長嶋茂雄、王貞治ら日本プロ野球セ・パ両リーグでチームドクターとして活躍した経験のある吉松俊一氏は、トップレベルのスポーツ選手は文武両道で頭もいい傾向にあるという。吉松俊一氏とその息子・吉松俊紀氏の共著「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」から、運動と脳の成長の関係についてご紹介。

オリンピック選手は頭がいい

2020年は東京オリンピックの年です。それに先立つ19年には、日本で初めてラグビーのワールドカップが開催されました。日本代表の大健闘でおおいに盛り上がった大会でしたが、ひときわ注目を集めた選手のひとりが、福岡堅樹選手ではなかったでしょうか。

韋駄天ウィング(WTB)の異名をとるフィールドを駆け抜ける俊足もさることながら、注目を集めたのが引退後の去就です。オリンピック競技には7人制ラグビー(セブンズ)があり、20年の東京大会への出場を目指すとともに、大会後、現役を引退。その後は、大学の医学部に入り直し、医師の道を目指すというのです。一流スポーツ選手として国際舞台で戦った貴重な経験は、必ずやスポーツ医学の道で花開くに違いありません。

いずれにせよ、いわゆる文武両道の選手として、その生き方までが注目を集めたといっていいでしょう。

同じような例は柔道にもあります。18年にグランドスラムと世界選手権で優勝、世界ランキング3位で東京オリンピックの出場権を争っている、78kg級の朝比奈沙羅選手もまた、東京大会後には、両親の跡を継いで医師になるため、医学部に進むことを明らかにしています。

現在、柔道の名門、東海大学に在学していますが、すでに柔道部を退部しており、その理由は柔道と医学部に進むための勉強との両立を図るのが理由でした(編注:2019年3月、東海大学卒業)。にもかかわらず、東京大会前も世界ランキングの上位に位置し、日本のお家芸である柔道の厳しい競争のなかで、オリンピックの有力候補に数えられるのは見事というしかないでしょう。

こうした選手が同時代に、この日本で出現したことは、単なる偶然でしょうか。私はそうは思いません。なぜなら、スポーツのどの競技でも一流選手は例外なく頭がいいものですし、それはみなさんも経験のなかで「運動神経のいい子は頭がいい」、あるいは「勉強のできる子はスポーツもできる」といったことに、薄々気づいているはずだからです。

なぜなら小さい頃からスポーツを経験し、運動によって脳を刺激した結果が文武両道を成し遂げ、さらに社会人になってからも続く、勉強とスポーツの両立につながっているのでしょう。

画像: 幼少期から運動によって脳を刺激することで、頭も良くなるという(撮影/田中宏幸)

幼少期から運動によって脳を刺激することで、頭も良くなるという(撮影/田中宏幸)

もっともこうした例は、世界ではそれほど珍しいものではありません。スポーツだけでなく、他の分野でも成功した一流選手は枚挙に暇がありません。

たとえば80年のレークプラシッド大会で、出場した5種目すべてで金メダルを獲得、「パーフェクト・ゴールドメダリスト」と呼ばれたのがアメリカのエリック・ハイデン。彼は引退後、ウィスコンシン大学の医学部に通い、現在は腕のいい整形外科医として活躍しています。

また古くはサッカーで、日本でも選手や監督として活躍した元ブラジル代表のジーコ、ファルカン、トニーニョ・セレーゾとともに、「黄金のカルテット」のひとりとして活躍したソクラテスも、医師免許を持った文武両道で知られていました。ニックネームはポルトガル語で医師を意味する「ドトール」でした。

72年のミュンヘン大会で7つの金メダルを獲得、しかも7競技すべてで当時の世界新記録を更新したマーク・スピッツは、当時は大学の歯学部に通う学生。その後、歯科医にはなりませんでしたが、ビジネスマンとして成功を収めています。

平昌冬季オリンピックで、スピードスケートで日本人初の金メダリストに輝いた小平奈緒選手。金メダルを獲得した直後のインタビューで、

「金メダルをとったことは嬉しいけど、これからの人生の方がもっと大事」

と、答える姿が印象的でした。彼女は国立の信州大学の教育学部の出身で、その知的な発言からも文武両道ぶりがわかるでしょう。

もっとも、これもまた海外のスポーツ選手には、けして珍しいことではありません。アメリカではNCAA(全米大学体育協会)の規定で、どんなに優秀なスポーツ選手でも、学業でも一定の成績が求められます。NBAで日本人初のドラフト1巡指名された八村塁選手はゴンザガ大を卒業、陸上のサニブラウン選手がフロリダ大に学ぶなど、今後は日本人のアスリートでも文武両道の選手がもっと増えていくに違いありません。

アスリートのセカンドキャリア、つまり引退後の人生が注目されていますが、テレビ番組のコメンテーターやバラエティ番組での頭の回転の速さ、「脳力」の高さを感じるのは私だけでしょうか。たとえば陸上の400mハードルの記録保持者の為末大氏や、サッカー元日本代表の鈴木啓太氏などは、専門の競技についてはもとより、その博識ぶりに私などは驚かされています。特に鈴木氏は、「うんちが世界を変える」と腸内環境に注目、医学界からも注目を集める新ビジネスにチャレンジしています。

このほかにもワールドカップドイツ大会で優勝、12年のロンドン大会で銀メダルを獲得したサッカーの澤穂希さん、3大会連続の金メダリストで、世界大会16連覇、個人戦206連勝の吉田沙保里さんなど、メダリストには豊かな才能を持った人も数多くいることに気づかされます。

「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」(ゴルフダイジェスト社)より ※一部改変

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