シニアのメジャーの一つ「ブリヂストン・シニアプレーヤーズ選手権」で10年ぶりの優勝を挙げたレティーフ・グーセン。かつて「ビック5」と呼ばれていたこともあり、世界ゴルフ殿堂入りも果たしているグーセンの人生についてツアー取材歴20年のゴルフエディター・大泉英子が語る。

シニアメジャーで10年ぶりの優勝を果たした

今年シニア入りしたレティーフ・グーセンが、シニアのメジャーの一つ「ブリヂストン・シニアプレーヤーズ選手権」で2位のジェイ・ハース、ティム・ペトロビックに2打差をつけてシニア初優勝を飾った。09年トランジションズ選手権以来、10年ぶりの優勝だ。

かつてはタイガー・ウッズ、フィル・ミケルソン、ビジェイ・シン、アーニー・エルスらと並んで「ビッグ5」と呼ばれた時期もあったが、09年の優勝後は、背中痛に悩まされ、今から6年前には手術を受けるほど。だが、手術が成功し、現在では背中の痛みからも解放され、プレーができるようになったという。

「ここ数週間は神経痛に悩まされていたけど、こうしてもう一度昔のように優勝争いに身を置くことができ、優勝できてよかったよ」

画像: 今年シニア入りをしたレティーフ・グーセンがメジャーで10年ぶりの優勝を挙げた(写真は2016年のホンダクラシック 撮影/姉崎正)

今年シニア入りをしたレティーフ・グーセンがメジャーで10年ぶりの優勝を挙げた(写真は2016年のホンダクラシック 撮影/姉崎正)

開催コースは、昨年までWGCブリヂストン・インビテーショナルが開催されていたファイヤーストーンCC。7年ぶりのファイヤーストーンでのプレーだったが、今まで優勝のチャンスはなかったという。

「WGCの頃はもっとラフが密集していて、パワーがないと出せなかった。このコースはとにかくフェアウェイキープが大事だが、今週はショットがよかった。とても冷静にプレーできていた」

グーセンは先月、世界ゴルフ殿堂入りを果たしたばかりだが、過去、全米オープンで2勝を挙げ、世界で通算37勝、ヨーロピアンツアーで過去2回の賞金王に輝いていることなどが、殿堂入りにつながった。物静かな性格で、決して目立つタイプではないが、「アイスマン」の異名どおり、常にコースでは冷静で寡黙な男だ。

そんな彼は、現役時代もさほど自分の過去を話すこともなかったと記憶しているが、先日の殿堂入りの際には饒舌に自分の過去を語っていた。グーセンの人柄や、どんな環境で生まれ育ってきたのかが垣間見られるいいスピーチだったので、少しここでご紹介したいと思う。

彼は南アフリカの非常に小さな街の出身で、ゴルフ場が1つしかない場所で生まれ育った。11歳までは裸足で駆け回り、ゴルフだけでなく、ラグビー、テニス、水泳など様々なスポーツを経験。ある時ゴルフにのめり込み、ジャック・ニクラスやアーノルド・パーマー、ゲーリー・プレーヤーのゴルフ本を読み漁ったという。

ニクラスの「ゴルフ・マイ・ウェイ」がバイブルで、ニクラスのゴルフ理論を鏡を見ながら真似し、裏庭に張った練習ネットに向かって練習していたという。グーセンの美しいスウィングは、ゴルフ本による知識で出来上がったものなのだ。

15歳の時にゴルフをしていて落雷にあった話は有名だが、この時は瀕死の重傷だったという。落雷直後、衣服は全て焼けてなくなり、全身黒焦げで倒れ、息もろくにできず、まるで死人のようだったと、一緒に回っていた彼の従兄弟が語っている。病院で治療を受け、まさに九死に一生を得た。グーセンはその時のことを以下のように語っているのがおもしろい。

「この落雷の後、自分の中の何かが変わった。落雷前よりも、もっといいゴルフができるようになったんだ(笑)。これで充電ができたんだろう。今もまだ充電できてるから、大丈夫」

落雷が神の降臨のような現象だったのかどうかはわからないが、落雷によって何かが変わったというグーセンは、メジャーチャンピオンにもなり、世界ゴルフ殿堂入りをも果たし、シニアのメジャーでも優勝することができた。彼のバッテリーはまだまだフル充電。

グーセンのゴルフ人生第2章はまだ始まったばかり。ビッグ5と呼ばれていた強いグーセンが帰ってくることを期待したい。

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