アイアンセットのピッチングウェッジのロフト40度台前半であることが珍しくなってきた昨今、56〜58度が主流のサンドウェッジとの間を埋めるウェッジ選びが注目を集めている。我々はどうやってウェッジを選べばいいのか? ギアライター高梨祥明が、80年代の名器「EYE2」のウェッジを眺めながら、本当に重視すべきことはなにかを考えた!

PWとSWの飛距離をどう埋めるか。ウェッジ選びはロフト選びともいえるが……。

思うところあり、古いPINGのアイアンを引っ張り出してきた。全世界で100万セット以上売れたといわれる『EYE2』アイアンである。発売は1982年だ。ちょっと脱線するが、この『EYE2』アイアンの次に出たのが『ZING』アイアンで、発売は1992年。つまり、『EYE2』アイアンは10年間、細かいランニングチェンジを繰り返しながらずっと同じ名前で販売されていたわけである。2年に一度にモデルチェンジする現在の商品サイクルを考えると、80年代は腰を据えてじっくりクラブを売っていたのだな、と少し感慨深くなる。

さて、今日の本題はウェッジの選び方である。アイアンのストロングロフト化が進む現代では、アイアンセットのピッチングウェッジに続き、ギャップ、アプローチ、サンドといった複数のウェッジをコンビネーションするのが基本となっている。

ウェッジのフィッティングシステムを確立しているタイトリストのボーケイ デザインウェッジでは、フルショットでの番手間飛距離を均等にするために、ピッチングウェッジのロフトを基準に、4°〜6°のロフト間隔でウェッジをセットしていくといいとしている。例えば、ピッチングウェッジがロフト46°の場合は、アプローチウェッジ52°、サンドウェッジ56°。ピッチングが44°なら、上記に加え48°〜50°のギャップウェッジが必要になってくる。

ここに挙げたのはあくまでもロフトの間隔を基本にしたざっくりとした組み合わせ例だが、ピッチングウェッジとサンドウェッジの間をいかに飛距離の空白なく埋めていくのか。それがウェッジ選びの基本なのだということを改めて強調しておきたい。

では、ロフトの間隔さえ揃えていけばそれでウェッジ選びは終了となるのか? 今回、このテーマを昔の『EYE2』アイアンから始めたのには訳がある。それはロフト選びよりも前にしっかりと考えておきたい大事なことを『EYE2』アイアンが教えてくれるからである。

ウェッジはアイアンにあらず。ユーティリティクラブなのだと再認識したい。

『EYE2』アイアンのウェッジは、ピッチングウェッジ、サンドウェッジ、ロブウェッジの3種類である。それぞれソールに「W」、「S」、「L」とアルファベットが一文字刻まれている。もちろんこれは、Wedge、Sand、Lobの頭文字である。

画像: 1982年発売のPING社のEYE2シリーズのウェッジにはロフト表記はなくバンカーで使うサンドウェッジの「S」と高く上げるロブウェッジの「L」が刻印されている

1982年発売のPING社のEYE2シリーズのウェッジにはロフト表記はなくバンカーで使うサンドウェッジの「S」と高く上げるロブウェッジの「L」が刻印されている

ロフトは何度!? 実はこの時代、ヘッドにロフトは表記されていない。PINGの場合はカタログにも細かいスペック表記はされていなかったほどで、ライ角なども含め、あまり細かい数字は知らなくても良いものだとされていた。それよりも大事なことは、ロフトではなく、このクラブはSand、つまりバンカーでの使いやすさを考えて作ったウェッジですよ、高く上がるLobショットを打ちやすくするために考えたウェッジなんですよ、とわかりやすく伝えることだったのだ。

ご存知の通り、ウェッジとは単なるロフトを大きくしたアイアンなのではなく、バンカーやラフといった難しいコンディションからアプローチを成功させるために考えられた特殊なゴルフクラブである。現代ではユーティリティというとロングアイアン領域をカバーするお助けクラブのイメージがあるが、お助けクラブの元祖はウェッジである。50年代の中盤、ベンホーガン社などから“UTILITY”と刻まれた特殊なウェッジが発売されていたのがその証しだ。今でもギャップウェッジに「U」と刻むブランドもあるだろう。これも元々はユーティリティの頭文字。便利なお助けクラブ、ということだ。

画像: PING EYE2のSandウェッジは他の番手同様のフェースプログレッションが小さいヘッド。エクスプロージョンショットが打ちやすい

PING EYE2のSandウェッジは他の番手同様のフェースプログレッションが小さいヘッド。エクスプロージョンショットが打ちやすい

PINGで『EYE2』アイアンを設計したカーステン・ソルハイム氏は、バンカーショットを容易にするためにはどのような設計とすればいいのだろう? ロブショットを成功させるためにはどのようなクラブにすればよいのだろう? と用途(目的)を満たすための方法論を個別に考えていったのだと思われる。なぜなら、『EYE2』アイアンの「S」と「L」は、同じアイアンセットのモデルとしては作りが全く違うからである。

画像: PING EYE2のLobウェッジは、現在のティアドロップウェッジと変わらないほどの出っ歯系。球を拾いやすく、フェースも開きやすい

PING EYE2のLobウェッジは、現在のティアドロップウェッジと変わらないほどの出っ歯系。球を拾いやすく、フェースも開きやすい

最も異なるポイントがフェースプログレッション(リーディングエッジの出方)である。『EYE2』アイアンの「S」は他の番手同様にプログレッションが小さく(シャフトの中心線とリーディングエッジがほぼ同じ/グース)、「L」はプログレッションが大きく(シャフトの中心線よりリーディングエッジが前に出ている/出っ歯)なっているのだ。

加えて、ソールの形状(バウンスリアクション)も異なっている。アイアンセットのウェッジとして違和感なくフローしているように見えるが、実はそのクラブが使われる状況、そして求められる機能を満たすために、それぞれが“専用道具”として考えられているのである。それが『EYE2』アイアンの素晴らしいところであり、爆発的にヒットした理由だと思うのだ。

現在のウェッジ市場で高い支持を得ているタイトリスト ボーケイ デザインウェッジにはロフトだけでなく、多彩なバウンスバリエーション、そして多くのソール形状(グラインド)が用意されている。これもソールにこそ書いていないが、バンカーから容易に脱出したいならコレ! フェースを開いて高いロブショットを打ちたいならコレ! と、幅位広いニーズ、プレースタイルに対応するために確立されたラインアップである。

画像: 豊富に用意したロフト、バウンス、ソール形状を組み合わせることで、すべてのゴルファーに適した“アプローチお助けクラブ”を提供する、ボーケイデザインウェッジ

豊富に用意したロフト、バウンス、ソール形状を組み合わせることで、すべてのゴルファーに適した“アプローチお助けクラブ”を提供する、ボーケイデザインウェッジ

ウェッジ選びで大切なのは、実はロフトを均等に並べることではない。グリーン周りでどんなショットをしたいのか? 何を救って欲しいのか? どんなライコンディションからのアプローチを容易にしたいのか? そういったクラブに求める自分の気持ちを整理することが最も重要なのだ。ウェッジは決してロフトの大きなアイアンではない。特殊な状況からショットを成功させるために考えられた“特別なクラブ”なのである。

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