WGCデルテクノロジーズマッチプレーを制したケビン・キスナ―は「守護神が見守ってくれていたような気がするんだ」というがそのわけとは?勝因について海外取材経験豊富の元ゴルフ雑誌の編集長が語る。

昨年は決勝でバッバ・ワトソンに敗北していた

5日間で全7マッチを戦い抜き、WGCデルテクノロジーズマッチプレーを制したのは、米国のケビン・キスナー。2013年のチャンピオンのマット・クーチャーを3&2で破り、WGC初優勝を遂げた。昨年、決勝戦まで駒を進めたものの、バッバ・ワトソンとの戦いに7&6という大差で破れた雪辱戦を、無事果たしたことになる。

この優勝により、フェデックスカップで前週の73位から一気に13位に浮上し、フェデックスカップファイナル最終戦のツアー選手権に出られるトップ30位以内にランクイン。世界ランクも50位に入ってきた。

「今週は大きく、そして長い1週間だったね。精神面だけでなく、体力的にも疲れ果てたよ。たくさんゴルフをして、ストレスを感じるホールやパットもたくさんあったが、それらをなんとかうまく切り抜け、素晴らしい1週間を過ごすことができたよ」

今季は、自身初戦のマヤコバクラシックでたった1度、予選落ちしているが、それ以外の11試合はすべて予選通過。この2ヶ月ほどは、全大会で20位台をキープしており、持ち前の安定感と正確性は光っていたものの、この長丁場のマッチプレーで、いったいなぜ彼は優勝できたのだろうか?

キスナーは、去年のワトソンとの最終日の対決を振り返り、学んだことがあったという。それは、「十分な準備をする」ということと「テンションを上げすぎない」ことだったのだそうだ。去年の最終日はバタバタの中、十分な球打ち練習や、休憩を取る暇もなく、2ラウンド目(決勝)を迎えてしまい、ラウンド中もショットのリズムを崩してしまったのだという。勝ちたい気持ちばかりが空回りし、自分のゴルフができていなかった。そして今年は、決してベストなゴルフができたわけではなかったが、ショットの調子自体はよかったのと、幸い、マット・クーチャーがボギー先行で、バーディを獲れなかったことが彼のゲーム運びをイージーなものにした。

画像: デルマッチプレーを制したキスナ―(写真は2019年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

デルマッチプレーを制したキスナ―(写真は2019年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

そして、もしかしたら、先週天国へと旅立った友の力を借りることができたことも大きい要因の一つだったのかもしれない。

キスナーと長年タッグを組んでいるベテランキャディのデュエイン・ボックには、トニー・コーズビーという共通の友がいたが、彼は3年前にALSにかかり、先週の3月28日に死去。キャディのデュエインは、自分のキャップの右サイドに手書きで「TC(TonyCausby) RIP(安らかにお眠りください)」と書いてマッチプレーの週には試合に臨んでいたが、その文字を見てキスナーも初めてコーズビーが亡くなったことを知った。

「彼(トニー)は、僕たちの大ファンだったんだ。毎日座って僕たちのゲームを見てくれていたし、仮に自分たちがTVに出ていなくても、自分たちをTVの中で探してた。だから、今週末は空の上から、守護神が見守ってくれていたような気がするんだ」

優勝が決まった瞬間、キスナーとデュエインは抱き合って勝利を祝ったが、キスナーはデュエインのキャップに書かれたTCの文字を指で触りながら、何やら二人で語っていた。きっと「TCが見守ってくれていたんだろうね」などと会話していたのだと推測するが、たいていの試合での順位は20位台という「超」安定男がここまで発奮し、ビッグイベントで勝利することができたのは、この守護神のご加護もあったのかもしれない。

去年に続き、決勝まで駒を進めてくることができたのだから、マッチプレーが苦手なわけはない。しかも飛ばし屋ではないキスナーが、飛ばし屋たちと互角に戦えるだけのコースとの相性の良さもある。プレースタイルも風貌も決して派手ではないが、自信を持ってコツコツと目の前の1打を大事にプレーした彼の誠実さが3回目のツアー優勝をもたらしたのだと思う。

決して派手ではないが、地味に強く安定感がある、全英オープンチャンピオンのフランチェスコ・モリナリと同タイプのようなケビン・キスナー。今年の年末にはタイガー・ウッズキャプテン率いる「プレジデンツカップ」もあり、そのメンバー入りを果たしたいとすでに公言している。前回のニューヨーク開催時にも出場し、負けなしの2勝2分を記録しているキスナー。マッチの鬼の活躍に年末まで目が離せない。

画像: クラブがインサイドから降りるバックスウィングの上げ方【レッスン放浪記・鈴木真一プロ編①】 youtu.be

クラブがインサイドから降りるバックスウィングの上げ方【レッスン放浪記・鈴木真一プロ編①】

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