渋野日向子の全英制覇、最後の最後までもつれた賞金女王争い、そして黄金世代の大活躍と大いに盛り上がった2019年の女子ツアー。そのスタッツを見てみると、成績と強い相関関係を持つスタッツがあることに気がつく。それは一体!? プロゴルファー・中村修が分析。

1ラウンドあたりの平均バーディ数トップ10はほぼ全員が賞金ランクトップ10入り

平均飛距離、フェアウェイキープ率、パーオン率、パット数、リカバリー率、渋野日向子選手の代名詞的存在であるバウンスバック率など、ツアープロの実力を示す指標には多くの種類があります。

どれも重要な指標ですが、その中で賞金ともっとも強い相関のあるスタッツはどれなのかがふと気になり、賞金ランクの順位と各種指標の順位を見比べてみました。すると、ある指標が賞金ランクと非常に強く結びついていることがわかったんです。それが、1ラウンドあたりの平均バーディ数です。

画像: (画像A)2019年シーズンでは日本ツアーで4勝し、全英女王にも輝いた渋野日向子。賞金女王には惜しくも1歩届かなかったが、平均バーディ数は4と堂々の1位(写真は2019年のリコーカップ 撮影/岡沢裕行)

(画像A)2019年シーズンでは日本ツアーで4勝し、全英女王にも輝いた渋野日向子。賞金女王には惜しくも1歩届かなかったが、平均バーディ数は4と堂々の1位(写真は2019年のリコーカップ 撮影/岡沢裕行)

以下、賞金ランク順に、平均バーディ数の順位をあげてみます。

賞金1位:鈴木愛(3位)
賞金2位:渋野日向子(1位)
賞金3位:シン・ジエ(2位)
賞金4位:ペ・ソンウ(8位)
賞金5位:イ・ミニョン(7位)
賞金6位:河本結(5位)
賞金7位:穴井詩(9位)
賞金8位:小祝さくら(15位)
賞金9位:上田桃子(4位)
賞金10位:勝みなみ(6位)
(画像A参照)

このように、賞金ランクトップ10の選手で、バーディ数が10位以内に入っていなかったのは小祝さくら選手ただ一人。それも、ランク15位と決して悪い順位ではありません。その小祝選手の平均バーディ数は3.3305。1位の渋野日向子選手の数字は驚異の「4」というもの。

このことから、現在のツアーでは1ラウンドあたり3.3〜4個のバーディを奪わなければ、トップレベルでは戦えないということがわかります(ちなみに、バーディ数はパット数に相関がありますから、平均パット数も順位と相関が見られます)。

実際、昨年のツアー会場では中堅以上の選手たちから「1打差で予選通過できない試合が増えた」という声をよく聞きましたし、2018年よりも予選のカットラインが上がっているのは選手の誰もが実感していました。

主要なスタッツの中ではフェアウェイキープ率と賞金ランクの相関が非常に弱いのですが、そのことが逆説的に示すように、女子ツアーでもティショットを飛ばしてセカンドではピンを狙っていかなければ予選通過すら危ういという状況が生まれています。まるでPGAツアーです。

今季からは、賞金ランクよりもより公平に選手の力量を見極められる「メルセデスポイント」ランキングで50位以内に入った場合でも、シード権を獲得できるようになりました。そうなると、とりあえず予選を通過しておけば一安心というわけにはいかず、予選通過した後も少しでも上位でフィニッシュすることが重要になってきます。ますます積極的にバーディを獲らなければならない展開になることは必至です。

積極的にピンを攻めるといわゆるピンに近いニアサイドに外すことも増え、難しいアプローチが残る可能性も出てきます。しかし、それを恐れていてはバーディは獲れません。

渋野日向子選手はボギーを叩く怖さと戦いながら、最後までピンを攻め続けた結果、ルーキーイヤーでの大躍進につながりましたし、今度はプラチナ世代などの続く世代が次の主役の座を狙ってツアーに挑んできます。彼女たちも積極的なゴルフを見せてくれるに違いありません。

2020年も、より多くのバーディを奪った選手が最終的には賞金女王に極めて近い位置にいる、そのことは揺るがないように思います。

画像: 2018年と2019年の賞金ランクと1ラウンドあたりの平均バーディ数を対比させた図。バーディ数の多い選手が賞金ランクも上に来ているのがわかる

2018年と2019年の賞金ランクと1ラウンドあたりの平均バーディ数を対比させた図。バーディ数の多い選手が賞金ランクも上に来ているのがわかる

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