「ZOZOチャンピオンシップ」を制し、日本のファンを熱狂の渦に巻き込んだタイガー・ウッズ。そんなタイガーをはじめとするトッププレーヤーたちは、どのように使用ボールを選んでいるのか。彼らのボール選びの優先順位に、ギアライター・高梨祥明が注目した。

ウッズやローズが気にしている“ウインドウ”を射抜くイメージとは?

「最も重要なこと。それは落ち着いたサウンドだね。これは良く話していることだけど、パットをしっかり(強く)打ちたいから“クリッキー”な音は好きではないんだ。パッティング、そしてアプローチに至るショートゲーム全般のコントロール性能が進化(キープ)した上で、飛距離も伸びれば素晴らしいことだよね。普通は飛距離を重視すればグリーン周りでの性能は低下するものだ。でも、このボールはそのどちらも持っている。とても気に入ったよ」

ブリヂストンスポーツが開発中の「TOUR B XS プロトタイプ」に対する、タイガー・ウッズのコメントだ。ブリヂストンは昨年の5月から3回にわたってウッズに対するニューボールのサンプルテストを敢行。その結果、前記の通りウッズも賛辞を惜しまない、ニューボール候補が絞り込まれたのだという。

現在、ウッズが使用しているのは「TOUR B XS」の現行モデル。ウッズがブリヂストンボールを使用し始めたのは2016年からだが、ナイキゴルフのボール事業撤退に伴い、市場にあるあらゆるボールをテストして惚れ込んだのが「TOUR B XS」の前身である「B330 S」だった。

現在、モデル名こそ「TOUR B XS」に変わっているが、基本性能は「B330 S」と同じ。なぜなら、このボールのいちばんの愛用者であるウッズが、ブリヂストンの度重なるヒアリングに対しても“何も変える必要はない。不足がないから”と、むしろ変化してしまうことを拒んでいたからだった。それほど、「B330 S」はウッズの求める“理想球”だったということになる。

画像: パッティングから始め、チップショット、アイアン(ショート→ミドル→ロング)、そして最後にドライバーでのパフォーマンスをチェックするのがタイガー・ウッズ流のボールテストだという。写真はすでにTIGERのオンネームがされた〈TOUR B XS〉プロトタイプ。

パッティングから始め、チップショット、アイアン(ショート→ミドル→ロング)、そして最後にドライバーでのパフォーマンスをチェックするのがタイガー・ウッズ流のボールテストだという。写真はすでにTIGERのオンネームがされた〈TOUR B XS〉プロトタイプ。

「(ボール選びでは)各番手で自分が思い描いた“ウインドウ”をボールが通過するかどうかを重要視する。ボールスピードも気にはしているが、大切なのは高さだ。とくにアプローチでは低めに出てスピンが強くかからないとアグレッシブに攻められない。スピンが少なくて、ポン!とポップアップしてしまうボールでは絶対ダメなんだ。スピンを抑える事は打ち方でいくらでもできるから、とにかくバックスピンが良くかかる方がいい。求めるウインドウの高さは各番手で異なるけど、自分のキャリアの中でウインドウの高さ(飛距離)を変えたことはない。だから、今でも若い時と同じように8番アイアンで160ヤードを打てているのさ」(ウッズ)

“ウインドウ”。これは欧米のトッププレーヤーがよく口にする表現だ。文字通り空中に窓枠をイメージし、打ったボールがその枠を通過するかどうかが道具選びの最重要ポイント。今年から本間ゴルフと契約しているジャスティン・ローズも、同社と契約を決めた理由について“ネバー・ミス・ウインドウ(枠を外さないから)”と語っている。

トッププレーヤーにはドライバーからアプローチに至るまで、常に理想とする弾道高さのイメージがあって、そこにボールを通過させることがショット成功の証しということになるのである。

