メンタルのスポーツと言われるゴルフでは、思うように体が動かなくなる”イップス”の症状に悩まされプレーを楽しむことができなくなる人も多い。プロも教えるメンタルコーチ・池努が実際に効果があったイップス改善法を教えてくれた!

イップスの「とらえ方」を変える

イップスのひとつ目の解決策は「認知的再構成法」と言われる、ネガティブな感情につながる「とらえ方」を再構成するアプローチになります。今の状況を客観的に捉え、自分を苦しくさせている「とらえ方」に気づき、バランスの取れるような考え方に変えていくのです。

たとえば、イップスを認識する選手は「イップス最悪だ。これさえなければよいパフォーマンスができるのに。このおかげで結果も出ない……」といような「とらえ方」をしていることが多いようです。しかし、このようなマイナス側の考えをしている限りなかなか状況は好転していきませんので、その「とらえ方」を変えるサポートからスタートしていきます。

その際に「イップスに対してプラスにとらえていきましょう」とはリクエストしません。人から言われて簡単に変わるものではないのです。サポートした選手には実際に次のような問いに答えてもらい、認知を変える手伝いをしていきました。

画像: ティショットでクラブが上げられなくなってしまったら……そんなとき、どうしたらいい?

ティショットでクラブが上げられなくなってしまったら……そんなとき、どうしたらいい?

【1】イップスが克服できたとしたら、今後どんなビジョンを達成していきたいですか?
【選手の答え】ツアーで1勝したい。そして、応援してくれる方に恩返しがしたい。

【2】ツアーで優勝したあなたはこのイップスに対してどう語っていますか?
【選手の答え】あの時期はきつかったけど、もがいてティショットをカバーするために他のスキルが上手くなったことが優勝につながりました。と言っているかもしれません。ある意味「イップスのおかげ」と言っているかもしれません。

このように問いに対して自分の言葉でイップスへの視点を変え、プラス側からのとらえ方を言語化することが重要です。このようなアプローチでイップスに対してのとらえ方を「イップスと仲良く付き合おうと思います」や「長期で見たらイップスのおかげで結果につながるかもしれない」というように認知的再構成を行ってくのです。

このようなプロセスでまずはイップスと付き合うことを前向きに考えてもらうことからがスタートです。そして、次に行ってもらうことが失敗イメージへの対処です。その選手は練習場では普通にティショットを打てるのですがコースに出て“特定の状況”になったときに過去の失敗イメージを嫌でも思い出してしまいます。そして、「またあの球が出てしまったらどうしよう」とセルフトークをすることで、「失敗イメージ」が明確に出てしまっている状態でした。その状態でスウィングすると結果は思わしくなくなります。

イップスを抑える「プレ・パフォーマンス・ルーティン」

これを対処するためにプレ・パフォーマンス・ルーティンを使います。これは「プレーするまでの準備として行動や意識をあらかじめ決めておいた順序とリズムで遂行すること」を指します。ラグビーの五郎丸選手がキック前に行っていたルーティンやイチロー元選手がバッターボックスで行っていたルーティンをイメージすると分かりやすいと思います。

このルーティンがなぜ効果的かというと、ルーティンに集中することで「今に没頭すること」ができ、未来への不安やミスへのイメージのつけいるスキがなくなります。たとえば、コップに入っている水を飲むときに、まず2回深呼吸をする。そしてコップを持つ手の指とコップとの接地面の感覚に意識を向ける。その状態をキープしながら水を飲んでみる。このようにショットに集中せずにルーティンに集中していきます。そうすると、結果的にマイナスイメージをせずに練習通りのショットにつながりやすくなります。実際には次のようなルーティンをつくっていきました。

【1】ボールの後方から球筋イメージをつくる(その際ピンポイントではなく“あのあたりに飛ばそう”くらいの幅を持たせたイメージをする)
【2】深い呼吸を2回して心身のリラックスを促す
【3】 素振りを2回する
【4】自分を5m上から俯瞰してみる(→自分を一度客観視することで今に注意を向ける目的で行う)
【5】 アドレスに入り、打つ

このルーティンで打つ練習を取り入れてもらい、そのままコースでも実践します。そうするとコースでもルーティンに集中することで練習に近いスウィングやボールが出やすくなるはずですし、フェアウェイキープ率も向上します。そして「よし、向上してきた。良くなってきた」という成功体験を積み上げることでイップスとうまく付き合い、イップスと仲良くできるようにサポート選手は変化していきました。そして、最終的には試合でも周りから「良くなったね」と言われるほど改善することができたのです。

ここではイップスへの対処法として実際に過去にサポートしたゴルファーのイップス改善事例をシェアしていきました。イップス改善に少しでも活かしてもらえると嬉しいですね。

画像: 浮島グリーンで寄せ対決!136ヤード池越えのティショット、あなたなら何で打つ? youtu.be

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