今年6月のプロ転向からわずか3戦でツアー初優勝を挙げ、注目を集めるPGAツアーの新星マシュー・ウルフ。ZOZOチャンピオンシップにも参戦するウルフの独特なスウィングを、プロゴルファー・中村修が解説。

すでにツアー1勝を挙げた今年デビューの20歳。米国ではすでに大人気

いよいよ開幕となるZOZOチャンピオンシップ。ご存知の通り、タイガー・ウッズやロリー・マキロイをはじめとするビッグネームが名を連ねるビッグイベントですが、若手たちの活躍にも注目したいところですね。

PGAツアーで注目の若手と言えば、マシュー・ウルフ、コリン・モリカワ、ビクトル・ホブランの3名。2018-19シーズンにプロ転向したこの3名は、実力、人気ともにかなり高いです。日本女子プロで言うところの“黄金世代”のような立ち位置と言えばわかりやすいでしょうか。

とくにマシュー・ウルフ選手はエキサイティングなゴルフをする選手としても有名です。ドライバーで池超えや林超えも積極的に行いますし、落とし所が狭くても貪欲に狙っていき、そこからピンをデッドに攻めます。この非常にアグレッシブな攻めの姿勢がアメリカでも大人気なんです。

画像: 今年6月にプロ転向しすでに1勝を挙げている若手、マシュー・ウルフ(撮影/姉崎正)

今年6月にプロ転向しすでに1勝を挙げている若手、マシュー・ウルフ(撮影/姉崎正)

それでいて平均飛距離309.1ヤード、フェアウェイキープ率59.85%(2018-19シーズン平均)と距離、精度も申し分ないです。そして、スウィングの形はかなり独特。型にとらわれず自分が打ちたい球を打つ。そんな印象を受けます。ZOZOで撮影した最新スウィングを、じっくりと見ていきましょう。

アドレスを見るとグリップは少しウィーク気味。それでいて、バックスウィングからトップ位置まで、フェースを開かずシャットに上げていきます(写真A)。

画像: 写真A:ウィークグリップで握り、大きくヒールアップしながらシャットにクラブを上げていく(撮影/姉崎正)

写真A:ウィークグリップで握り、大きくヒールアップしながらシャットにクラブを上げていく(撮影/姉崎正)

トップは少しシャフトクロス(ターゲット後方から見たときに、シャフトがターゲットの右を指す)していて体も反り返っている感じなんですが、切り返しからダウンスウィングにかけて、クロスしたクラブを後ろ側に倒すように、回しながら下ろしてきます。これによってしっかり構えたときのシャフト延長線上にクラブを乗せて正確なインパクトを実現しています。

ダウンスウィング時の左手の甲に注目してみてください(写真B)。ターゲット方向ではなく、地面方向を向いていますよね。バックスウィングに引き続き、フェースを閉じてクラブを下ろしていることがわかります。

画像: 写真B:ダウンスウィング時、左手甲は地面方向を向いている(撮影/姉崎正)

写真B:ダウンスウィング時、左手甲は地面方向を向いている(撮影/姉崎正)

加えて、左の肩が上がっていないことも注目ポイント。そのことで手元を低い位置に降ろすことができます。低い入射角を確保した上で、クラブのタメをキープしたままインパクトでボールにエネルギーを伝えることが可能になっているんです。

インパクトを見ると、左手甲とフェースがターゲット方向を向いています(写真C)。2つの動きが一致していることで、方向性にも優れています。

画像: 写真C:インパクト時、左手甲とフェースの向きが一致している(撮影/姉崎正)

写真C:インパクト時、左手甲とフェースの向きが一致している(撮影/姉崎正)

下半身の使い方も素晴らしいです。特にドライバーだとわかりやすいですが、インパクトの瞬間にジャンプするような動きをしながら打っています(写真D)。本人もドライバーが持ち味だと語っていましたが、飛距離も出ますし、なにより球が高い! この弾道は一見の価値があります。

画像: 写真D:体の回転に加え、地面反力も採り入れて飛ばしている

写真D:体の回転に加え、地面反力も採り入れて飛ばしている

スウィングもですが、プレショットルーティーンもかなり独特です。一般的には手をターゲット方向に動かしたり、足踏みで体重移動をすることでスウィング始動のきっかけを作る「フォワードプレス」という動きを採り入れている選手が多いのですが、ウルフ選手の場合はそれを腰をターゲット方向に切るような動きで行っています(写真E)。写真だとわかりづらいですが、生で見るとまるでダンスをしているように見えるほどです。

画像: 写真E:腰をターゲット方向に切るような動きのルーティン(写真右)が特徴的。腰を切り、それを戻すと同時に始動する

写真E:腰をターゲット方向に切るような動きのルーティン(写真右)が特徴的。腰を切り、それを戻すと同時に始動する

タイガー、マキロイ、松山……といった選手たちに注目が集まりますが、会場を訪ねる予定のある方は、ぜひマシュー・ウルフもチェックしてみてください。ポッと出ではなく、この先長く活躍する可能性を秘めた選手だと思います。

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