「“ウインドウ”は、まさにビルの窓に向かって打つようなイメージ。インパクトしてボールを目で追った時に、イメージした所(位置・高さ)にボールがないと不安になる。そのボールは自分に合ってないと感じてしまうんだ」とウッズは語っている。

ドライバーをはじめとするロングショットでの飛距離アップが必要ないわけではないが、それによってショートゲームでのフィーリングやウインドウイメージが損なわれてしまうのであれば、無理にボールを替える必要はない、ということなのである。

ウッズの厳しい基準をクリアした「TOUR B XS プロトタイプ」は、11月中旬に公認球リストに載り、ツアーでの使用が可能になるという。もちろん、ウッズも実戦の場で最終的な使用テストを繰り返し、問題なければニューXSに本格チェンジする腹づもりだ。

グリーンからボール選びを考える、それがゴルフボール選択の王道。

ゴルフボールの話題をもうひとつ。ウッズの活躍に日本中が熱狂したZOZOCHAMPIONSHIPだが、PGAツアーが丸ごと日本上陸したこの大会で、もっとも多くのプレーヤーに使われていたのが、タイトリストのゴルフボールだった。

大会には78名のトッププレーヤーが出場したが、そのうちの76%にあたる59名がプロV1/プロV1xのいずれかを使用。これは2位ブランド(7名/9%)を圧倒的に引き離す数字である。これだけシェアが高ければ最終順位の上位12名のうち8名がタイトリストボールプレーヤーという結果になるのも当然という気がする。

タイトリストのゴルフボールはPGAツアーで常時70%前後の高い使用率を継続しており、U.S.LPGAツアーになると80%以上の使用率となるトーナメントも度々あるほど独壇場といえる支持率を保っている。この独占状態のバックボーンになっているのが、同社のゴルフボールに対する考え方、揺るぎないポリシーだ。

タイトリストゴルフボールの開発哲学を集約した言葉が“GREEN TO TEE”である。これは理想のゴルフボールの在り方を、グリーン上からティイングエリアに向かって考えていく、という意味である。ゴルフボールの性能でもっとも重視すべきはパッティングであり、次にショートアプローチ、ウェッジのフルショット、次いでショートアイアン→ミドルアイアン→ロングアイアン、そして最後がドライバーを含めたウッド類でのパフォーマンスということである。

画像: ショートゲームでのフィーリングとアプローチでの高いスピンコントロール性能を有しながら、ロングショットでの飛距離パフォーマンスを伸ばし続けている、タイトリストのプロV1とプロV1x。

ショートゲームでのフィーリングとアプローチでの高いスピンコントロール性能を有しながら、ロングショットでの飛距離パフォーマンスを伸ばし続けている、タイトリストのプロV1とプロV1x。

これは決して飛距離性能を重視しない、ということではない。飛距離を追い求めるあまり、グリーン周りでの性能を低下させることがあってはならない、という戒めに近いボール作りの大原則を示した言葉である。

では、なぜタイトリストのエンジニアたちがここまでパットやアプローチの性能向上と維持に気を配るのか? それはその成功こそが“スコアメイク”の要だからである。ドライバーショットが10ヤード飛ばなくても2打目以降でリカバリーすることは可能だが、アプローチ、パットには後がない。グリーン周りでのミスは、ゴルフにとって命取りなのである。

タイガー・ウッズが語ったゴルフボール選びのこだわり、そしてトッププレーヤーにもっとも支持されているゴルフボールの製品哲学。その共通する点にこそ、我々アマチュアゴルファーがもっと重要視すべき“ゴルフの本質”が示されているような気がしてならない。ドライバーでボールが飛ばなければゴルフが面白くないじゃないか! という意見もあるかもしれないが、スコアメイクを重視したゴルフボールで、PGAプレーヤーがどれほどの飛距離を出していたのか。我々はZOZOCHAMPIONSHIPで目の当たりにしたはずである。

写真/ポジション・ゼロ

This article is a sponsored article by
''.