2年連続賞金王となった今平周吾を始め、PGAツアーで活躍するトミー・フリートウッドもゴルフクラブを短く握っている。その効果についてギアライター・高梨祥明が改めて考えた。

スウィングだけではない。クラブを短く握ると道具の性格が変わる。

日本ツアーの賞金王や欧州ツアー第2位のトッププレーヤーがやっていると、なんだかとっても良さそうな気がしてくるのが不思議だ。もちろん、ゴルフクラブを“短く握る”ことである。

短くクラブを握っているプレーヤーのほとんどは、幼い頃からそう指導されてきたケースが多い。トミー・フリートウッドなどはジュニア時代、クラブを長く握ると父親から怒られたという。昨日、今日始めたことではないから、ずっと長めにクラブを握ってきた我々が「トレンドだ!」とにわか的に真似しても良いかは正直わからない。今回はゴルフ道具が短く握ることによって、どのように性質をかえるのか、についてのみ考察を加えたい。

画像: 短く握るとスウィングも変化するが、クラブ全体のウェイトバランス、シャフトの仕事量(硬さ)も変わる(写真右は今平周吾、左はトミー・フリートウッド)

短く握るとスウィングも変化するが、クラブ全体のウェイトバランス、シャフトの仕事量(硬さ)も変わる(写真右は今平周吾、左はトミー・フリートウッド)

“短く握る” ことによって、ボールとの距離が近くなる。それによってスウィング、とくにバックスイングがアップライトに上がるようになる。長さによるこうした変化は、もちろんあるだろうと考える。では、クラブ自体はどう変わるのか? 少し調べてみた。

短く握って起こるクラブの変化【1】

カウンターバランスになる。

まず、クラブの手元とヘッドにかかる重さのバランス関係(配分)が変わる。クラブの真ん中(シャフト)を握れば、ヘッドは極端に軽く感じるようになるが、これはヘッドと手元の重量バランスが天秤のようにイーブンに近づいたからだ。

この効果はたとえ数センチでも握る箇所を変えれば起こること。筆者の私的な実験計測では1.5インチ短く握った場合、だいたい6グラム手元が重たくなった。つまり、そのぶんヘッドが軽く感じ、全体としてはバランスダウンしたような感じになる。「今日はドライバーが振りにくいな。体のキレがないな」と感じる日は、短く握ることでスイングのスピード感やリズムを調節することができる。

短く握って起こるクラブの変化【2】

シャフトが硬くなる。

同じ硬度のパイプも短ければ硬く、長くなるとしなりやすい。ゴルフクラブのシャフトも同様で、握りからヘッドまでのワークする長さを短くしてしまえば、シャフトの仕事量は少なくなる。ちなみに振動数を測る機械で、3インチクラブの固定位置を短くして計測したところ、それだけで25cpm振動数が上がった(つまり、硬くなった)。

専門家によれば8cpmでハーフフレックスくらい硬くなるイメージだというから、3インチでは1・5フレックス硬くなったことになる。シャフトが硬くなるとヘッドは軽く感じられる。これによって「振りやすさが向上した」と感じる場合がある。

画像: シャフト軽量化とともに、グリップエンドに10gのウェイトを内蔵したゼクシオイレブンのウェイトプラスグリップ。これは短く握らずに振りやすさを向上させるための工夫だといえる(撮影/三木崇徳)

シャフト軽量化とともに、グリップエンドに10gのウェイトを内蔵したゼクシオイレブンのウェイトプラスグリップ。これは短く握らずに振りやすさを向上させるための工夫だといえる(撮影/三木崇徳)

“短く握る”とは、このようにクラブ全体のウェイトバランスやシャフトの仕事量に大きな影響を与える。逆にいえば、この変化を利用して、自分が使いやすい状態にクラブを調節することができる、ということだ。

とくに現在のドライバーは、14本中1本だけが極端に長く、シャフトが軟らかく、ヘッドが重たく感じられるように作られている。なんとなく「ドライバーだけうまくいかないな。違うな」と感じているゴルファーも多いはずである。そんな時は、“短く握る”を試していただければと思う。指一本分なら振り感がどう変わる? 打球結果はどう? 次に指二本分ならどう変わる? そんな風に練習場で遊び感覚で握り長さを変えてボールを打ってみると、自分に適した長さ、あるいはシャフトの硬さに気づくことができるのだ。

何インチ短く握ればいいか、そこに正解はない。もちろん、短く握ったほうがダメになってしまう人もいるだろう。そういう人は現在のドライバーにうまく対応できているのだと思う。トレンドではなく、自分はどうか? 常にその視点を大切に、楽しみながら“短く握る”を試していただきたい。

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