渋野日向子の大活躍に湧いた2019年の女子プロゴルフ。ゴルフ界でプロフェッショナルな技量と知識を持っている証ともいえる「プロゴルファー」の称号だが、その仕組みはイマイチわからないという人も多い。いったいゴルフの「プロ」とは、どんなもので、どうすればなれるのか?

「女子プロゴルファー」には2つのカテゴリがある

まずゴルフの「プロ」には、大きく2つのカテゴリがある。大会に出場し順位に応じた報酬を得て生計を立てる「ツアープロ」と、ゴルフに関する技術や知識を第3者に伝承することで報酬が得られる「ティーチングプロ」の2種類だ。それぞれの「プロ」を目指した場合、そのアプローチも異なる。

「日本女子プロゴルフ協会(LPGA)」のプロ資格取得を例に2つのプロの目指し方を紹介する。

ツアーで活躍する「女子プロ」になるためにはハンディキャップ5以下が目安

まず、レギュラーツアーや下部のステップ・アップツアーで賞金を稼いで報酬を得ることを目的とする「ツアープロ(トーナメントプロ)」にはどうやったらなれるのだろうか。

テストは年に1回行われ、受験資格は最終テスト開催年度で満17歳以上の女子、技術における受験資格は設けていないがJGAかUSGAのHDCP5.0以下のゴルファーが推奨されるという。いわゆる「5下シングル」以上の腕前が、プロテスト受験の目安ということだ。

画像: 今年のLPGA「最終プロテスト」でツアープロゴルファーとしての資格を得た21名。過酷な選考レースを勝ち抜いただけでなく、プロになるために投資を惜しまずに狭き門を通過した(撮影/岡沢裕行)

今年のLPGA「最終プロテスト」でツアープロゴルファーとしての資格を得た21名。過酷な選考レースを勝ち抜いただけでなく、プロになるために投資を惜しまずに狭き門を通過した(撮影/岡沢裕行)

実技試験は第1次から2次、最終選考まであり、選考を通過できる、すなわちプロになれるのは最終プロテストの競技終了時点で上位20位タイの選手のみと定められている。

また各予選段階には、受験免除の要項もあり、当該年度のトーナメント プレーヤー(TP)単年登録者や過去3年間の「日本アマチュアゴルフ選手権」「日本女子学生ゴルフ選手権」の優勝者や、「日本女子オープン選手権」でのローアマチュアを獲得した者などは2次選考までが免除される。ただし、このうちTP単年登録者以外の条件は1度限りしか使えないため、使いどころも重要だ。

2020年のプロテストに挑戦したのは免除者を除けば約550名。参加したうち、合格できるのは約3%と極めて狭い門となっている。

そして、晴れて選考を通過した後は、入会式を経て「新人セミナー」などトーナメントプロとしての研修を終え、晴れて「ツアープロ」資格を得ることになる。

また、あまり知られてはいないが、プロテスト合格後には「入会金」として60万円を最終プロテスト後に納めなければならない規定もある。それまでの実技試験のエントリーフィと併せて合計80万円ほど。

さらに翌年、賞金を稼ぐために出場する大会の優先順位を決める「QT(クオリティトーナメント)」へのエントリーフィにさらに9~15万円程度が必要となる。翌年、ツアープロとしてレギュラーツアー参戦を目指すためには、あらかじめ100万円程度の受験資本金が必要となる計算だ。

ツアープロになるということには、それだけの価値があるということだろう。

ティーチングプロは3年の長丁場

続いては「ティーチングプロ」について。「ティーチングプロ」の場合は、実施年度の年齢制限が1月1日の時点で満18歳以上と「ツアープロ」よりも1歳、受験年齢資格が上がる。

審査料2万円を振り込み後、書類選考→面接・一般常識テストを経て、プレ実技審査→実技審査を実施。最後に「ルールテスト」6割、「ゴルフ教本テスト」の正解8割以上が合格ノルマになる筆記試験が行われ、それをパスして晴れて資格取得となる運びだ。

