首都圏の河川敷コースを中心に深刻な被害をもたらした台風19号の発生から1か月。現在もクローズ中のコースも少なくないなか、東京都足立区の「新東京都民ゴルフ場」はついに年内での廃業を表明した。だが、この地にゴルフ場を存続させる選択肢はまだ残っているという。その可能性とは……

今月1日に「廃業」を表明したが……

1955年に開場した現在の「新東京都民ゴルフ場」。名匠・上田治が設計し「河川敷ゴルフ場発祥の地」と呼ばれた同コースは、若かりしころの青木功(現JGTO会長)がキャディとして働きながら腕を磨き、後に世界の一流プレーヤーになった「原点」としても知られている歴史あるコース。

だが、今回の台風19号で受けた被害はこれまでにないものだったという。

三島徹男支配人は営業再開を断念した経緯をこう明かす。

「台風での水没は過去にもありますが、今回はすぐに水が引かずその間にコースに体積したヘドロの量がこれまではこれとは比べものにならないほどある。復旧には全面的な芝の張り替えが必要な状況で、来年以降また同程度の台風災害が『ない』保証もありません。とてもじゃないがウチの社の資金規模で再建できるレベルにない、という判断をせざるを得ませんでした」

画像: 2019年11月5日現在の「新東京都民ゴルフ場」。台風から約1か月が経過した現在も川の水が残ったままの状況だ

2019年11月5日現在の「新東京都民ゴルフ場」。台風から約1か月が経過した現在も川の水が残ったままの状況だ

もともと、ゴルフ場は足立区が管理していた場所で、区から管理委託を受けた「株式会社 新東京都民ゴルフ場」が管理、営業を行っていた。廃業を決め、同社は年内をメドに足立区に施設管理等の諸々の権利を返上する予定という。

新たな委託管理企業が決まれば、ゴルフ場‟存続”の可能性も

通常であればこれを受け、ゴルフ場は完全消滅する流れになる。だが、まだこの場所に「ゴルフ場」が存続する可能性はゼロではない。土地の管理主である足立区は、同ゴルフ場が日本の河川敷コースの発祥の地として、多くのゴルファーから支持を受けていることを鑑み、今後もこの土地を「ゴルフ場」として活用する選択肢を捨てていないという話もあるためだ。

もちろん、簡単な話ではない。実際に「ゴルフ場」施設として権利取得に興味を示す企業には、それ相応の資金的な体力も必要される。廃業を決めた新東京都民ゴルフ場の三島支配人は「地形的な問題で、土地をかさ上げする工事をしない限り、また同じような被害に合う可能性があります。もちろんそれには、かなりの投資が必要になります」と語る。

画像: ヘドロに埋まり閉鎖が決まったゴルフ場だが「復活」の可能性はゼロではない

ヘドロに埋まり閉鎖が決まったゴルフ場だが「復活」の可能性はゼロではない

一方で、将来的な見込みとして、暗い要素ばかりでもない。

同地付近では2028年までに国土交通省の河川整備事業として、いわゆるスーパー堤防(高規格堤防)の整備工事が予定されており、隣接地域自体が今回のような台風災害に対しても、被害を受けるリスクを軽減できる見込みだ。

さらにゴルフ場としては立地的な好条件もある。同地はJR京浜東北線・赤羽駅からタクシーや都営バスで15分。駅から約3.5キロ程度の距離にあり、体力のある人なら徒歩でもむかうことができる。コースがある荒川の土手には環状7号線が走っており、クルマでのアクセスも申し分ない。

現在の荒れ果てたコースを含め、環境の再整備さえ実現できれば、再び多くのゴルファーが訪れる可能性は十分に秘めているのだ。

足立区へ委託管理の返却を決めた「新東京都民ゴルフ場」の三島支配人も、この地が再びゴルフ場として再出発となることを願うひとり。

「『新東京都民ゴルフ場』という名前はもう残らないと思いますが、何とかこの場所をゴルフ場として続けられないか現在、旧知のコース関係者からアドバイスをもらい思案している最中です」

昭和31年2月に前身の「東京都民ゴルフ倶楽部」として開場以来、64年間続いたこの土地を『ゴルフ場』として存続できる否か……。その方向性は年内をメドに何かしらの形で出ることになりそうだ。

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