プロ転向2年目のコリン・モリカワが「ワークデイ チャリティオープン」で3ホールのプレーオフの末ジャスティン・トーマスを破り通算2勝目を挙げた。最終日を6アンダーの66で追い上げたその切れ味鋭いスウィングをプロゴルファー・中村修が解説する。

PGAツアー再開初戦でプレーオフ負け。再開5戦目に再びプレーオフで勝利

モリカワは、PGAツアー再開1戦目でダニエル・バーガーとのプレーオフに負けたあと、3戦目の「トラベラーズ選手権」で予選落ち。昨年のプロ転向以降一度も予選落ちをしていませんでしたが、その記録は「22試合」で途絶えました。実はこの記録、タイガー・ウッズのツアー記録である25試合に迫るものでその実力は折り紙付きでした。

予選落ちの後、コーチのもとでアドレスから基本に立ち返って調子を取り戻し、5戦目で優勝を手にするところがモリカワの強さを表しています。8歳から通っているというコーチのリック・セシングハウス氏は心理学者でもあり、モリカワのパフォーマンスコーチとして技術、メンタル面を支えています。小さい頃から「自分の能力は努力次第で成長させることができる」とう成長型のマインドセットの持ち主だったというメンタルも、プロ2年目ながら上位で活躍できる秘訣になっていることでしょう。

画像: 「ワークデイチャリティオープン」今季初通算2勝目を挙げたコリン・モリカワ(写真は2019年シュライナーズホスピタルforチルドレンオープン 写真/姉崎正)

「ワークデイチャリティオープン」今季初通算2勝目を挙げたコリン・モリカワ(写真は2019年シュライナーズホスピタルforチルドレンオープン 写真/姉崎正)

スウィングを見てみるとゆっくりとしたテンポで始動するテークバックから鋭く振り抜くスウィングでフィニッシュでのバランスは一切崩れません。上半身と下半身のバランスの取れたスウィングと体の強さを感じます。

彼は昨年の「ZOZOチャンピオンシップ」にも出場していましたので、そのとき取材する機会がありました。持ち味はアイアンのキレだと話していましたが、最終日のプレーは距離感がぴったりでピンの根元に落ちる、まさにキレッキレのアイアンショットを連発していました。

アドレスから見てみると、手元は左ももの内側でボールの位置は左足かかと延長線上とオーソドックス。左手はややウィーク気味に握りそれに対して右手は左手の向きに合わせてかぶせて握るのではなく、横から握っています。モリカワの優れた方向性の良いショットの秘密はこのグリップにありそうです。トップでは右への移動は少なく、頭の位置がやや下がり、前傾角を深く保ちながらしっかりと体の捻転を作っています。

画像: 画像A:オーソドックスなアドレスから前傾角をキープしながらしっかりと体の捻転を作るトップ(写真がは2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

画像A:オーソドックスなアドレスから前傾角をキープしながらしっかりと体の捻転を作るトップ(写真がは2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

モリカワの優れた方向性を表しているのが画像Bの右、インパクトの瞬間の写真です。左手の甲の向きとフェース面がリンクしていることが見て取れ、ややウィーク気味に握った左手のグリップ、そして右手は横から握ったアドレス時の形のままのインパクトで押し込んでいます。きっと、スウィング中のフェース向きをコントロールするためにたどり着いた、モリカワ独自のグリップなのでしょう。

今シーズンのグリーンを狙うショットのランキングで1位(SG: APPROACH THE GREEN)、今週のフェアウェイキープ率71.43%、パーオン率73.61%という高い数値はこのフェースコントロールの技術にあるのではないでしょうか。

画像: 画像B:ダウンで左手首はやや手のひら側に折れ、インパクトでもその向きをキープ。右手もアドレスの向きのまま押し込んでいる(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

画像B:ダウンで左手首はやや手のひら側に折れ、インパクトでもその向きをキープ。右手もアドレスの向きのまま押し込んでいる(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

切り返しで左足を踏み込み回転力に変換する地面反力もしっかりと使っています。今週の平均飛距離は297.5ヤードと決して大きくはない体形から飛距離を稼ぎ、フィニッシュでもバランスを崩さない点は上体の力で打つのではなく下半身の力を使って効率がいいスウィングをしていることを表しています。

モリカワと同世代のマシュー・ウルフ、ビクトル・ホブランらの活躍が見られるPGAツアー。それぞれスウィングも個性的で、見ている側を楽しませてくれています。秋のメジャー大会ではどんな選手が活躍するのか、非常に楽しみです。

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