6月11日から再開する米下部ツアー「コーンフェリーチャレンジ・アット・TPCソーグラス」。元世界ランク1位のビジェイ・シンもエントリーしていたが、出場を撤回したという。果たしてなにがあった?海外取材経験20年の大泉英子が語る。

17年前、最強女王アニカのPGAツアー出場をビジェイは批判していた

いよいよ来週から、「チャールズ・シュワブ・チャレンジ(以下CSC)」を皮切りにPGAツアーが再開するが、その下部ツアーであるコーンフェリーツアー(以下KFツアー)もまた同週に、「コーンフェリーチャレンジ・アット・TPCソーグラス」から再開される。

実はこのKFツアーへのエントリーを巡って、先月物議を醸した事があった。

世界殿堂入り選手であり、元世界ランク1位のビジェイ・シン(57歳)が、KFツアーにエントリー。チャンピオンズツアー(シニアツアー)は7月末の「ザ・アリーチャレンジ」まで試合がないので、本来であれば「CSC」に出場したかったのだろうが、永久シード選手の彼でも招待がないと出場できない。そこで、下部ツアーに出場しようとしたのだが、KFツアーのベテラン選手であるブレイディ・シュネルからSNSで痛烈な批判を受けた。

「ビジェイ、お前がもしKFツアーでお金のためにプレーしようとしているなら、お前はゴミ野郎だ! どれだけお金やポイントが我々にとって大事なものか、わかっているのか?」

ビジェイが出場すれば、KFツアーの1人分の枠が彼に使われることになり、メンバーが1人出場できなくなる。また収入に困っていないビジェイが、少しでも賞金を稼ごうとしのぎを削る選手たちの食い扶持を奪うことにもなるとシュネルは激怒したのだ。

画像: 元世界ランク1位のビジェイ・シン(写真は2019年のマスターズ 撮影/姉崎正)

元世界ランク1位のビジェイ・シン(写真は2019年のマスターズ 撮影/姉崎正)

これに対しフィル・ミケルソンは、「ビジェイとは特別親しいわけではないけど、殿堂入りも果たしているし、KFツアーに出場する資格は得ているわけだから、自分の希望するところでプレーする権利がある」と擁護。シュネルはその後謝罪したが、先頃ビジェイは欠場を決めた。

シュネルの言い分も理解できなくはない。しかしビジェイには出場する資格があるので、このような言われ方をされるのはいくらヒール役のビジェイとはいえ、気の毒だ。だが、ビジェイ本人はSNSを通じてこのように批判されても、何も言い返すことなく黙ってやり過ごし、大人の対応を取った。

もしビジェイが人気者で、若手たちから慕われ、リスペクトされるような選手だったら、このような攻撃を受けることはなかったかもしれない。むしろレジェンドの出場を喜ばれたことだろう。かつては40代でタイガーを打ち負かし、世界ランク1位、賞金王にまで上り詰めたレジェンドが、このような対応をされるのは残念ではあるが、過去の彼の言動や態度などが影響しているなら自業自得とも言えるかもしれない。

その一例に私はビジェイがシュネルと同じような失言をし、大批判を浴びたことがあったのを思い出した。

奇しくも「マスターカード・コロニアル(注:来週開催されるPGAツアー『チャールズ・シュワブ・カップ』の前身大会)」でのこと。当時女子ゴルフ世界ランク1位のアニカ・ソレンスタムが2003年に出場した際、ビジェイは「アニカが出場するのは馬鹿げた行為だ」「彼女と同じ組で予選ラウンドすることになったら棄権する」「彼女が米ツアーに出場することでPGAツアーの選手の貴重な1枠を奪った」と激怒したことがあったのだ。

その発言に、米国メディアはビジェイの批判記事を書き立て、ギャラリーからは「チキン野郎」とヤジを飛ばされた。私も現場にいたが、ニワトリのかぶりものをかぶった男性がビジェイの組についていたのを覚えている。実際は、取材した記者がビジェイの発言を誤解して書き立てた部分もあったようだが、その当時の印象が非常に悪かったからか、殿堂入り選手でありながら今年のチャールズ・シュワブ・カップに招待されることはなかった。  

コロニアルCCはビジェイにとって因縁の地であり、年を経てもなお受け入れざる地でもあったようだ。

 

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