プレ実技試験はラウンドフィー別で審査費5万円で2日間36ホールをプレーし、166ストローク以内が通過基準となる。1ラウンド「83」平均の計算だ。そして、このプレ実技試験は、
1:日本女子プロゴルフ協会在籍5年以上の会員
2:日本プロゴルフ協会在籍5年以上の会員で、同協会のティーチングプロ資格A級、またはB級保持者
3:全日本ゴルフ練習場連盟に在籍の者など、一定条件を満たしている場合審査を免除される付帯事項もある。

実技試験もプレ実技試験と内容はほぼ同じ。審査費は5万円、2日間36ホールをプレーして、166ストローク以内が通過基準。

ティーチングプロは、ツアープロに比べて実技試験合格後、すぐにプロになれるわけではない。合格し、協会に承認されると「一般社団法人日本女子プロゴルフ協会ティーチングプロフェッショナル受講生」となる。登録申請料16万円、年間6万円を支払い、申込書を提出して登録終了。

2019年まではティーチングプロになるためには講習の受講など経て4年かかっていたが、2020年から制度が改正され、この期間が3年に短縮される。そのため、2019年に受講を開始した人と2020年に受講を開始した人は同じ2023年の入会となる。受講期間が短縮されたことにより、入会までにかかる費用が軽減された。

合計25日間218時間の「PGA B級講習会」、「LPGA A級受講審査」、16日間の「PGA A級講習会」、「LPGA入会式」を経て、晴れてプロになれるのは足かけ4年目。PGA B級講習会の受講料は58万円。A級講習会は23万円の費用がかかり、入会時にはA級資格認定料10万円、LPGA入会金60万円、年会費7万2000円といった費用がかかる。(※費用は税別で、あくまでも目安【LPGA公式HPより】)

資格取得まで約3年かかり、入学金や授業料がかかるという意味では、大学などの教育機関にイメージ的には似ている。いずれにしても、ティーチングプロになろうと思ったら、技術や知識はもとより、じっくりと時間とお金をかけて学ぼうという意欲が求められるのだ。

今女子プロゴルファーは「1167名」いる

LPGAによると、2020年の1月1日現在で、これらの審査を経て「プロ」として会員登録されているのがプロフェッショナル(ツアープロ)会員860名、A級ティーチングプロフェッショナル会員208名に加え、海外国籍のインターナショナル(プロフェッショナル)会員が51名、満70歳以上の特別(プロフェッショナル)会員、TP単年登録プレーヤー、ティーチングプロフェッショナルB級・C級会員登録者を含め合計1167名。ティーチングプロにおいては全国各地で指導可能で、要望に応じて適宜、プロとして指導を行い報酬を得ることができる。

TP単年度登録者は、プロテストに合格していなくてもQT(クオリファイング・トーナメント、予選会)を通過していればトーナメント プレーヤーとして単年登録され、ツアーに出られるもの。ちなみに、2020年度のTP単年登録者はステップアップツアー賞金女王のヌック・スカパンら6名。19年に改訂されたTP単年度登録制度の変更により、一部例外を除き同制度は消滅する運びとなっている。

20年度にTP単年度登録した6名のうち、ヌック・スカパンは19年ステップアップツアー獲得賞金ランキング第1位として、小貫、高木は前年度ステップアップツアー優勝者として、フォン・スーミン、リ・ハナ、後藤未有の3名は、プロテスト合格ラインに2打差以内、さらに20年度のQTファイナルステージ進出を果たしたことで登録される。

ただし、この権利を行使できるのは1年限定で、21年度以降は「いかなる理由でも同権利を継続行使することはできない」とLPGAホームページにも明記されている限定的措置だ。

いずれにしても、参加者のうち約3%しか合格できないツアープロ、晴れてA級会員となれるのは受験開始から4年目になるティーチングプロ、どちらの道も簡単ではない。

※一部訂正致しました(2019.12.27 19:10)

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