「ドライバーが苦手」「アイアンがどうしても当たらない」「アプロ―チでざっくりしてしまう」といったように誰にでもどこかの番手に苦手意識はあるもの。ではそれを解決するためにはどうしたらいいのか、プロも教えるメンタルコーチ・池努に解説してもらおう。

練習ではいいのに試合だとドライバーが曲がる。どうすればいい!?

学生時代の教科でも、ゴルフでも、大なり小なり苦手意識は誰にでもあるものだと思います。ドライバーが苦手、アプローチが苦手、パターが苦手、このアイアンは苦手……など。

ちなみにあなたはゴルフの特定のプレーに対する苦手意識はありますか?

メンタルコーチの私のもとには色々な苦手意識を持つプロや学生ゴルファーからご相談があります。かつてサポートしていたプロゴルファー(以下、Sさん)は極度のドライバーへの苦手意識を持っていました。試合になると突然ドライバーが右に大きく曲がり出すことが試合で1年以上も続いていたのです。

そして、練習でなんとか曲がらないようにドライバーを調整しても、ラウンドや試合に出るとまた曲がってしまう。Sさんはドライバーを使わずに試合に出ることさえあったと言います。

この状況で私はSさんのマインドセットを変えるためのコーチングをしていきました。

画像: 苦手意識のあるクラブどうやって克服する?(撮影/増田保雄)

苦手意識のあるクラブどうやって克服する?(撮影/増田保雄)

マインドセットとは心理学用語で物事や状況へのとらえ方や考え方のことを指します。そして、マインドセットが人の感情や行動に大きく影響することがわかっています。

オーストリアのザルツブルク大学の一般常識のテストを用いた研究で次のようなことがわかっています。

前もって「優秀な大学教授である自分」のイメージを刷り込まれたグループはそうではないグループより、自分の知識への自信が上昇と。結果、集中力が高まり、一般常識のテスト結果が良くなったのです。

また、その後に行われた実験でも一流アスリートのイメージを刷り込まれた被験者は運動テストの成績があがったといいます。つまり、自分に対して、または自分がとる行動に対して良いとらえ方をしていたほうがポジティブな感情、そして質の高い行動につながり、好結果にもつながりやすいのです。

話を戻すとSさんはある試合からドライバーが曲がるようになり、1年以上も「自分のドライバーは最悪な状態だ」というマインドセットで練習をつんでいました。そのマインドセットで練習するわけですから、「前のように戻るか不安だ」「うまくいくイメージがしない」「次の試合もまたあの球が出たらどうしよう」と考えながら不安な気持ちで練習を続け、状況は改善されませんでした。

この状況で私はSさんのマインドセットを変えるためのコーチングを次のように進めていきました。

私:ドライバーの調子が悪くなったことでなにかプラスに働いたことはありますか?

Sさん:プラス? そうですね……。それ以外のショット、アプローチ、パターはドライバーをカバーするためにかなりスキルアップできたと思います。

私:なるほど、沢山のスキルアップにつながっているのですね! もし、ドライバーが復調したらゴルフなどうなりますか?

Sさん:そうなれば、試合でも前よりスコアも順位も残せる自信があります!

私:そうなんですね! ではもし試合でそのような結果が出せたら、過去にドライバーの調子が悪かったことをどうとらえていますか?

Sさん:いやー、そうなれば、ドライバーが悪くなって良かったって言っていると思います(笑)。

私:なるほど、ドライバーが悪くなったことがより成長につながったわけですね。

Sさん:(驚いた顔で)そうか……。この経験が成長につながると考えられたらドライバーも変わるかもしれないです……!

彼はこの日からポジティブなマインドセットでドライバーと向き合うことになりました。過去は「ドライバーは最悪な状態」、この日から「ドライバーを良くすることで理想のゴルファーに近づく」というマインドセットに変えたのです。

そして、その後3カ月で実際にドライバーショットはかなり改善され、試合でも普通にドライバーを使うことができるようになり、Sさんは公式戦でキャリアハイの順位なども記録されていきました。

誰にでも苦手意識はあるものです。しかし、その苦手なものを克服したり、改善したいのであれば「〇〇は苦手」「〇〇はできない、向いていない」などとマインドセットするのではなく、Sさんのようにプラス側のマインドセットをする。そのことが、苦手意識克服のきっかけになるかもしれないですね。

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