プレーオフ第1戦目「ザ・ノーザントラスト」を制したのはパトリック・リード。2018年マスターズチャンピオンだが、なんとそれ以来の優勝で、実に16カ月もの間優勝から遠ざかっていた。復活の理由ときっかけは、ちょっと意外なものだった。

マスターズ制覇後、勝利から遠ざかっていた

パトリック・リード(米国)が、2018年マスターズ優勝以来、16カ月ぶりにノーザントラストでツアー通算7勝目を挙げた。2位のエイブラハム・アンサー(メキシコ)とは1打差、3位タイのハロルド・バーナーⅢ、ジョン・ラームとは2打差と、最後の最後まで大混戦。

ブルックス・ケプカ、ダスティン・ジョンソン、ローリー・マキロイらスーパースターが優勝争いには加わっていなかったが、最後まで誰が勝つかわからない手に汗握る展開に、テレビの前で勝敗の行方に釘付けになっていた人も多いに違いない。

リードはこの優勝でフェデックスカップ・ポイントランキングで50位から一気にブルックス・ケプカに次ぐ2位に浮上。トップ30のエリートのみが出場できる最終戦ツアー選手権への6年連続出場も確定した。

画像: プレーオフ第1戦目「ザ・ノーザントラスト」を制したのはパトリック・リード(写真は2019年マスターズ 撮影/姉崎正)

プレーオフ第1戦目「ザ・ノーザントラスト」を制したのはパトリック・リード(写真は2019年マスターズ 撮影/姉崎正)

「すばらしい! いいゴルフをずっとしていたと思っていたのが、やっとこうして報いられ、優勝することができた。(優勝までが)ちょっと長かったね。でも自由の女神をバックに、2017年(米国チームが優勝した)プレジデンツカップの開催コースで“キャプテン・アメリカ”“USA”のコールを聞きながら1週間プレーでき、優勝できたのはよかったよ」

そう、彼のニックネームは“キャプテン・アメリカ”。プレジデンツカップやライダーカップでは得点ゲッターとして活躍し、チームの優勝にもかなり貢献している。だから普段はヒール役であったとしても、チーム戦になると途端にリードに対する声援は大きくなる。その声援をさらに煽るようなそぶりを見せながら、応援をモチベーションに変え、勝利に向けて突き進む姿から、そのような異名がつけられた。

彼が2016年のノーザントラストで優勝した時も、ニューヨークのベスページ・ブラックだったが、アメリカを代表するニューヨークでの開催となると、“キャプテン・アメリカ”はいつも以上に気合が入り、頑張れるのかもしれない。

「生まれたとき以来」の10日間のゴルフ断ちをしたら飛距離が伸びた!?

しかしパトリック・リードほどの実力者がなぜ優勝までに16カ月も時間を要したのだろうか。マスターズで優勝すると他のメジャーに比べて達成感が強すぎてバーンアウトしてしまうのか、あるいはマスターズチャンピオンであることを意識しすぎて、技術的に、精神的に何か変わってしまうのだろうか?

「僕の場合は一生懸命やりすぎてしまっていたと思う。そのせいで肉体的にも精神的にも疲れちゃったんだ。何か間違った方向に進んでいると思った。だから休みが必要だと思った」

彼は今年の全米プロで予選落ちをしたあと、思い切って3週間の休みを取ることにした。妻やコーチに「無気力に見える」と言われたからだ。休みを取っていないから、きちんと休んでペブルビーチ(全米オープン)から取り返そう、と。ゴルフクラブを10日間一切握らず、妻のジャスティンとちびっ子2人と一緒にニューヨーク・ロングアイランドに家を借りて完全休養に充てた。

「7日以上クラブを握らないなんて今までに記憶がない。1990年に生まれたときくらいかな?(笑)10日もゴルフしないなんて、ハードだったよ」

10日もゴルフを休んだら、いいプレーなんて期待できないだろう。そう危惧していた彼が10日後にボールを打ってみると、なんと飛距離が伸び、球筋のビジョンが明確にイメージできるようになっていたという。

一生懸命やりすぎて肉体的にも精神的にも疲れ果てていた状態でプレーを続けるよりも、少し休んで体力、気力を回復しプレーした方が、結果的によかったのだ。自分が日々取り組んでいることは正しいと思うし、実際スウィングは悪くないが球が曲がってなぜかスコアにならなかったのは、技術的な問題ではなかった。

一時、コーチを変えてデビッド・レッドベターに習ったこともあったが、「あまりにもテクニカルすぎる」と、元のコーチに戻した。スウィングを改造しようなどと考えず、単に休みを取り入れたことでリードのゴルフは蘇ったのだった。

この思い切った「10日間のゴルフ断ち」のおかげで全米オープン以降はロケットモーゲージクラシック5位タイ、全英オープン10位、WGCフェデックス・セントジュード招待12位タイなど、安定して好成績が残せるようになってきていた。そして先週、キャプテン・アメリカにふさわしい地、ニューヨーク近郊のリバティナショナルで優勝することができたのである。

「僕の友達の1人が言ってくれたことで忘れられないことがある。“マスターズで勝ったからといって、それは始まり。オーガスタで勝ったことを、(次へのステップの)踏み台として考えろよ。これで終わったと思ってはいけない“ってね。僕は実際プレーしすぎていたし、やりすぎて気持ちと体がバラバラだったから、何も感じることができなかった。スイング中、どこにクラブがあるのか、もね」

日々仕事に追われ、疲れ果てた体と気持ちに鞭を打って仕事をし続けなければいけないビジネスマンも多いと思う。そういう私もその1人であることは否めない。だが、効率が悪い、ミスが多いと感じたら、やはり彼のように一息入れた方がいいようだ。人間も動物。感覚が鈍るような生活をしていては、望むようなパフォーマンスは残せない。そうは言っても、なかなか休めないのが現実ですがねぇ〜(苦笑)。

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