積んできたこれまでの全ての経験が、今日の勝利を後押ししたことは間違いない。こうした経験がなければ、こうして今日、優勝トロフィを手にしていることはないだろう。すごく自信になったし、非常に意味のある試合だった」

画像: ザ・プレーヤーズ選手権を制したマキロイ(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

ザ・プレーヤーズ選手権を制したマキロイ(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

PGAツアーファンの方ならお気づきだと思うが、今年に入ってからのマキロイは、6試合中、最低順位がなんと6位。セントリートーナメント4位タイ、ファーマーズインシュランスオープン5位タイ、ジェネシスオープン4位タイ、WGCメキシコ選手権2位、アーノルド・パーマー招待6位、そして先週のプレーヤーズ選手権でついに優勝、と破竹の勢いである。

これはどうしたって、来月に控える今年最初のメジャー「マスターズ」に向かって、マキロイが最高のコンディションを整えながら進んでいるようにしか見えない。マキロイ自身も語っているが、これまでの「勝てそうで勝てない」状況の中で積み重ねてきた練習の成果と、「自分はいいプレーをしている。あとはただ時が来るのを待つだけ」という自信を持つことができた結果、プレーヤーズ選手権という強豪ぞろいのビッグイベントでついに優勝することができたことは、マキロイの今後の飛躍にとって最高の糧になったに違いない。現在、間違いなく誰よりも自信を持ってプレーに臨めるのは、マキロイだと思える。

「今、僕はただ心地いいということだけだ。いろんなことにおいてしっくりきている。そういうことから自信は生まれるだろう。全てのことをシンプルに考えるようにしているんだ。スウィングについても一つのことしか取り組んでいないし、ショートゲームもトーナメント会場に来たら練習するだけで、家ではあまりやらない。でも、これがベストな方法だと思う。今までになくショートゲームの調子がいい。時間の使い方がうまくなったと思うし、必要なことはやるけど、必要ないと思えばそれに時間は割かない」

「できれば今後15〜20年は、このまま順調にいけばいいと思っている。最初の10〜11 年で自分に足りないものをモノにしてきた経験が、今後10年のための準備だったと思えるし、今後はそれによりもっと成功すればいいと思う」

よく、世界のトッププロは、「他人の成績やゴルフまではコントロールできないし、ただ自分のやるべきことをやるだけだ。それが成功の秘訣」と語るのを聞くが、マキロイも然り。すでにこれまでにメジャーで4勝を挙げ、順風満帆に見えるが、マキロイでも2011年のマスターズでの悲劇のように辛酸を舐めた経験を多く積んでいるからこそ、今の強さがあるのだ。

そして幸い、彼には貧乏ながらもゴルフをさせてくれた両親と、愛する妻、敏腕マネージャー、そして約2年前からバッグを担いでいるハリー・ダイヤモンドという、マキロイのゴルフを幼少時代から目の前で見てきた親友がチーム・マキロイにはいる。

画像: キャディのハリー・ダイヤモンド(左)はマキロイ(右)にとって親友であり、頼れる存在だ(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

キャディのハリー・ダイヤモンド(左)はマキロイ(右)にとって親友であり、頼れる存在だ(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

ハリーもマキロイとともにマイケル・バノンにゴルフを20年間習ってきたゴルファーであり、マキロイのスウィングをチェックし、修正が必要であればそこを指摘することができる「目」も持ち併せている。

「ハリーは僕の成功において、大きな部分を占めているよ。彼がバッグを担ぐようになって約20カ月だけど、すでにツアーのベストキャディの一人だ。仕事ぶりはプロフェッショナルだ。彼はいつ僕に話しかけたらいいか、わかってるし、いつどんなことを言えばいいのかもわかっている。僕とハリーは翌日のプレーのプランをどうしようかなど毎晩テキストメッセージを交わしているが、これが大きいんだ。彼はいいゴルファーだし、長年一緒にゴルフをしてきた。僕のスウィングのこともよく知ってるから、僕がアドバイスが必要なときは、彼は的確な目でスウィングを見てくれることができるんだ」

アイルランド訛りの残るハリーは、ここ数年でツアーに登場してきた若手キャディだが、物静かで誠実なお人柄はちょっと言葉を交わしただけでもわかる。ツアーキャディたちは通常、「コース外では選手と食事に行ったり、同じホテルには泊まらない」というように、選手とは仕事場だけのドライな関係である者たちも多いが、ハリーはマキロイにとって、キャディである前に親友であり兄弟のような存在。しかも時にはコーチの役目も果たすことができるのは大きい。

マスターズまでわずか1カ月足らず。世界中のゴルフファンがマキロイのマスターズ制覇とキャリアグランドスラム達成の日を心待ちにしている。今までコツコツと積み重ねてきた技術力とメンタル面の強さ、自信を持ってすれば、今のマキロイなら無敵だろう。オーガスタでは特にショットの精度が問われるが、ストローク・ゲインド・ティ・トゥ・グリーンではツアー1位と圧倒的なショット力を持つ。準備はできた。あとは平常心で謙虚に、時には大胆にオーガスタでの目の前の1打に臨むだけだ。

画像: ただ踏み込むだけじゃない!“地面反力”を正しく理解しよう~井上透と幡野夏生のこれってどうしてる?~ youtu.be

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