プロ野球セ・パ両リーグでチームドクターとして活躍した吉松俊一氏は「幼少期からの運動が脳の活性化につながる」という。吉松俊一氏とその息子・吉松俊紀氏の共著「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」(ゴルフダイジェスト社)から、頭のいい子どもを育てるヒントをご紹介。

5歳からできる「目を閉じる足踏みトレ」

運動能力の基本のひとつがバランス感覚(平衡感覚)です。バランス感覚とは、自分の体を平衡に保つ能力のことで、スポーツに限らず生活のあらゆる場面で要求されます。この能力がなければ立っていることもできません。また、大人になっても車酔いに悩む人などは、小さい頃にバランス感覚がうまく発達しなかったことが原因と考えられます。

バランス感覚は、目をつぶって両手を広げ、片足でどのくらい立っていられるかで調べられます。当然、長く立っていられるほど、バランス感覚がいいことになります。

5歳くらいから始められる簡単な運動ですから、最初は3~5秒程度から始め、できるようになったら徐々に時間を伸ばしていきましょう。小学校低学年で15~20秒、高学年で30秒~1分といったところでしょうか。ちなみにバランス感覚は18歳から25歳くらいでピークを迎えます。

目をつぶって、その場で足踏みするのもバランス感覚を磨くにはいい方法です。これも最初は短い時間から始め、慣れてきたら徐々に伸ばしていきます。

バランス感覚のいい人は、最初から最後まで同じ場所で足踏みができます。ところがバランス感覚が悪いと、前後左右に進んだり、その場で回転しているケースもあります。さて、目を開いたとき、自分はどこにいるでしょうか。慣れてくれば徐々にバランス感覚も磨かれ、同じ場所でより長い時間、足踏みができるようになっていくはずです。

矛盾するようですが、バランス感覚はバランスの悪い場所や状況で磨かれます。自転車や一輪車、あるいはスケートやスキーは転びやすい、つまりバランスの悪い状況だからバランス感覚が身につくのです。目を閉じる、片足で立つなどもそうした理由です。

その論理から、床に1本のヒモを置いてその上を歩かせる、フローリングの板の上を走って滑る、あるいはバランスボールやバランスディスクに乗るなど、家のなかでもいろんな方法を見つけられそうです。

ちなみに、バランス感覚とIQ(知能指数)には、密接な関係があるとの報告もあることをつけ加えておきましょう。

バランス感覚を磨くには自転車が良い

バランス感覚を磨くのにもっとも相応しい運動は、なんといっても自転車に乗ることです。小さい頃に乗った経験がないと、大人になってから挑戦しても、なかなか上手く乗れません。たしかに最近の生活は便利になって、自転車に乗れなくても生活ができるという人がいるかもしれません。しかし、例えば大人になっても車酔いに悩まされる人には自転車に乗れない人が多く、それはバランス感覚が身についていないからなのです。

画像: 自転車を運転する練習は、子どもがバランス感覚を養うために効果的だと吉松氏は言う(写真はイメージ)

自転車を運転する練習は、子どもがバランス感覚を養うために効果的だと吉松氏は言う(写真はイメージ)

自転車に乗れるようになるための最初の難関は、なんといっても恐怖心の克服です。

最初から二輪の自転車は無理なので、3~4歳になったら三輪車から始めればいいでしょう。自分でペダルがこげるようになる5~6歳になれば補助輪つきの自転車に進み、さらに親が手を貸しながら補助輪を外すように仕向けていきます。

最初こそ恐怖心がありますが、公園で10分から30分も練習すれば、知らぬうちに乗れるようになるのが自転車です。

また最近ではランニングバイク、キッズバイクと呼ばれる足で蹴って進むペダルのない自転車もあり、これなら早い子どもで1歳半から2歳くらいからできます。こうした経験はバランス感覚を磨くだけでなく、大脳に好影響を与えることのできる運動となります。

自転車に乗れるようになったら子どもの興味によって一輪車、また冬季であればスキーやスケート、スケボーといった「バランスの悪いところ」での運動に挑戦させるのもいいでしょう。また、最近ではロープの上を跳んだり回ったりするスラックラインという競技も注目されています。これらの新競技でオリンピックを目指すのもいいかもしれません。

「頭がよくなる運動教室 オリンピック子育て論」(ゴルフダイジェスト社)より(一部改変)。

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