昨年ツアールーキーながら全英女子オープン制覇という快挙を成し遂げ、賞金女王争いも繰り広げるなど飛躍的な成長を遂げた渋野日向子。そんな彼女をサポートし、渋野を“しぶこ”と呼ぶコーチ・青木翔は「どんな子でも覚醒のタイミングが訪れる」という。果たしてその条件は? コーチの役割は? 自身の著書「打ち方は教えない」から教えてもらおう。

能力がグンと伸びる覚醒の起こし方

スポーツでは、飛躍的に成績が伸びた選手に「覚醒した」という表現が用いられます。2019年シーズンのしぶこはまさに覚醒した状態でした。

覚醒とは「能力のフタがパッカーンと開け放たれた状態」のことです。

今までできていたことに、どんどんできることが付け加えられてきて、すごく能力が高まったように見える。

画像: 2019年シーズンで全英女子オープンを制し、賞金女王争いに絡んだ渋野日向子(写真は2019年のNOBUTA GROUP マスターズGCレディース 撮影/岡沢裕行)

2019年シーズンで全英女子オープンを制し、賞金女王争いに絡んだ渋野日向子(写真は2019年のNOBUTA GROUP マスターズGCレディース 撮影/岡沢裕行)

いや、実際に高まっているんです。でもそれは、できなかったことが突然できるようになるのではなく、長所にしていた部分が高速で拡張するというイメージです。

ちなみに通常の成長も、長所にしていた部分に肉付けがされていくという構図ですが、覚醒の場合はそれが短期間のうちにとても大きくなるので、突然オ能が花開いたように見えるのです。

コーチも選手も覚醒を意図的に起こすことはできませんが、起きるように準備することは可能です。

覚醒の条件は、選手が自分の長所を把握し、それを使って成果を得ること。武器として持っていた長所を使いこなせるようになったとき、それは起こるのです。

長所の磨き込みが覚醒をもたらす

例えば、よく切れる包丁があったとします。でもみね側を使っていたら、切ることができませんよね。

切れる部分を理解し、そこを意図的に使ってこそ、包丁を使いこなしたことになるのです。

普段の練習や試合は、この覚醒が生まれるきっかけを待つ場です。だから選手が試行錯誤してもがき苦しんでいるのを見ると、「いいぞいいぞ、頭張れ!」と心の中で笑っています。

コーチにできるのは、長所を把握しそれを磨かせておくことです。そして選手が使い方を習得するのを待つ。

どんな人にも必ず長所や、本人が楽しく取り組めることがあります。

まずは一生懸命に取り組める環境を作ってあげましょう。すると、だんだんとその部分が研ぎ澄まされていきます。

そうしたら長所が使える実践の場を作ってあげる。

使いながら磨いていけば、どんな子でも必ず覚醒のタイミングは訪れます。練習で成長を求めるあまり教えすぎたり、試合で結果を求めて焦ってはいけないのです。

「打ち方は教えない。」(ゴルフダイジェスト社)より

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