マスターズを目前に優勝候補が調子を上げるなか心配な選手がいる。昨年の全英オープン以来トップ10がなく現在世界ランク32位まで後退しているジョーン・スピースだ。誰もが認めるトップランナー復活のシナリオは?

今年全米プロに勝てばタイガーと同一年齢でのキャリアグランドスラムだが……

スピースが世界ランク1位に浮上したのは15年の夏。その年マスターズと全米オープンでメジャー2連勝、ツアー選手権も制して年間チャンピオンに輝き正真正銘タイガーの後継者として先頭を走り続けるかに思われた。

事実17年には全英オープンにも勝ってキャリアグランドスラムに王手をかけた。ところが徐々に得意のはずのパッティングのミスが目立ち予選落ちも急増。昨年は0勝で前年の優勝者のみに出場が許されるセントリートーナメント・オブ・チャンピオンズの出場をデビュー以来はじめて逃すことになった。

復活を胸に挑む今季、ここまでのスタッツを紐解くとフェアウェイキープ率213位、パーオン率158位、平均スコア123位、バンカーからのパーセーブ率214位、フェデックスカップのポイントランクは177位。平均パット数は7位とパッティング関連の数値は上がってきたものの、以前のスピースでは考えられないような数字が並んでいる。

画像: テキサスオープン初日、2打差の6位タイでホールアウトしたスピース(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

テキサスオープン初日、2打差の6位タイでホールアウトしたスピース(写真は2019年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

しかしマスターズ前週スピースの地元で開幕したバレロテキサスオープン初日は持ち前のショートゲームが冴え首位に2打差の6位タイの好スタートを切った。

さらに前週のWGC-デルマッチプレーでも決勝進出はならなかったが「内容的には勝てるゴルフができている。ここしばらくないくらい調子が上がっている」と復活へ向けた手応えを口にしている。

最近はミケルソンやポール・ケイシー、マット・クーチャーら40代の選手の活躍が目立つが“ヤングガン”の先頭に立ってツアーに劇的な世代交代を演出したのはスピースだ。スピースがいなければジャスティン・トーマスやザンダー・シャウウェレの活躍はなかったかもしれない。

もし今年全米プロに勝てばタイガーと同じ25歳でのキャリアグランドスラム達成の夢が叶う。ゴルフファンに「復活して欲しい選手は誰?」と尋ねたらおそらくスピースの名が真っ先に上がるはずだ。

ゴルフというスポーツはいつなにがあってもおかしくない残酷な一面を持つ。天才の名を欲しいままにした故セベ・バレステロスも30代に入ると一気に精彩を欠いて「いつか復活してくれると思っていた」(ベルンハルト・ランガー)という期待も虚しく表舞台からフェードアウトした。

最近でもグリーンのラインを読むときのスパイダーマンポーズで人気があったカミロ・ビジェガス(ザ・プレーヤーズ選手権を含むツアー通算4勝)や、次世代エースと期待されたアンソニー・キム(ツアー通算3勝)、ライダーカップの常連だったハンター・メイハン(ツアー通算6勝)らが低迷、あるいは引退(キム)している。

画像: ビジェガスのグリーン読み“スパイダーマンポーズ”。当時石川遼も真似するなど、話題になった(写真は2007年の東海クラシック)

ビジェガスのグリーン読み“スパイダーマンポーズ”。当時石川遼も真似するなど、話題になった(写真は2007年の東海クラシック)

ビジェガスは右肩の故障が低迷の原因。キムは左足のアキレス腱を痛め14年の4月にクラブを置くことに。メイハンの場合はメンタル的な要素が大きいといわれている。もちろんチャールズ・ハウエルのように昨年(RSMクラシック)11年ぶりの優勝を挙げた例もある。だが一度スランプに陥った選手が復活するのは並大抵の努力では足りないはずだ。

ゴルフ解説者のブランデル・シャンブリーは「近頃のプロは喜ばせなくてはならない相手が多すぎる」という。「プレショットルーティンをきちんとやることでメンタルトレーナーを喜ばせ、ナイスショットをすることでコーチを喜ばせ、怒らず笑顔で話すことでキャディを喜ばせる。ハッピーにしなくてはならない相手が多すぎて気の毒になる」。

スピースがプロとしてキャリアをスタートさせたころ喜ばせたかったのは生まれつきハンディキャップを抱える妹だった。そしていま高校時代から交際してきた同じ年の妻アニーさんがその対象となった。だが来るべきメジャーでは誰かを喜ばせるためではなく自分のために勝利を掴み取ってもらいたいものだ。

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