まだ記憶に新しいZOZOチャンピオンシップでタイガー・ウッズ、松山英樹に次ぐ3位に入り、翌週は上海で開催されたHSBC選手権で見事優勝したロリー・マキロイ。そんなマキロイを、「東京五輪の金メダル最有力候補」と予想するのはプロゴルファーの中井学。その理由を語ってもらった。

トレーニングを積むと、フィーリングは必ず狂う。だが……

マキロイといえばハードなトレーニングを積んでいることで知られる選手。そのトレーニングの成果とスウィングの感覚的な部分がフィットしてきた。最近のマキロイを見ると、そのような印象を受けます。

画像: フィニッシュでピタリと止まり、ボールを見送る姿に風格が出てきたマキロイ

フィニッシュでピタリと止まり、ボールを見送る姿に風格が出てきたマキロイ

スウィングでいえば、ダウンスウィングでの首の傾きが減りましたし、フィニッシュで右足が外に倒れる動きも減っています。首の傾きは力のないジュニアが重いクラブを振ったときに出やすい動きで、右足が倒れるのは体の回転が鋭すぎ、腰が回りすぎることで起こる動き。これらがなくなったということは、自らのスウィングスピードをしっかり制御できているという証拠。トレーニングによってフィジカルが鍛えられた成果と言えると思います。

トレーニングには犠牲も伴います。実際、マキロイが極めてハードなトレーニングを積むことに対しては賛否がありましたし、どちらかといえば「否」のほうが多かった印象です。それは、過度なトレーニングはゴルフのフィーリングを損なうというもので、それはたしかに真実なんです。

しかし、マキロイはそんな外野の声に耳を貸しませんでした。私も経験がありますが、トレーニングを積んでパワーアップすればするほど、フィーリングには確実に影響があり、それは、パワーアップした分だけショットが飛びすぎるといったことだけではありません。たとえばパッティングなど、繊細なタッチが求められるところにも相当な影響があり、それには彼もかなり苦しんだに違いありません。一時期マキロイはパターをよく取り替えていましたが、トレーニングの結果フィーリングが壊れ、それを補うために道具をチェンジしていたのではないかと思います。

それが、最近は契約先のテーラーメイドの「スパイダーX」にピタリと決まっています。タイガー・ウッズも復活途上だった昨年はパターを頻繁に変えていましたが、マスターズを勝ち、ZOZOを勝った今年はエースパターを手にしています。フィーリングとフィジカルが一致したときが、ゴルファーにとっては活躍できるチャンスなんです。

マキロイは「スポーツとしてのゴルフ」の体現者

マキロイは178センチと世界のツアーのなかでは上背がありません。その中でトップでいるためにはトレーニングは必須。一時的に調子を崩すとしても理想のフィジカルを手に入れ、ツアー屈指の飛距離と弾道の高さ、そしてパッティング時にまったくブレない下半身を手に入れました。一時期「振りすぎでは?」と思う時期も正直ありましたが、同じくらいかそれ以上に振っていても今はフィニッシュでピタリと決まり、ボールを悠々と見送っています。

画像: 最近ではパターも「スパイダーX」で落ち着いた

最近ではパターも「スパイダーX」で落ち着いた

タイガー・ウッズの登場により常識化したトレーニングの重要性ですが、これからの世界のツアーでは、たとえ一時的に不調になったとしても、ハードにトレーニングを積むことが必須になってくるように思います。

ZOZOチャンピオンシップをご覧になった方はみな思ったと思いますが、米ツアーの選手の弾道はみな高く、マキロイはそのなかでも一段高い球を打っていました。それが今のクラブでは一番飛ばせるからです。その上で、必ずしも飛ばし有利ではなかったアコーディア・ゴルフ習志野CCでも、上位は松山英樹選手を含め、PGAツアーの選手が独占していました。

ハードなトレーニングを積んだ真のアスリートゴルファーだけが生き残る戦場と化した米ツアー、その中でも現在もっともアスリートゴルファーと呼ぶにふさわしいのが、マキロイです。だからこそ、スポーツの祭典であるオリンピックの金メダル候補には、スポーツとしてのゴルフを体現するマキロイを、すくなくとも現時点では挙げたいと思うんです。

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