ロック石井、という人物をご存知だろうか。「タイガー・ウッズのボール担当」として業界内では知らぬ人のいない有名人。ブリヂストンで13年間、ナイキで15年間を過ごし、現在はキャロウェイに在籍するボール開発の専門家だ。そんな石井が現在のボール開発の最前線を話してくれた。その興味深い内容を、2回に分けてお伝えしよう。

PGAツアーで最優先されるのは「ボール初速」

「最近のPGAツアーではとにかく初速。ボール初速を上げる方向に向かっています。クラブの進化、フィジカル、そしてボールと、すべてがボール初速を上げる方向ですね」(石井)

画像: 直径42.67ミリ(ルールで定められた最小値)のゴルフボールのなかには、最新のテクノロジーがこれでもかと詰め込まれている(撮影/阪上恭史)

直径42.67ミリ(ルールで定められた最小値)のゴルフボールのなかには、最新のテクノロジーがこれでもかと詰め込まれている(撮影/阪上恭史)

そう話してくれた石井。今やツアー全体の平均飛距離が300ヤードという時代。ボールに求められるのも、飛距離に直結する初速が最重要視されるようだ。そうなれば、犠牲になるものも当然ある。たとえばスピン量だ。

画像: タイガー・ウッズのボール開発を手掛けたロック石井氏。現在はキャロウェイでボール開発に勤しんでいる

タイガー・ウッズのボール開発を手掛けたロック石井氏。現在はキャロウェイでボール開発に勤しんでいる

「PGAツアーの場合、ドライバーでは12度くらいの打ち出し角度で、スピン量は2200回転くらいが最適値ですが、それに比べてアイアンのスピン量が減ってきています。少し前までは7番だと7千回転、6番なら6千回転を目安にしていましたが、最近は6番で5700回転前後と300回転くらい落ちている。その分、高さを出して降下角度(ランディングアングル)で止めるようになっています」(石井)

画像: あるプロゴルファーのトラックマンデータ。左は理想的なスピン量で300ヤード越え、右はスピン量が多過ぎるせで290ヤードに満たない

あるプロゴルファーのトラックマンデータ。左は理想的なスピン量で300ヤード越え、右はスピン量が多過ぎるせで290ヤードに満たない

プロのアイアンといえば、スピンを効かせて途中から浮き上がるような球筋、“めくれる”などと表現される弾道がイメージされるが、ボールのスピン量が低下したことで、スピンで止めるのではなく、落ちるときの角度をなるべく鋭角にすることでランを抑えるような弾道に変化しているというわけだ。

もちろんグリーン周りのアプローチでのスピン量も(ある程度カバーで補えるとはいえ)減るはずだが、「彼ら(PGAツアー選手)はフェースを開いてトウ側で強く打つとスピンが入って止められるという打ち方をするようになりました」という。そこは技術でカバーということのようだ。

このように、計測器の進化もあって弾道に関する膨大なデータが集まったことで、理想の弾道も見えてきている。

画像: オフシーズンにトラックマンの数値を見ながらクラブをテストする石川遼。プロたちは弾道を数値で把握し、それを理想値に近づけようと努力する(撮影/三木崇徳)

オフシーズンにトラックマンの数値を見ながらクラブをテストする石川遼。プロたちは弾道を数値で把握し、それを理想値に近づけようと努力する(撮影/三木崇徳)

「前にも言ったように、いろいろデータを取ると、PGAツアーの場合ドライバーは2200回転、12度くらいがドライバーの最適条件で、男子プロはこの狭い数値の間に収束しています。でも、アイアンは収束しないんです。最適値は6番5700回転と言いましたが、人によっては5000だったり、6200回転だったりして、しかもそれとスコアに相関がない。ということは、最適値ではなく、自分の持っている数値を繰り返し打てるかなんだと思います。アマチュアの場合は6番で5700回転もかけられませんから、打ち出し角を上げるほうがプレーにはメリットがあります」(石井)

ドライバーの飛距離やアプローチのスピン量。ボール選びの基準は大きくその二つに分かれるというイメージがあるが、今後は「アイアンの弾道の高さ」でボールを選ぶのが正解になる時代がくるのかもしれない。

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