ゴルフの道具が飛ばしに特化しつつある現代。それら飛ばし系クラブを、ティーチングプロ・永井延宏は「金属バット的」だと分析する。それに対して飛距離をコントロールするための道具である(はずの)アイアンは……? アイアンクラブの進化を考えた。

マッスルバックを使う人も、ドライバーはチタンを使うのはなぜか

一向に終息に向けての気配が見えない、新型コロナウイルス問題ですが、私はこの時間を利用して、長年の怠慢により物置と化してしまった仕事部屋の片付けにとりかかっています。仕事部屋といっても4畳半程度で、デスクと衣装ケースにゴルフ用品をしまう金属ラックでほぼ満杯です。

足の踏み場もないような状況から、いわゆる断捨離をおこなったのですが、いやいや、懐かしのクラブを手にしては眺め、時にはスマホで写真を撮ってSNSにアップしたりと、クラブの整理だけで3日間を要してしまいました。

それこそドライバーはパーシモンの名器から始まるので、現代との違いはあきらかですが、あらためて面白いなと思ったのはアイアンクラブです。

私も自分自身の全盛期(?)にプレーした、思い出のアイアンセットがあります。それは8本セットで、2000年代前半から中ごろまでを主に過ごしたオーストラリアの地で、毎日のようにラウンドしながら育てた混合セットです。

3番と4番がミズノ「MP33」。5番から8番がブリヂストン「ツアーステージ MR-23 U.S.ブレード」。9番とPWの替わりにフォーティーンの42度と48度のウェッジへとシフトしていきます。3モデルともいわゆるマッスルバックでプレーンなヘッドです。

画像: 永井が愛用したアイアンセット。3番、4番はMP33、5〜8番はMR-23 U.Sブレードと名器中の名器アイアンが組み合わされている

永井が愛用したアイアンセット。3番、4番はMP33、5〜8番はMR-23 U.Sブレードと名器中の名器アイアンが組み合わされている

何故、このような組み合わせになったのかというと、答えは明確。アイアンに求められる、距離を刻むというタスクへの精度とその弾道です。弾道とは、高さやスピンコントロールに左右のカーブの打ち分けとなるでしょうか。

当時の体力と今では違いますが、記憶にあるのは3~5番の長い番手。フェース面の打球痕を見ても、そのクラブの特性にあった位置で打てています。こんな薄っぺらく小さなヘッドで高いボールを放ち、200ヤード前後のターゲットを攻めていたとは、今となっては信じられません。

木製バット的なクラブを使うメリットとは?

そもそも、1930年頃のスチールシャフト登場以降、ゴルフクラブとは、「自分が意図する飛距離を刻みながら弾道を打ち分ける技術がゴルファーにある」という前提のもとで造られていたんだと思います。

そして、製造技術であるとか素材の進化に伴い、力学的にゴルファーにとってメリットがある方向への進化を遂げてきたのだと感じます。いわゆるやさしいクラブの台頭です。

そういう意味では、「ゴルファーには飛距離を刻む技術がある」という前提が現代でも一番色濃く残っているのがアイアンクラブではないか? と、今回自分の自宅にあったいくつかのアイアンクラブを眺めながら、あらためて感じました。

ご存知のように、打ちやすくて飛距離性能に長けたアイアンクラブはたくさんある時代ですが、ツアープロだけでなく、好んでマッスルバックのアイアンを使われているアマチュアゴルファーの方もいらっしゃいます。だからといって、マッスルバックを使っているツアープロやアマチュアゴルファーが、パーシモンやステンレスメタルを使っているか? というと、そうではありません。

画像: ジャンボ尾崎のパーソナルモデルである「J's」などは木製バット的な、距離を打ち分けるアイアンだったと永井

ジャンボ尾崎のパーソナルモデルである「J's」などは木製バット的な、距離を打ち分けるアイアンだったと永井

野球にたとえるならば、460CCの大型チタンヘッドのドライバーは金属バット。金属バットで、場外ホームランを放つ技術がスタンダードになりつつあるのが今のゴルフ界ですが、アイアンクラブは木製バット的技術が要求されます。だからこそ、体力と技術のあるツアープロでは、ほぼ100%が木製バットという状況です。

イメージとしては、イチロー選手のバッティングです。メジャーリーグのピッチャーが打たれまいと千差万別なボールを投げ込んでくるのに対して、どこにどう打てばヒットになるかを瞬時に判断し、巧みにバットコントロールして距離・方向・高低などを打ち分ける技術がイチロー選手にはあったと思います。

イチロー選手が手にしていたのは、(ルールがあるから当然ですが)木製バットで、飛ばしに優れた金属バットではありません。それでも、イチロー選手はボールを飛ばすという技術にも長けていたとの記事をみた覚えがあります。

今はいわゆる草野球を楽しまれているイチロー選手。手にしているバットは、木製なのでしょうか? ロリー・マキロイが2番アイアンの代わりにユーティリティクラブを入れたといいますが、マキロイがユーティリティークラブを手にするのと、イチロー選手が金属バットを手にするのは同じのように感じるので、ちょっと興味があります。

画像: 今江敏晃の悩みを杉山美帆が解決!狙ったところにピタッと止まるアイアンショットの打ちかた youtu.be

今江敏晃の悩みを杉山美帆が解決!狙ったところにピタッと止まるアイアンショットの打ちかた

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