2019年7月16日、都内でピンの新製品記者発表会で「グライド3.0ウェッジ」が発表された。このウェッジ、アイアンでは当たり前だがウェッジとしては珍しいキャビティタイプ。今後、キャビティタイプのウェッジは増えていくのか? クラブコーディネーターとして活躍する鹿又芳典に聞いた。

ウェッジは多様化の時代へ

キャビティバックとは、バックフェース中央の重量をえぐり取り、外周部に配分させた形状のこと。周辺に重量を配分することで慣性モーメントを高め、ミスヒットに強くしたり、ヘッドの挙動を安定させる効果があるのだが、今日発表されたグライド3.0ウェッジは、このキャビティバック構造になっているのが最大の特徴だ。

画像: バックフェースがえぐられたキャビティバック構造になっているピンの「グライド3.0」ウェッジ

バックフェースがえぐられたキャビティバック構造になっているピンの「グライド3.0」ウェッジ

慣性モーメントを高くする。最近だとドライバーではこれがプロ用アマ用問わずに必須の性能となりつつあり、アイアンでも慣性モーメントを高くし、直進安定性の高さをウリにしたモデルが増加傾向にある。では、ウェッジの高慣性モーメント化は、どんなメリットがあるのだろうか。鹿又は言う。

「ウェッジはラフ、ベアグラウンド(裸地)、フェアウェイ、バンカーと様々なライから打つクラブ。しかも、グリーン周りの起伏の激しいところで使用するわけですから、当然一定の打点で打つクラブではありません。そのため、慣性モーメントが大きく、フェースの向きが安定しやすく、ミスヒットの際の方向性もいいことは、プロ・アマ問わずにメリットになると思います」

ただ、それによってヘッドを思い通りに操るコントロール性は犠牲になる。スポーツカーを運転するようにフェースを自在にコントロールしたいゴルファーにとっては、高慣性モーメント化はデメリットになる可能性もあるが、鹿又によればプロも含めた「8割以上のゴルファーは恩恵を受けられるはず」だという。

鹿又は、ピンに限らず、このような高慣性モーメントウェッジの必要性は今後さらに高まると予想する。その背景にあるのがアイアンのストロングロフト化だ。ピッチングウェッジのロフトが43度前後というモデルが増えている昨今、その下の番手が52度の単品ウェッジではロフトピッチが空きすぎることから、45〜48度あたりのレンジのウェッジの必要性が高まっている。そして、そのようなウェッジには、よりアイアン的機能が求められる可能性がある。

7番アイアンのロフトが35度のマッスルバックから26度の飛び系アイアンまで極めて幅が広くなり、全体的にストロング化が進む昨今、ウェッジにも従来とは違う形状、機能が求められるようになっている。鹿又は、慣性モーメントだけでなく、ヘッドサイズ、ロフトやソール形状などのバリエーションも増える可能性があるという。

画像: グライド3.0はロフト46〜60度まで2度刻みの設定。すべてのロフトではないが、4つのソール形状を選択可能だ。写真左がスタンダード。右のアイ2ソールはそもそもの形状が大幅に違う

グライド3.0はロフト46〜60度まで2度刻みの設定。すべてのロフトではないが、4つのソール形状を選択可能だ。写真左がスタンダード。右のアイ2ソールはそもそもの形状が大幅に違う

「今回のグライド3.0はソールとロフトのバリエーションが過去モデルよりも増えていますが、ウェッジの代名詞ともいえるタイトリストのボーケイウェッジを筆頭に、キャロウェイ、フォーティーンなどのウェッジもロフトとソールのバリエーションが増えています。大きさもバリエーションがあっていいし、60度のウェッジと45度のウェッジが同じ長さである必要はないので、長さのバリエーションもあっていいですよね」(鹿又)

ロフト、ソール形状、ネックの形状、さらには大きいか小さいか、高慣性モーメントかそうでないか、長いか短いか……アイアンに合わせて、ウェッジも多様化していく。5億5千万年前、生物種が爆発的に増えた「カンブリア爆発」ではないが、ウェッジのバリエーションが一気に増える時代は、もうすぐそこまできているのかも。

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