プレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」を制したのはロリー・マキロイ。タイガー以来、史上2人目となる2度目の年間王者に輝いたマキロイだが、この1年間通して目指していたものがあるという。それは一体なにか?

年間を通しての目標「平均ストローク1位」も手中に

今年度のPGAツアーは、先週末にアトランタ・イーストレイクGCで行われたフェデックスカップ・プレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」で幕を閉じた。フェデックスカップ総合優勝者はロリー・マキロイ。66、67、68、66と連日60台を叩き出し、2位のザンダー・シャウフェレと4打差をつけて優勝した。3位には最終日、最終組でラウンドした世界ランク1位のブルックス・ケプカが入賞。松山英樹は1位と13打差の9位タイに入った。

この優勝により、フェデックスカップ年間王者に与えられる特大ボーナス16億円をゲット。これはツアーで獲得した賞金には入らないため、今年度の賞金ランキング上はブルックス・ケプカに次ぎ2位で終了しているが、8億3000万円以上の獲得賞金、フェデックスカップ・ボーナス16億円、ウィンダムリワーズで2位に入ったことによるボーナス1億6000万円などを合計すると、なんと今季1年で26億円以上稼いだことになる。マキロイはお金について大会前に次のように語っている。

画像: 2度目の年間王者に輝いたローリー・マキロイ(写真はGetty Images)

2度目の年間王者に輝いたローリー・マキロイ(写真はGetty Images)

「お金は悪いものとは言うつもりはないし、多くの人たちのモチベーションにもつながっているが、僕がフェデックスカップで優勝したい理由はそれだけではない。もちろんお金もその一部。16億円をもらえるのは嬉しい。だが、トーナメントで優勝し、いいプレーができたと言う満足感の方が大きいんだ」

今回のマキロイのツアー選手権での勝利は、すなわちフェデックスカップ総合優勝を意味する。昨年までは大会の優勝争いとフェデックスカップのポイント争いが同時進行し、ツアー選手権の優勝者=フェデックスカップ総合優勝者とはならないパターンが多かった。たとえば、昨年ツアー選手権で優勝したのはタイガー・ウッズだったが、フェデックスカップ総合優勝者はジャスティン・ローズだったように。

だが、今年からフォーマットを変更し、最終戦のツアー選手権を迎える前のプレーオフシリーズ2戦(ノーザントラスト・BMW選手権)が終わったところで、ランキングに応じてスタート前にスコアのハンデを設けることとなった。1位は10アンダー、2位は8アンダー、3位は7アンダーからスタート……という具合である。ちなみに、2戦を終えて1位だったジャスティン・トーマスは10アンダーから、マキロイは5アンダーからのスタートだった。

「新しいフォーマットになって、心理的なことが大きいが、みんなが違うポジションからスタートするということにはとても違和感がある。でも大事なことは、4日間できるだけ良いスコアで上がれるように良いゴルフをしなければいけない、とうことだと思う」

画像: 「最少ストローク」を目指して4日間戦った結果連日60台をマーク。平均飛距離も1位という結果となった(写真は2019年の全英オープン 撮影/姉﨑正)

「最少ストローク」を目指して4日間戦った結果連日60台をマーク。平均飛距離も1位という結果となった(写真は2019年の全英オープン 撮影/姉﨑正)

彼自身が語るように、できる限りの「最少ストローク」を目指して4日間戦った結果、30人中たった一人、連日60台をマークすることができた。マキロイには「ストロークゲインド部門」のスタッツをできるだけ上げ、1年を終えた段階で「平均ストローク」で1位になることが目標だったそうだが、ツアー選手権時の「ストローグゲインド・オフ・ザ・ティ」と「ストローク・ゲインド・ティ・トゥ・グリーン」においては30人中1位に、「平均飛距離」でも1位(314.6ヤード)になった。

そして年間を通しての目標だった「平均ストローク」でも1位に輝いたのである。全出場試合19試合のうち、トップ10入りは14回と74%の確率でトップ10入りを果たしている。一方、世界ランク1位のブルックス・ケプカは21試合中、トップ10入りは9回(43%)。両者を比較すれば、今年のマキロイが1年間を通していかに安定した好成績を残していたか、ということがわかる。

