昨シーズンのマスターズでタイガー・ウッズが復活優勝を遂げた。そして、それを陰で支えていたのが3年間タイガーのコーチを務めたクリス・コモ。彼はどんな人物なのか、ゴルフスウィングコンサルタント・吉田洋一郎が語る。

タイガー・ウッズを復活に導いたクリス・コモ

「今、アメリカで最もホットなゴルフコーチはだれか?」

この問いに対して、GGスイングのジョージ・ガンカスやDJやケプカを指導するクロード・ハーモンⅢの名前を挙げる人もいるかもしれません。

欧米のゴルフティーチングに関して、現地でディープなリサーチをしていると自負している私はこの問いに対して、「タイガーの復活に貢献したクリス・コモしかいないでしょう」と答えます。

クリス・コモのことは日本ではあま知られていないかもしれませんが、欧米のゴルファーで彼のことを知らない人はいません。コモはゴルフチャンネルでデビッド・レッドベターなどの有名コーチや、ザンダー・シャウフェレなどのPGAツアー選手をゲストに迎える人気テレビ番組「スイング・エクスペディション」でホストを務めるなど、メディアに引っ張りだこ。

画像: タイガー(右)のコーチとして3年間務めたクリス・コモ

タイガー(右)のコーチとして3年間務めたクリス・コモ

この番組には昨年から指導を行っている、ブライソン・デシャンボーもゲストで出演していました。

そのデシャンボーは2018年夏にコモとタッグを組んでから4勝を挙げています。今シーズンはドライビングディスタンス1位(平均321ヤード)を獲得していることもあり、コモのスウィング構築の手腕が注目されています。

そしてなんといってもクリス・コモを有名にしたのは、タイガー・ウッズとの関係でしょう。昨年、マスターズを制し、日本初開催となったPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」でも優勝し、大復活を飾ったタイガー・ウッズのコーチを3年間勤めました。ご存じの通り、ウッズには長い低迷期がありました。プライベートのトラブルに加えて腰の痛みなど故障を抱え、「もう、ウッズの時代は終わった」と多くの人が考えていました。そんなどん底にあったウッズを復活へと導いたのは、当時はまだ無名のコモでした。

コモはバイオメカニクスをゴルフティーチングに取り入れ、体への負担が少なく飛距離の出る効率的なスウィングをタイガーに指導しました。その後、コモはウッズの元を離れましたが、ウッズは見事復活。コモの理論の正しさを証明しました。

体の構造と運動の関係を解き明かすバイオメカニクス

日本では謎に包まれた存在のクリス・コモ。私がクリスと初めて会ったのは2016年でした。共通の知人の紹介で会ったのですが、当時のクリスはタイガーと契約していることもあり、めちゃめちゃ警戒されました(笑)。怪しい東洋人!? の私のインタビューに応じるのに1年の歳月がかかりましたし、話していてもいつもピリピリしていました。

その後、渡米のたびに交流を繰り返し、徐々に心を開いてくれるようになりました。クリスとはほぼ同年代ということもあり、今では「家に泊まりに来いよ」と誘ってくれるほど仲良くなりました。

画像: 写真はクリス・コモ(左)と吉田洋一郎(右)が出会ったころのもの

写真はクリス・コモ(左)と吉田洋一郎(右)が出会ったころのもの

そんなコモですが、20代の頃から、ゴルフコーチの道を歩み、指導歴は20年ほどになります。その間、多くの有名コーチの指導を受け、さまざまな考え方や指導法に触れてきました。そして、テキサス女子大学のヤン・フー・クォン教授と出会い、バイオメカニクス(生態力学)という学問を知ります。バイオメカニクスとは、人間や動物などの骨格や体の構造と、動作や運動などの関係を研究するものです。

ゴルフでは、主に

【1】いかに効率的にボールに力を伝え遠くに飛ばすか

【2】どうすれば最大の力を出すことができるか

【3】体への負担を抑え、けがをしにくいスイングはどのようなものか

という点の解明にバイオメカニクスの考え方が活用されています。

地面反力を効率的に伝えるスウィング

バイオメカニクスを使ったスウィングで欠かせないのが「地面反力」。反力とは、簡単に言えば何かを押したときに押し返される力。コモは地面反力をボールへ効率的に伝えるには、どのように体を動かしたらよいのかということを大学院で研究してきました。100名を超えるPGAツアー選手に声をかけ、クォン教授とともにスウィングの研究を行ったのです。

バイオメカニクスをゴルフの指導に取り入れると、一人一人に合った指導ができるようになります。人はそれぞれ体格が違いますし筋力も違います。誰もが同じスウィングをできるとは限らないのです。その点、バイオメカニクスを理解していれば、一人一人の体格に合わせてどのように体を動かせば、効率的に力を伝えられるのかが分かります。

つまり、プロ、アマ問わずゴルファーの体力、技能、レベル、目標に合わせたオーダーメードの指導が可能になるのです。コモがタイガーやデシャンボーのように、全く個性の違う選手でも結果を出せるのは、バイオメカニクスをバックボーンに持ってティーチングをしているからなのです。

画像: クリス・コモとタッグを組んでいるデシャンボ―(右)は今シーズンのドライビングディスタンスが平均321ヤードと1位

クリス・コモとタッグを組んでいるデシャンボ―(右)は今シーズンのドライビングディスタンスが平均321ヤードと1位

有名になっても慢心せずに進化を続けるクリス・コモ。アメリカのゴルフティーチング界は彼を中心に回っているので目が離せません。

週刊ゴルフダイジェストで連載中の「クリス・コモのバイオメカニクス研究所へようこそ」では、今後、指導するデシャンボーや、タイガーについても聞き出すことができればと思っています。どんな話が飛び出すのか楽しみですね。お見逃しなく!

画像: タイガー・ウッズが日本で見せた最新スウィング! ドライバーからSWまでたっぷりどうぞ youtu.be

タイガー・ウッズが日本で見せた最新スウィング! ドライバーからSWまでたっぷりどうぞ

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