クラブを選ぶ時に「ストレートが構えやすい!」「グースの方が安心!」など構えた見た目にこだわる人は多い。見た目に大きな影響を与えるのがフェースプログレッションの数値だが、実はこれは性能にも大きく関わってくる。フェースプログレッションについて知っておくべきことを、ギアライター・高梨祥明が解説。

アイアンショットのディロフトにも関係。ロフト+F.P.でインパクトを考えたい。

ゴルフクラブを見るときに意外に軽視されていると感じるのが、フェースプログレッション(以下F.P.)の具合である。F.P.とはシャフトの中心軸からリーディングエッジまでの距離(単位:ミリ)のこと。数値が小さければオフセット(いわゆるグース)、大きければオンセット(いわゆる出っ歯)となる。

画像: 左がシャフトの中心軸よりリーディングエッジが引っ込んでいる(F.P.が小さい、あるいはマイナスの)グースネック。右が中心軸よりリーディングエッジが出っ張っている(F.P.の値が大きい)出っ歯ウェッジ

左がシャフトの中心軸よりリーディングエッジが引っ込んでいる(F.P.が小さい、あるいはマイナスの)グースネック。右が中心軸よりリーディングエッジが出っ張っている(F.P.の値が大きい)出っ歯ウェッジ

F.P.の大小によってクラブを構えた時の見え方が大きく変わるため、「ストレートが構えやすい!」「グースの方が安心!」などと感覚的なところが重要視されるが、気にしたいのはF.P.の違いでインパクト状況がどう変わるのか? である。

以前、取材でミズノテクニクス(通称:養老工場)のクラフト部門を訪れたときにアイアンマイスターの野村武志氏がこう言っていたのを思い出す。

「プロが最も気にするアイアンのポイントは“フェースプロ”(F.P.のこと)ですね。ここが変わると構えた時の見え方が変わるだけでなく、打ち出し角度や打点、打ち出し方向まで変わってきてしまうんです。逆にいえば“フェースプロ”を調整してあげれば、いくらでも出球はコントロールできる、ということです」(野村氏)

画像: ミズノでは熟練のクラフトマンの技でF.P.の数値を調整。これにより同じヘッドでも性格の異なるパーソナルモデルにすることができる(撮影/中野義昌)

ミズノでは熟練のクラフトマンの技でF.P.の数値を調整。これにより同じヘッドでも性格の異なるパーソナルモデルにすることができる(撮影/中野義昌)

このためミズノのクラフト部門ではフェース形状とともにF.P.の傾向をプレーヤーごとに把握。ニューアイアンを渡す時も、必ずF,P.とライ角を調整したものでテストしてもらうのだという。

シャフトの中心軸とリーディングエッジが重なった状態が、いわゆるストレート(F.P.値±0)。それよりもリーディングエッジが前に出ていたらはF.P.値はプラスとなり、インパクトではそのぶん早くヒットすることになる。リーディングエッジが後方に下がって(F.P.値マイナス)いれば、逆にインパクトは遅くなる。つまり、F.P.値次第でヒットするタイミングが変わり、それによってフェースの向き、インパクトロフト、そして打点が変わってしまう、というわけだ。

最新スウィングではインパクトでのディロフト(ロフトが立って当たる度合い)が注目されているが、F.P.はこの最適インパクトの実現のために、欠かせない重要なスペックである。

慣性モーメントが大きいドライバーこそ、F.P.の違いが打球結果を左右する。

F.P.はグースやストレートなどとネック形状に置き換えて語られるため、アイアンやウェッジの専門用語だと思われている節もあるが、実際はどんなカテゴリーのクラブにおいてもインパクトのフェースコントロールに大きく影響するものである。とくに最新のフルサイズ(460cc)ドライバーでは、メーカーごとにF.P.に対する考え方が異なり、これがつかまり度合いの違いになって表れているといわれている。

画像: ドライバーにもF.P.値はある。写真の赤線はシャフトの中心軸とリーディングエッジを表している。この長さがF.P.だ

ドライバーにもF.P.値はある。写真の赤線はシャフトの中心軸とリーディングエッジを表している。この長さがF.P.だ

大型で慣性モーメントの大きなヘッドは重心距離が長くなるため、右にプッシュアウトしやすい傾向になるのは周知の通り。そこでF.P.を極力小さくし、フェースがターンしてくる時間を作ることで、スクエアインパクトに導こうとする考え方が登場する。

もちろん、フェースターンを速める手段として考えられる手法は他にもある。
・フェース角をフックにする
・重心アングルを大きくするなど、だ。
フックフェースは見た目の違和感となり、大きな重心アングルは形状と実際の動きのズレを生み、これも違和感となりやすい。このためプロが使用する大型ドライバーには、これらの“つかまりサポート術”は禁じ手だ。

画像: プロの使用率が高いPINGやテーラーメイドのドライバーはF.P.値が小さめ(写真左はPING G410 LST、右はテーラーメイド SIM)

プロの使用率が高いPINGやテーラーメイドのドライバーはF.P.値が小さめ(写真左はPING G410 LST、右はテーラーメイド SIM)

こうしたことから、大型ドライバーの場合はアマチュア向けモデルほどF.P.が大きく(そのぶんフェース角大/重心アングル大)、プロの使用が多いモデルほどF.P.が小さく、重心設計やフェース角もニュートラルになっていることが多いのである。

アイアンはF.P.小/アマ向け、F.P.大/プロ向けというイメージだが、大型ドライバーになると、F.P.大/アマ向け、F.P.小/プロ向けと逆転するところがおもしろいところ。ちなみに大型ドライバーではF.P.小といってもその数値はマイナスにはならない。プラス16ミリ程度でも十分に小さいといえる数値である。

画像: 浅井企画ゴルフ部発足! ずんのやす、ドライバーの飛距離が早速20Y伸びた!?【講師:小澤美奈瀬】 youtu.be

浅井企画ゴルフ部発足! ずんのやす、ドライバーの飛距離が早速20Y伸びた!?【講師:小澤美奈瀬】

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