2020年、オリンピックイヤーがはじまった。中でも注目は、出場枠を争う渋野日向子、鈴木愛の争いに、新勢力であるプラチナ世代の本格参戦が重なりさらなる激戦が予想される女子ツアーだ。開幕まではまだしばらく時間があるが、女子ツアーを知り抜くプロコーチ・井上透に、その見通しを占ってもらった。

オリンピック代表争い、シード権争いは開幕から気が抜けない!

「ポイントは序盤戦です」(井上透、以下同)

2020年の女子ツアーについて聞くと、井上は開幕からオリンピックごろまでの試合が例年以上に重要だと語ってくれた。理由は複数あるが、そのうちのひとつはもちろんオリンピックの出場権争いだ。

その主役は、現在オリンピックランク11位の渋野日向子と13位の鈴木愛。ランク15位以内に入れば、同一国からでも4名が出場できるため、同6位の畑岡奈紗も含めて彼女たちは現時点では代表圏内。しかし、世界中の選手が狙う“15位以内”の狭い門は、代表が決まる6月29日まで、まったく気の抜けない戦いが続くに違いない。

だからこそ、「鈴木愛、渋野日向子の二人は、開幕にピークを持ってくると思います。勝てば勝っただけオリンピックに近づきますからね」と井上は言う。そして、序盤戦がポイントとなるのはもうひとつ理由がある。例年よりも激しさを増すシード権争いの影響だ。

画像: 全英女王に輝き、日本では賞金女王争いをした渋野日向子。2020年、「第二の渋野」は現れるか!?(写真は2019年のリコーカップ 撮影/岡沢裕行)

全英女王に輝き、日本では賞金女王争いをした渋野日向子。2020年、「第二の渋野」は現れるか!?(写真は2019年のリコーカップ 撮影/岡沢裕行)

「今年から、賞金に加えてメルセデスランキング(各大会での順位や出場ラウンド数をポイントに換算し、年間を通じての総合的な活躍度を評価するランキング)50位以内にもシードが与えられることになりました。より平ら(公平)になったと言えますが、シードを獲得するまではベテランも含めて休みにくくなります。2500万円という(賞金シード獲得の)目安となるラインを突破するまでは、みんなシャカリキになって試合に出るはずです」

シードの椅子は賞金上位50名と、メルセデスランキング上位50名にしか用意されていない。多くの場合ふたつは重複するため、シードを確保できるのは多くても55名程度になるだろう。プラチナ世代や、さらにその下の2001年度生まれ世代がツアーに本格参戦してくることで、その少ない椅子を争う戦いは、さらなる激化を見せるのは想像に難くない。

「50人という椅子取りゲームの中では、必ず誰かがシードから弾かれます。昨年は30歳前後の選手たちの事実上の引退が相次ぎ、話題になりましたが、弾かれるのは30歳前後とは限りません。昨年シードを獲得した黄金世代の選手の中にも、シードを取れない選手は現れるはず。黄金世代が上の世代の椅子を取ったように、プラチナ世代、その下の世代に黄金世代が椅子を取られる、そんなことも起こるはずです」

プラチナ世代、2001年度生まれ世代もツアーに参戦

すでに初優勝を挙げている古江彩佳に加え、世代のトップランナーである安田祐香、西村優菜、吉田優利らのプラチナ世代は、みなプロテストを順調にクリアし、年末の予選会も上位でフィニッシュ。開幕から女子ツアーの激戦に身を投じることが予想されている。

さらには、昨年の日本女子アマを制した西郷真央、2018年のアジア大会を制した笹生優花らの現高校3年生世代の強豪も、開幕から姿を見せることが濃厚だ。

画像: プラチナ世代の吉田優利(左)、西村優菜(中)、安田祐香(右)も開幕戦から挑むこととなる(写真はQTファイナルステージ 撮影/大澤進二)

プラチナ世代の吉田優利(左)、西村優菜(中)、安田祐香(右)も開幕戦から挑むこととなる(写真はQTファイナルステージ 撮影/大澤進二)

「平均ストロークが年間を通じて72を切るレベルでないと、50位を超えてしまう。それくらいハイレベルな戦いが予想されます。試合に出ないと賞金もポイントも稼げない中で、実力のみならずコンディショニングも非常に重要になってきます。怪我のリスクもありますからね。シードではなく賞金女王争いという意味では、渋野、鈴木、そしてシン・ジエという三強に割って入るには、メジャーを含む年間3勝から5勝が必要になります。それでも、ニューヒロインが現れる可能性は僕はあると思っています。ただ、それには序盤戦での勝利が必須。それも含めて、ポイントは序盤戦でしょうね」

昨年の開幕戦に、渋野日向子は出ていない。予選会のランクが40位だったため、出場権が降りてこなかったのだ。そこから、終わってみればツアーの主役にまで渋野は上り詰め、年末の紅白歌合戦では審査員まで務めた。第二の渋野が2020年に現れる可能性は、ないとは言えない。

第二の渋野は現れるか。オリンピックには誰が出るのか。賞金女王争いはどうなるか。プラチナ世代はどれだけ活躍するか……楽しみが多すぎる女子ツアーの開幕は、約2カ月後の3月5日。激アツの序盤戦に向け、選手たちは自主トレで爪を研いでいる。

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