新型コロナウイルスの感染拡大により東京五輪の延期が発表されるなど、様々なところで影響が出ている。いつ感染してしまうのかわからないという不安を抱えている方も多いのではないだろうか? プロアスリートを指導するメンタルコーチ・池努は、そんな未来への不安もストレスの大きな原因になるという。それを軽減させる方法を教えてもらった。

今回は、「未来への不安を手放すことで今のパフォーマンスはあげられる」という内容でお届けしていきます。

人は未来のことが気になる生き物です。沢山のプロアスリートをサポートさせてもらっていますが、現在はゴルフ、野球、サッカー、バスケットなどのトップリーグも延期が続いている状況で、アスリートにとって一番のモチベーションである公式戦がいつになれば再開するのか読めない状況にあり、多くの選手はストレスを抱えています。

ビジネスマンの方も、新型肺炎による影響により未来が予測できないため、ストレスが多くなる状況だと思います。そのようなこともあり、前々回・前回と「ストレス低減に効くメンタルの情報」をお届けしました。

さて、私たちは今、「未来」に対して不安を募らせています。そして、未来への不安こそが私たちのストレスの大きな原因となっています。私がこれまでサポートしてきた競技ゴルファーにも共通する話で選手の悩みの大半は未来に対する不安から起こっています。

「今日もショットの調子が前の試合のように悪かったらどうしよう……」
「前のホールみたいなスウィングにはなりたくない……」
「このままだったら予選落ちだ。それは避けたい……」
「前の試合みたいにアプローチがおかしくなったらどうしよう……」

画像: ゴルフでも「今」に目を向けることでパフォーマンスが上がる(撮影/岩村一男)

ゴルフでも「今」に目を向けることでパフォーマンスが上がる(撮影/岩村一男)

このように書くと未来への思考がネガティブなことだととらえがちですが選手には「現代人なら未来のことを考えてしまうのは普通のことなので安心してください」とお伝えします。

話はそれますがアフリカなどには旧石器時代と同じ生活を送っている狩猟採集民がいます。狩猟採集民の生活は、男は狩りに出かけ、女はこどもの世話をしたり木の実を集めたりする。そして、夜には仲間と獲物や木の実を分け合って食べるということを延々と続ける生活です。当然、私たちのように30年先、10年先、5年先の未来に向け、保険を考えたり、貯蓄するような思考はありません。せいぜい、今の食糧が尽きる1週間後などが狩猟採集民の時間間隔なのです。

イヌイットなどの暮らしを長期的に調査したオックスフォード大学の人類学者であるヒュー・プロディ氏は「狩猟採集民は未来には目を向けず今に注意を向ける。長期の未来に目を向け行動を決めることはない。」と言っています。そして、未来に目を向けることがない狩猟採集民はそもそも未来という時間間隔がなく「未来への不安」がないことにより鬱病に悩む人はほぼいないのだそうです。

文明、科学の進化により、現代では人生100年時代などとも言われ、何十年も先のことを考えたうえで「今」の意思決定をすることが常識になっています。これは重要なことかもしれませんが、反面それが未来への不安につながっている事実もあるのです。このような状況だからこそ、「マインドフルネス(編注:今という瞬間に意識のすべてを向けること、またそのためのトレーニング。詳しくは関連記事参照のこと)」など未来にとらわれすぎずに今に目を向ける時間をつくることでメンタルをマネジメントする重要性も高まってきています。

マインドフルネスは本当に未来を手放す思考をつくるためにおすすめで、サポートゴルファーにも必ず朝か夜に5~10分の時間をつくってもらっていますし、当然私も2年以上は毎日実践しています。継続すると過去に比べて「未来」や「他人」に良い意味で影響されることが少なくなってくることが実感できますので、この機会にスタートしてみてはいかがでしょうか。

今回の話は未来に“まったくとらわれず”に今に目を向けられるメンタルになりましょうといった提案ではありません。過去や未来に目が行くのが人。ですが、少しでもそれらを手放せればストレスは減り、今日を健やかに過ごせることにつながると思いますので、参考になれば嬉しいですね。

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