グランドスラムのかかったマスターズ、地元優勝がかかっていた全英オープンでメジャー優勝は果たせなかったものの、年間3勝、トップ10入り74%という記録はなかなか出せるものではない。1年を通じて最も活躍した選手に贈られるべき16億円のボーナスを受け取る価値が彼には十分ある。

「今年はもっと勝てたとも思えるけど、こうして再びフェデックスカップで総合優勝を挙げることができ、年間を通じて安定したプレーをし、優勝争いに食い込めたことは誇りに思う。この優勝トロフィに名前を刻むのは2回目。過去タイガーしか成し遂げなかったこの偉業を自分も成し遂げられて、正しい方向に進んでいることを実感している」

フェデックスカップで2回優勝したことがあった選手は、タイガー・ウッズしかいなかったが、今回の勝利でマキロイも仲間入り。昨年の最終日は、タイガーと最終組で優勝争いをしながら負けを喫してしまった苦い思い出が蘇ったと言うが、今年の最終日の18番ホールを歩きながら、キャディで親友のハリー・ダイヤモンドとこんなことを話していたそうだ。

「去年はこうして最終ホールを歩いていても全然楽しくなかったけど、今年は世界ランク1位の選手で、メンフィス(WGCフェデックス・セントジュード招待)で負けたブルックス・ケプカにリベンジを果たして優勝、という状況で歩くことができて素晴らしいね」

マキロイは約1カ月前の「WGCフェデックス・セントジュード招待」(メンフィスで開催)でブルックス・ケプカと優勝争いを繰り広げたが、この時はケプカの優勝に終わり、自身は4位タイに終わっている。最近はケプカとは同組でプレーすることも多いというが、ツアー選手権では、「ケプカのようにプレーしたかった」のだという。一体これはどういう意味か?

「メンフィスではブルックスを全然とらえることができなくて、ちょっとガッカリしていたんだ。だから今日はベストを尽くそうと思った。最終組でプレーし、数週間前に負けた世界ランク1位と回って66を出すこと。これらのことができたことを誇りに思うよ」

画像: 7月に開幕されたWGCフェデックス・セントジュード招待でケプカと優勝争いをしたマキロイは「彼のようにプレーしたかった」という

7月に開幕されたWGCフェデックス・セントジュード招待でケプカと優勝争いをしたマキロイは「彼のようにプレーしたかった」という

「僕は時々、日曜日を木曜日や金曜日のように(平常心で)プレーしようとして、逆にリラックスしすぎてしまうことがある。だが、メンフィスの最終日にブルックスと一緒にプレーしたとき、彼は65をマークして優勝したんだ。彼はトーナメントを支配し、僕を支配していた。それを見て刺激を受け、勉強になったんだ。モチベーションというのとは違うけど、何かもっと違うことを学んだ気がした。もし僕が世界で圧倒的に強くなりたいなら、彼のようにならないといけないってね。もしブルックスに究極のお世辞を言ってあげるとしたら、“彼のようにプレーしたかった”ってことかな」

ケプカのように、何かを支配するような圧倒的な強さを身につけたいーー今年は今までで最も安定した好成績を残せた1年だったとマキロイ自身も語るように、最強のパフォーマンスを残せた1年だったと思われるが、そんな彼でも日々いろいろなことを学び、他に支配されない圧倒的な強さを身につけようと努力している。

ここ最近は、ブルックス・ケプカとダスティン・ジョンソンという二人がライバルとしてクローズアップされることも多かったが、今後はブルックス・ケプカとローリー・マキロイの二人が長年に渡りツアーを支配することになるかもしれない。昔のタイガー・ウッズとフィル・ミケルソンのライバル関係とは異なり、もっと互角の戦いとなるだろう。互いのプレーに刺激を受けながら、パフォーマンスを高め合っていくような新しい関係性が生まれるような気がする。

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