「LPGAツアー選手権リコーカップ」最終日の渋野日向子は首位と4打差の2位タイでフィニッシュし今シーズン最後の18ホールを終えた。そのプレーの模様を、現地からプロゴルファー・中村修がレポート!

逆転賞金女王へ向け2打差を追ってスタートした

トップのイ・ボミ選手と2打差の3位タイでスタートした渋野日向子選手は、今日は2学年下の古江彩佳選手とのペアリング。最終組の1つ前の組で回ります。賞金女王を争う鈴木愛選手は1アンダーの12位タイで5つ前の組、シン・ジエ選手はイーブンパーの17位タイでさらにその3つ前の組でスタートしています。

「賞金女王のことは考えません。応援してくれた人や支えてくれた多くの人に一年間の成長した姿を見せられるように」と話していた渋野選手ですが、ここまで2人がスコアを伸ばしきれていない状況ですので、逆転の賞金女王に輝ける可能性も十分にある展開からのスタートとなりました。

画像: 「LPGAツアー選手権リコーカップ」最終日を2アンダーで回り、首位と4打差の2位タイで終えた渋野日向子

「LPGAツアー選手権リコーカップ」最終日を2アンダーで回り、首位と4打差の2位タイで終えた渋野日向子

シン選手は、月曜日に痛めたという手首のケガが思わしくないのか、序盤は彼女らしい精度の高いショットが見られません。3番でバーディを奪うも4、5番と連続ボギーを叩いてしまいます。鈴木選手もスタート1番でバーディを奪いますが3番をボギーとしなかなかスコアを伸ばせません。

そんななか渋野選手も、1番ホールからピンを狙って3.5メートルにつけましたがバーディパットは入らずパー、2番パー5でもピン左3.5メートルに乗せるもバーディは獲れません。昨日の上がりホールでミスをした力んで左に曲がるスウィングを修正しましたが、感触は今一つのようです。

その間に1,2、4番と古江選手がスコア伸ばします。渋野選手はショットもパットも思わしくなくパーを重ねます。9番パー2では、2打目をグリーン手前のあごの高いバンカーに入れ、そこから1打で出せない大ピンチ。次のバンカーショットをうまく寄せてなんとかパーでしのぎましたが、結局前半9ホールがすべてパーで、その中でもチャンスにつけたパットも決めきれません。

ショットがいい所に乗らないし、乗ってもバーディパットが入らず、いかにも噛み合わないゴルフではありましたが、逆に言えば乗らなくてもボギーを打たず、しびれるパーパットを沈めて前半をパープレーで凌いだとも言えます。これはアプローチの向上も含め、彼女自身のゴルフが成長した証です。

前半をパープレーでしのぎ、後半に勝負を期したが……

鈴木選手も9、10、11番で3連続バーディを奪い一気にギアを上げてきました。また、最終組でプレーするペ・ソンウ選手が8、9、10番で3連続バーディを奪い、8アンダーで一気にトップに躍り出ました。

画像: 前半はチャンスにつけてもパットが決まらずにパープレーで折り返す

前半はチャンスにつけてもパットが決まらずにパープレーで折り返す

渋野選手にとっては、9番のパー5で取れなかったこともあり後半の起爆剤となる10番ホールで是非ともバーディを奪いたいところでしたが、ピンまで2mの位置にパーオンするものの、この大事なバーディパットを外してしまいます。11番パー5でもティショットをバンカーに入れてしまいパー。どうしてもバーディが獲れません。

ホールアウト後、「10番のバーディパットが入らなかった時点で、今日は(優勝は)ないなと思いました」と話していたように、この10番のパーは痛恨でした。

そして迎えた12番パー3。起死回生のベタピンで今日初のバーディをゲット。苦しいパーで凌いできたのがここでようやく報われ、バーディ先行です。続く13番パー5でも、花道からのアプローチをうまく寄せて連続バーディ。ここでついに単独2位に浮上しました。

このまま波に乗りたい14番はピン手前から寄せてパーで切り抜け、迎えた15番のパー4、チャンスでアドレナリンが出てしまったのか、フェアウェイセンターからの2打目のアイアンショットがグリーンオーバーしてしまいます。モシャモシャのラフからのアプローチをショートして寄せきれずに無念のボギー。

勢いに乗りかけていたところでその流れを自ら断ち切る痛恨のボギーで、トータル6アンダーに後退。後半に入っても着実にバーディを重ねていたペ・ソンウ選手が10アンダーまで伸ばしており、これで事実上の「万事休す」という雰囲気になってしまいました。

単独2位でも賞金女王のチャンスはありますが、その場合、鈴木愛選手が9位タイ以下(3人以上)であることが条件。鈴木選手は5位タイまでスコアを伸ばしてきたため、こちらもかなり可能性が低い状態でした。

画像: 16番パー3では惜しくもチップインバーディならず

16番パー3では惜しくもチップインバーディならず

それでも16番パー3でもバンカーを越えてすぐのピンを狙います。わずかに手前に外し、そこからチップインを狙いますがわずかに入らずにパーとします。

苦しい内容の中でも攻め続けたご褒美が最後の18番でやってきます。ドライバーを振り切り残り172ヤードを5番アイアンで2.5メートルのチャンスにつけます。ここでバーディを奪いホッと安堵の表情を浮かべます。トータル7アンダーの2位タイでフィニッシュしました。優勝はペ・ソンウ選手。女王の座も鈴木選手に譲ることとなりました。

画像: 最終18番ホールをバーディで締めくくり悔いのないラウンドになった

最終18番ホールをバーディで締めくくり悔いのないラウンドになった

しかし「どのパットよりも気持ちが入った」という最終18番のバーディパットは、渋野選手らしい強気のパッティングでした。彼女自身「最後にバーディが獲れたので悔いはないです」と語ったように、この1年の彼女のプレーを象徴するような見事な魅せるバーディだったと思います。

優勝にも賞金女王にも届きませんでしたが、明らかに調子がよくないにもかかわらず、32人の実力者しか出場できないリコーカップでしっかりと優勝争いができたということは、渋野選手のゴルフ力が上がった証拠と言っていいでしょう。まして今シーズンは、スコアメークのためのマネジメントをほとんどせずにひたすらピンを狙うゴルフでこれですから、彼女のポテンシャルは計り知れません。

画像: 握手をする賞金女王を戴冠した鈴木愛(左)と2位の渋野日向子(右)

握手をする賞金女王を戴冠した鈴木愛(左)と2位の渋野日向子(右)

長かった激動のシーズンを終えた渋野選手。試合後のインタビューで記者たちの笑いを誘った「(12月中に)ポケモンを全クリしたい」という願いも、きっと叶えられることでしょう。

今年一年をひと言でいうと、という記者からのお題には”謎”というひと言で爆笑を誘いました。「ここまで決して一人では来れなかった。周りの支えてくれた人、応援してくれた人達に感謝しかありません」と様々な経験をして財産になる一年だったと語りました。

黄金世代の中で最も今シーズンのゴルフ界を盛り上げてくれた一人。全英女子オープンを制し国内4勝を挙げ、賞金ランク2位、メルセデスランキング1位と大きく飛躍しました。来季は一体どんなプレーを見せてくれるのか今から楽しみでなりません。まずは本当にお疲れさまでした。

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