石川遼選手の復活優勝で男子ツアーもようやく盛り上がりを見せる中、黄金世代とベテラン勢がしのぎを削る女子ツアーも相変わらずの人気を誇っている。データ分析の専門家・ゴウタナカが、そんな女子ツアーの前半戦をスタッツ分析した!

女子ツアーはパーオン率と賞金ランクに強い相関がある

スタッツ分析上、近年の男子ツアーではパー5でのパフォーマンスが非常に大きなウェイトを占めるが、女子ツアーではパーオン率が賞金ランキングと高い相関関係を見せている。これは、平均ドライビングディスタンスに対するコースの総飛距離との割合が大きく異なることから出てくる違いである(女子ツアーのコースは男子ツアーに対して相対的に総距離が長い)。

前半戦の女子ツアーにおいても相変わらずパーオン率は賞金ランクと強い相関を見せていた。ただそれは長年スタッツとにらめっこしてきた私に少し違和感を与えるものでもあった。それが、鈴木愛選手と松田鈴英選手のスタッツ比較だ。

賞金ランキング3位につけている鈴木愛選手のパーオン率は67.88%で23位だが、パーオン率73.2%で2位につける松田鈴英選手の賞金ランキングは21位でトップ20にも入れていない。松田選手のスタッツは総じて良く、このままのパーオン率、他のスタッツを通年続けたら2019年シリーズ終了時には間違いなくもっと賞金ランクが上がってくるのだが、現状ではやや物足りないと言える。

画像: 相関が見られる賞金ランク(左)とパーオン率(右)。ランク3位の鈴木愛はパーオン率15傑に名前がなく、パーオン率2位の松田鈴英は賞金ランク15位圏内に入っていない(画像はLPGA公式サイトの画面キャプチャをつなげたもの)

相関が見られる賞金ランク(左)とパーオン率(右)。ランク3位の鈴木愛はパーオン率15傑に名前がなく、パーオン率2位の松田鈴英は賞金ランク15位圏内に入っていない(画像はLPGA公式サイトの画面キャプチャをつなげたもの)

鈴木選手はパーオン率が松田選手に比べて約6%も劣る中、賞金ランキング3位につけているあたりさすがと言える。この2人のスタッツだけ見てどちらのスタッツが賞金ランキング3位か? と問われた場合、松田選手のスタッツのほうと私は答えるだろう。

画像: 賞金ランクは21位だが、活躍をポイント化したメルセデスランキングは9位。スタッツ的にも素晴らしいものがある松田鈴英(撮影/姉崎正)

賞金ランクは21位だが、活躍をポイント化したメルセデスランキングは9位。スタッツ的にも素晴らしいものがある松田鈴英(撮影/姉崎正)

では、この大きな差はどこからきているのか? さらにスタッツを見ていくとはっきりとした差がでている箇所があった。それはファイナルラウンドの平均ストロークだ。もっとも賞金を意識してしまう、緊張感がマックスを迎える中でのラウンドなのだが、鈴木選手が70.81に対して松田選手は71.45で、4日間トーナメントにおける最終日のスコア平均は鈴木選手が71.33に対して松田選手は73.2と約2打も違う。

4日間トーナメントは賞金も多くそこでのパフォーマンスは大きな比重を占める。スタッツも示すように鈴木選手は13試合で3度も優勝しているのだ。一方で松田選手は何度か来た優勝のチャンスを逃してきている。それらの差がこの結果につながっていると言えるだろう。

松田選手のメンタルの弱さと思われる人もいるかもしれないが、私はそうは思わない。最終日の平均スコアが多少悪いのはごく普通の現象である。鈴木選手のほうをほめたたえるべきだ。とにかく勝負強い。それは勝つということに慣れていて、勝つことは挑戦ではなく、ごく当たり前にそこにあるものだと、これまでの経験からそう思えているからだと言えるだろう。それは経験であり、技術でもある。

画像: 最終日に強さを見せる鈴木愛。後半戦はさらなる活躍が期待できる!?(撮影/姉崎正)

最終日に強さを見せる鈴木愛。後半戦はさらなる活躍が期待できる!?(撮影/姉崎正)

タイガーウッズの最終日のスコアはずば抜けていいわけではない。しかし、勝つために必要なことを知っていて、それはメンタルではなくむしろ技術だ。全世界に与えた感動のマスターズ優勝でのタイガー・ウッズのコメントは本当に印象的なものだった。

「ミスすべき場所にミスし続けた。そのための準備を6か月前からしてきた。そしてそれができた」これは果たしてメンタルなのか? メンタルがまったく関係ないとは言わないが、技術、準備、つまりマネージメントの比重のほうがはるかに大きいだろう。

メンタルを強くするという考えではなく、技術、準備を整え、成功率の高まるマネージメントをしていくということが、周りからは強いメンタルであると映るものだと私は思う。

鈴木選手はその準備が他の選手よりもできている、ということだろう。67.88%は71%近くのパーオン率を2年続けている鈴木選手としては物足りない。アイアンの調子が本調子に戻りパーオン率を70%台に乗せてきたら更に強い鈴木選手が後半は見られるのではないだろうか。

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