ウィンダム選手権はJ.T.ポストンの勝利で幕を閉じた。この優勝により2年間のシード権、マスターズなど様々な出場権を得たポストン。そんな彼の勝利までを海外ツアー取材歴20年のゴルフエディター・大泉英子が語る。

リー・トレビの依頼の偉業を達成した

1974年、リー・トレビノが達成して以来初の、4日間ボギーなしで優勝した選手が誕生した。その名もJ.T.ポストン。ウィンダム選手権が行われたノースカロライナ州出身で、現在26歳。15年にプロ転向し、17年からPGAツアーでプレーするようになった。今年は3年目だが、77試合目にして初優勝。ノースカロライナ出身のプロで今大会を優勝したのは、レイモンド・フロイド、デービス・ラブⅢ、スコット・ホーク、ウェブ・シンプソンに続いて5人目である。

「夢が叶ったよ!こうして優勝できるのをいつも夢見ていたんだ。過去何回かチャンスはあったが、地元ノースカロライナでたくさんの友達や家族の前で優勝できたんだから、これ以上のことはない。今年の目標の一つが、勝ってツアー選手権に行くことだったんだ」

この優勝により、2年間のシード権とマスターズ、セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズなどの出場権を得たポストン。フェデックスカップランキングは27位に一気に浮上し、このまま30位以内をキープすれば、ツアーエリートのみが出場できるフェデックスカップ・プレーオフ最終戦のツアー選手権に出場することができる。

「オーガスタは格別なもの。夢そのものだ。マスターズでプレーするのをずっと夢見てきたんだからね。仮にオーガスタで何が起こっても、特別な1週間になるだろう。本当にワクワクするよ」

ポストンをゴルフに導いてくれた祖父チャールス・カニングハム氏も応援に駆けつけた。祖父は3歳だった彼にパーシモンの5番ウッドを軽く細工して与え、ゴルフ場でどのように振る舞ったらいいかなどのマナーを教えたゴルフの師匠。

現在は85歳だそうだが、今もエイジシュートができるほどの腕前だそうである。エイジシュートは65歳前後で初めて達成して以来、600回以上は達成しているそうだ。若いころは全英アマチュアや全米シニアアマチュアに出場するほどの実力。そんな祖父の影響を大いに受けて、彼自身もゴルフ競技者としての道を選んだ。

画像: ウィンダム選手権で逆転優勝を挙げたJ.T.ポストン

ウィンダム選手権で逆転優勝を挙げたJ.T.ポストン

「パドック(祖父のことを彼はそう呼ぶ)は、別にティショットがすごく飛ぶようなタイプではないが、小技が信じられないくらいうまい! 僕のゴルフは祖父のゴルフに似ている部分もあるが、そんな競技者レベルの彼のゴルフを見て学んだんだ」

最近では健康状態が芳しくなく、多くの試合に来ることはできないそうだ。だが、ゴルフを教えてくれた85歳の祖父に見守られて、地元で優勝することができたのも、何かの縁、タイミングだろう。祖父がアマチュアとして競技者の道を極めた一方で、ポストン少年がプロになりたいと思ったのは、97年のタイガー・ウッズのマスターズ優勝がきっかけだった。「僕もこんな人になりたい」と思ったという。

ドナルド・ロスのコースを何千回とプレーしていた

タイガーのように80勝近く優勝し、メジャーで優勝するのは至難の技だが、その第一歩を地元ノースカロライナで踏み出すことができた。その勝因はいろいろあるが、家族、友人、ファンの声援を一身に受けることができたホームのアドバンテージもあるし、今大会が行われたセッジフィールドCCはドナルド・ロス設計のコースだが、彼の設計のコースに小さい頃から慣れていた、ということも勝利につながったようだ。

「ドナルド・ロスの設計がどんなものなのかはよく知らないが、あまりドライバーを使わず、球をどこに打っていけばいいのか、あるいはどこにミスしてもいいのかがはっきりしており、グリーンも奥から手前に向かって下っているので、必ず手前から攻めなければいけない、というような彼のコースは子供の頃から何千回とプレーしている。だから僕にとってはしっくりくるタイプのコースだったんだ」

子供の頃からドナルド・ロス設計のコースを何千回とプレーし、ナショナルオープンに出場するほどの腕前を持つ祖父にゴルフの手ほどきをされたポストンは、かなり恵まれた家系のゴルフエリートだ。彼の帽子にはヒモがついており、クラシックな印象を受けるが、そんな“育ちのいいおぼっちゃまゴルファー”にはピッタリの雰囲気。以前、「なぜヒモ付きのキャップをかぶってるの?」と聞いたことがあったが、

「クラシックな感じでいいでしょう? それに人と違うものを身につけたかったんだ」

とニッコリ。それ以来、私は「ヒモのポストン」と記憶しているが、ヒモだけでなく、彼のアイデンティティは祖父から受け継いだプレースタイル、才能にもあることがわかった。ウィンダム選手権では「ストローク・ゲインド・ティ・トゥ・グリーン」と、「ストローク・ゲインド・アプローチ•ザ・グリーン」、パッティングなどあらゆる面で1位を獲得し、優勝という結果に結びついたが、今後はさらに祖父譲りの彼らしいゴルフの持ち味を発揮して、活躍することを期待したい。

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