最新のドライバーは、チタン、カーボン、タングステン……など様々な素材を組み合わせている場合が多くある。構造は複雑になる一方だが、ギアライター高梨祥明は「どこが重いか」と「どこが薄いか」を見極めると、ドライバーの性能は類推できると語る。最新ドライバーの眺め方を、ちょっとマニアックに紹介!

薄いは「軽い」、薄いは「たわむ」。カーボンは「補強」であり「お化粧」

現在のドライバーヘッドはゼネラルルールで定められた上限の大きさ、460ccになっている場合が多い。上限の大きさだから“フルサイズ”と呼んだりもする。さて、そんなドライバーの眺め方だが、ヘッドのどこが重くて、どこが軽くなっているのかを見極めて見ることをおすすめしたい。ポイントは、どこが薄肉になっているのか、カーボンパーツがどこに使われているのかを見ることである。

薄肉化というのはこの20年続いているゴルフクラブ設計の基盤みたいなもの。主目的は重さの不要な箇所を軽量化して、その重さを必要な箇所に持っていくことにある。だいたいはヘッドのクラウンと呼ばれる天井部を超肉薄にするか、今ならこの部分を軽くて強靭なカーボンパーツで代用することが多い。天井(クラウン)が軽くなれば、相対的に床(ソール)が重たくなり、軽くなった分をさらにソール周辺に配分すればさらにヘッドの重心がググッと低くなるわけである。

カーボン素材は宇宙工学にも用いられるからか、先進的なイメージがあって、それ自体が飛びの要素となるような気がしてしまうが、採用目的は主に「軽量化」と薄肉化した金属部の「補強」にある。カーボン複合ヘッドの狙いは、それを使うことで従来できなかった重心設計をできるようにすることにあるわけだ(例/二律背反と言われる深重心化と低重心化の両立)。

画像: 90年代中盤に登場したフレームデザインのドライバー『コーシン・ベスター』(左)。クラウンレスの『トップフライト・マグナ』(右)も今見ても斬新なデザイン

90年代中盤に登場したフレームデザインのドライバー『コーシン・ベスター』(左)。クラウンレスの『トップフライト・マグナ』(右)も今見ても斬新なデザイン

90年代に日本のメーカー(コーシン社)が骨格だけのヘッドをデザインして話題になったが、重さの必要な箇所に重量を集中し、いらない部分を削ぎ落としているという意味では、現在のドライバーヘッドも同じ取り組みをしているといえる。結局、コーシン社のクラブは見た目が伝統的ではないとしてルール外品とされてしまったが、最新ドライバーは、カーボンパーツで天井を作ることでウッドらしい形状をキープ。その上でフレームデザインによる重心設計の最適化を果たしているわけである。

フレームデザインは設計思想を映し出す鏡。プロギア「eggエクストリーム」、本間ゴルフ「TR20」に注目

ヘッドを大きくしてもヘッド重量は重たくしてはならない。ドライバーヘッドは今も昔も200g前後を目指して作られる。180ccのメタルも、460ccのチタンも重量はほぼ同じか、大きいチタンヘッドの方が逆に軽いくらいである。ヘッドを大きく膨らませることでヘッドの周囲に重さが分散され、慣性モーメントが大きくなる。中心は軽く、外側は重たく、というのはパターやキャビティアイアンと全く同じ、近代ゴルフクラブ 設計全体のセオリーなのだ。

ヘッドのどこに重さが必要なのか? そうした視点で最新ドライバーヘッドの構造を見てみると非常におもしろい。今ならプロギアの「eggエクストリーム」や本間ゴルフ「TR20 460」などがフレーム(骨格)デザインが際立っていて、重さの配分を理解するにはオススメである。

画像: 中心は軽く周辺は重くすることでスィートエリアを広げ慣性モーメントを最大化することが近代設計のセオリー(写真はホンマTR20  460 写真/有原裕晶)

中心は軽く周辺は重くすることでスィートエリアを広げ慣性モーメントを最大化することが近代設計のセオリー(写真はホンマTR20  460 写真/有原裕晶)

ヘッドの薄肉化やカーボンパーツの使用には、軽量化だけではなくて「たわみ」をコントロールする狙いもあるが、今回はそこではなく、ヘッドのどこに重さが必要なのか? という点に興味を持って、最新ヘッドの骨格を見ていただけたらと思う。メーカーのホームページにはヘッドの構造が詳しく図解入りで説明されており、削ぎ落とした重量が高比重金属のウェイトとなってどこに集中配置されているのかもバッチリわかるのだ。

ヘッドのどこを重くすると、ヘッドの動きはどうなるのか。それを知ることでマイクラブのどこに鉛を貼ればよいかもわかるようになってくる。気に入ったドライバーを日々の調子に合わせて長く使うためにも、ある程度、ヘッドの骨格を理解しておくことは重要だ。

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