ツアープロコーチ・内藤雄士が、ゴルフダイジェスト社でゴルフスウィングに関するセミナーを実施。スウィングの歴史を俯瞰し、わかりやすくひもといた内容の一部のレポート、第二弾!

前回は、ゴルフスウィング理論とは最新のゴルフクラブの取扱説明書であり、その時代によって変化するものであること。また、その違いはグリップによく表れ、現代ではダスティン・ジョンソンのようにクラブをストロングに握り、フェースをシャットに保ったまま打つタイプのほうが多いと解説しました。続いては、スウィングの軌道について考えていきたいと思います。

いま、ゴルフ界ではシャローなダウンスウィングをする選手が注目を集めています。マシュー・ウルフなどが、その代表選手ですね。

そもそも、クラブの軌道と、フェースの使い方には3つのパターンがあります。まずは、スティープダウン/オープンフェース。構えたときのシャフトプレーンよりもやや上からクラブが入ってくるタイプで、代表選手はフィル・ミケルソン。

画像: スティープな軌道でトップではフェースがオープンなミケルソン

スティープな軌道でトップではフェースがオープンなミケルソン

バックスウィングではフェースを開き、ダウンではフェースを閉じながらインパクトを迎えるのが特徴です。

その逆が、ウルフに代表されるシャローダウン/シャットフェースで、フェースをシャットな(閉じた)状態で使うのが特徴です。ダスティン・ジョンソンやダニエル・バーガーなどもこのタイプです。

画像: シャローなダウンスウィングで、フェース面はシャットなマシュー・ウルフ(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ for チルドレン・オープン 撮影/姉崎正)

シャローなダウンスウィングで、フェース面はシャットなマシュー・ウルフ(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ for チルドレン・オープン 撮影/姉崎正)

そして両者の中間が、スクェアダウン/スクェアフェースの選手。フェースをシャットに使わず、ほぼオンプレーンにクラブが下りてくる松山英樹選手がこのタイプです(松山選手の場合、正確にはややスティープ寄りのオンプレーンですね)。松山選手のライバル、ジャスティン・トーマスなどもこのタイプです。

画像: フェースをシャットに使わずにオンプレーンスウィングの松山英樹(写真は2019年のファーマーズインシュランスオープン  撮影/姉崎正)

フェースをシャットに使わずにオンプレーンスウィングの松山英樹(写真は2019年のファーマーズインシュランスオープン  撮影/姉崎正)

飛ばしに有利なんだったらシャローダウンのほうがいいじゃないかと思われるかもしれませんが、シャローダウンにはバンカーショットなど、ショートゲームが苦手というデメリットもあります。一方、スティープダウンにはミケルソンがそうであるように、ショートゲームの名手が多いという特徴もあるんです。

Xファクターという言葉をご存知でしょうか。1989年に、ジム・マクリーンが全米のティーチャーズ・オブ・ザ・イヤーを獲得したときに発表した論文にある言葉で、正確な引用ではありませんが「ジョン・デーリーは肩が120度周り、腰が60度回っている。この60度の“X”の角度が、飛距離とイコールなんだ」という趣旨のことが説かれてます。

ウルフのスウィングを見ると、バックスウィングで股関節を使って体を右に向け、切り返しで一気に大きな“X”の角度を作っています。彼のスウィングを正面から見ると、切り返しの瞬間に右の肩甲骨が大きく見えますが、それだけの捻転差を作ることが、彼が飛ばせる大きな理由。

画像: 飛距離特化型のマシュー・ウルフ(左)とキャメロン・チャンプ(右)はXファクターが大きく、正面から右肩がみえている(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ for チルドレン・オープン 撮影/姉崎正)

飛距離特化型のマシュー・ウルフ(左)とキャメロン・チャンプ(右)はXファクターが大きく、正面から右肩がみえている(写真は2019年のシュライナーズ・ホスピタルズ for チルドレン・オープン 撮影/姉崎正)

ウルフの場合、インサイドからシャットにクラブを下ろしてドローを打つ彼のスウィングは超・飛距離特化型で、右からフォローが吹いているホールでは400ヤードくらい飛ばせるポテンシャルがあります。ウルフや、2019年のPGAツアーで平均飛距離1位のキャメロン・チャンプなどは、飛距離特化型の代表選手と言えます。

ゴルフは14本の道具を使う競技。バランス型のオンプレーンが真ん中にあり、その左右にドライバーが飛ばせる飛距離特化型、ウェッジを使ったショートゲームに強い安定型がある。そう考えると、ゴルフスウィング理論は理解しやすくなるのではないでしょうか。

とはいえ、あくまでもゴルフスウィングはあくまでオンライン(オンプレーン)が理想。個人的には、オンラインでフェースもスクェア・トゥ・スクェアに使う松山選手のスウィングこそが、世界のどんなコースでも勝てるスウィングだと思っています。(談)

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