JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)の公式サイトをチェックから、昨季までの“単年登録選手”の情報がないことに気付いたのは、ゴルフトレンドウォッチャー・コヤマカズヒロ。一体どういうことか、調査した。

単年登録選手の名前をクリックすると「お探しのページは見つかりません」

折からの新型コロナウィルスの影響で、国内女子ツアー開幕戦の「ダイキンオーキッドレディス」は中止になることが決まり、それ以降の試合も予断を許さない状況。しかし、今年は五輪イヤーでもあり、自然と期待感は高まるところ。LPGAの公式サイトを閲覧しながら、選手の情報などをチェックしていた。すると、奇妙なことに気づいた。昨年までの単年登録選手の情報が閲覧できないのだ。

たとえば、昨年の年間獲得賞金のランキングを見てみると、レギュラーツアーをフル参戦した丹萌乃(91位)や三浦桃香(110位)、富士通レディースで5位に入った幡野夏生(96位)など、プロテストに合格せずTPD単年登録でツアーに参戦していた選手も名を連ねている。

画像: 昨季まで単年登録選手だった丹萌乃(左)、三浦桃香(中)、幡野夏生(右)

昨季まで単年登録選手だった丹萌乃(左)、三浦桃香(中)、幡野夏生(右)

しかし、彼女たちの名前をクリックすると、「お探しのページは見つかりませんでした」と表示される。通常であれば、それぞれの選手の年度別の成績や記録、プロフィールやニュース記事、生涯成績などのアーカイブにリンクすることが出来、ファンはその選手が過去にどんな成績をあげているのか、すぐにチェックできる。

サイト内を回ってみてわかったのは、選手たちの記録が「会員・選手」というLPGA会員の名簿に紐づいていることだ。そして、その名簿から単年登録の選手を削除してしまったので、該当選手たちの情報が、サイト上で閲覧することが出来なくなっていたのだ。

「これではこの2年間、ツアーに貢献した桃香ちゃんがかわいそう…」という個人的な気持ちはさておき、その当時のルールに則って試合に出た選手が、公式サイトの記録から消えてしまうというのは、いかがなものだろうか。

プロスポーツにとって、記録をアーカイブすることが重要なのはいうまでもない。王貞治の通算本塁打868本やイチローのシーズン最多安打262本は、誰もが知っている数字だろう。それらにファンは熱狂し、伝統となって、また新たな歴史をつくっていくのだ。

ご存知のように、LPGAでは今年から大幅な制度変更があり、単年登録は一部の例外を除いてなくなり、プロテストに合格した正会員のみが、試合に出る優先順位を決めるQT(クオリァイリングトーナメント)に出る資格を持つ。どんなに実力があってもプロテストに受からないことには、トーナメントに出ることが出来ないのだ。

この制度変更が、近年のプロテストの著しいレベル向上もあって、公平さを欠くのではないかと物議を醸している。三浦桃香や幡野夏生のようにレギュラーツアーでベスト10に入る選手や、ステップ・アップツアーで優勝する選手でもテストに合格しないほど、その道は厳しくなっているのだ。2016年にレギュラー優勝、ステップ・アップツアーでも2勝していながら、プロテストに合格していないP・チュティチャイのケースもある。

その中で、TPD単年登録選手の排除にも見えるこの公式サイトの運用は、問題はないのだろうか。LPGAに問い合わせをしてみたところ、次のような回答を得た。

「ご指摘の件は、2002年のウェブサイト立ち上げからこのような仕様(ツアー登録した年のみ表示される)になっています。課題としては認識していますが、現在、改修するというところまでは至っていません。しかし、メディアの皆さまからご要望もあり、また、ファンの皆さまのためにも、今後検討して参りたいと存じます」(原文ママ)

つまり、最近になって仕様が変わったのではなく、以前から単年登録のみでプロテストに受かっていない選手は、登録をしなくなったと同時にサイト内の名簿から消える仕様だった。今年は実力派の選手が多く、制度変更もあってそれが目立っていたようだ。ステップ・アップツアー優勝の権利で、数少ない今年の単年登録者であるヌック・スカパンや高木優奈は現在も閲覧が出来る。

ちなみに、2018年は単年登録の資格で参戦し、ステップ・アップツアーでは2戦2勝、レギュラーでもシード権を獲得した原英莉花の場合、単年登録時代の成績もそのままアーカイブされている。LPGAによれば、原のように、その後でテストに合格した場合は、単年登録時代の戦歴がサイト上に復活するという。

画像: 原英莉花は単年登録選手だった頃の成績もLPGA公式HPに残っている(写真は2019年のTOTOジャパンクラシック 撮影/岡沢裕行)

原英莉花は単年登録選手だった頃の成績もLPGA公式HPに残っている(写真は2019年のTOTOジャパンクラシック 撮影/岡沢裕行)

会員ではない海外招待選手でも同様の問題がおきている。2001年から「ミズノクラシック」を5連覇しているアニカ・ソレンスタム、2016年にツアー優勝したレキシー・トンプソンもLPGA会員でないため、アーカイブ記録を見ることが出来ない。

岡村咲という選手をご存知だろうか。TPD単年登録の資格で2013年〜2015年とレギュラーツアーをフル参戦したが、重度のアレルギーに苦しみ、難病である全身性エリテマトーデスを患うなどして、事実上、ツアーから撤退した選手だ。現在も病気と向き合いながら、都内でレッスン活動を行っている。

彼女のような選手が戦ったことも、ツアーの歴史には重要な1ページではないだろうか。同じような体質に苦しむ人にとって、そのことに勇気づけられることもあるだろう。ひとりひとりの選手にそれぞれの競技人生があり、ドラマがある。公式サイトで閲覧ができないという現在の仕様は、それらの歴史を抹殺することにつながらないだろうか。

LPGAのWEBサイトは2015年にリニューアルした後も視認性を向上させるなど、改善が続いている。その一環として、過去のTPD単年登録選手や海外招待選手の記録のアーカイブ化を強く望みたい。それは、現会員の権利を損ねるものではないはずだ。

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