ゴルファーなら一度は打ちこなしてみたいアイアンといえば「マッスルバック(MB)」形状のアイアンではないだろうか。名器といわれる歴代のモデルと最新モデルを比べてみると形状は似ていても大きく進化しているという。ギアライター高梨祥明がマッスルバックアイアンの最新事情をご案内!

曲がってしまうから難しいのか? 意図的に曲げられるからやさしいのか?

多様化の時代にあってはゴルフクラブも百花繚乱。購入候補を絞り込むにも一苦労する情勢だが、とくに昨今のアイアンの多品種化傾向には驚くばかりである。クラシカルなフォージドMB(鍛造マッスルバック)に始まり、フォージドCB(鍛造キャビティバック)、コンポジット軟鉄CB(異素材複合軟鉄キャビティ)、ポケットCB(高強度金属フェースステンレスキャビティ)、中空アイアンと。「いったいどれが誰向けやねん?」と思わず突っ込んでしまいそうになる多彩なラインナップだ。

選択に悩んだときに用いるのが“消去法”だが、一般的なアマチュアゴルファーがズラリと並ぶ最新アイアンを前にして、「コレはないな」とまず外しにかかるのが、コンパクトヘッドの軟鉄鍛造MBアイアンではないだろうか? 何しろ、 “上級者向け” “プロモデル”と呼ばれている“難しいアイアン”の筆頭だ。いくら最新とはいえ「とても打てそうにない」。そう考えるのが普通である。

画像: 形状は似ていても最新のマッスルバックと歴代のマッスルバック比較すると進化しているポイントはいくつもあるとギアライター高梨祥明はいう

形状は似ていても最新のマッスルバックと歴代のマッスルバック比較すると進化しているポイントはいくつもあるとギアライター高梨祥明はいう

確かに。ヘッドの大きさは最新だからといって大きくはなっていない。大きさでいえば、過去のベン・ホーガンやジャンボMTN IIIプロモデルの方が今どきMBより大きいくらいだ。ミスヒット(打点ズレ)に対する許容性も昔も今もさほど変わりがない。なぜなら、打点をズラしても球筋が変化しないようであれば、その瞬間にMBはその存在意義を失うからである。ボールを曲げたいと思った時に“曲がる”、つまりスピンをコントロールできるからこそ、いまだにMBは米男子ツアーでは主力のアイアンモデルなのである。

曲げたい時に曲がらないアイアンの方がよほど難しい。そう考えるプレーヤーもたくさんいる、ということだ。今どきマッスルがミスヒットに強く、打点をズラしても直進性高く飛んでいくのであれば、わざわざ軟鉄鍛造キャビティを用意する必要はないのではないか? そんなふうに思う次第である。

では、最新のMBアイアンが過去のMBと同じで、まったく進化をしていないのか? といえば決してそうではない。主な進化ポイントは次の通りである。

●鍛造技術の進化による製品精度の向上
●フェースの平面精度向上・スコアライン(溝)の精密化
●フリーウェイトを生かした緻密な番手別重心設計(ホーゼル長の変化)
●ソール形状の変化

簡単にいえば、現在のMBアイアンは過去のアイアンよりも精度高く作られている。精密鍛造と呼ばれるプレス成形を繰り返し行ったり、機械加工でミルド成型(掘削機で削って成型する)することで個体差なく設計通りに仕上げることが可能になっているのである。

昔のアイアンは購入したらまず工房に持ち込んでスペック合わせをしなければならなかったが、現在のアイアンは昔に比べればとても精密なのだ。もちろん、細かい調整は今でも必要。そのために調角(ロフト・ライなどの変更)ができるという意味で、軟鉄鍛造ヘッドが上級者には人気なのである。

クラシカルなバックフェースデザイン。コンパクトなヘッド形状。だからMBは難しい!?

最新MBというキーワードで注目していただきたいのが、ソール形状の変化である。今回は手持ちのアイアンから名器と呼ばれる、ベン・ホーガン プレシジョン(パーソナルの原型/53年製)、ジャンボMTN IIIプロモデル(ブリヂストンスポーツ/86年製)、そして最新MBとしてタイトリスト620MBのソールを比較してみた。

画像: 左からタイトリスト 620MB/ジャンボMTN III/ホーガン プレシジョン

左からタイトリスト 620MB/ジャンボMTN III/ホーガン プレシジョン

昔のモデルほどソールが平らになっており、最新MBは丸みを帯びたソールになっていることがわかるだろう。この“キャンバー”と呼ばれる丸みを帯びたソールデザインが、クラシックMBから今どきMBに至る過程で最も変化した点だといえるのだ。タイトリスト『620MB』の開発担当者マーニ・アイネス氏(タイトリストゴルフクラブR&Dアイアン開発ディレクター)は、筆者のインタビューにこう答えている。

「620MBの大きく進化したポイントは、まさに“キャンバーソール”にあるのです。ソールの丸みを強調することでインパクトでのソールリアクションを強調。そうすることでヘッドがスムーズに抜けてくれるため、インパクトの安定化を図ることができるのです。もちろん、ウェッジのバウンスのようにヘッド入射の誤差を緩和するという効果もあります。これは多くのツアープレーヤーとテストを重ねながら作り上げた進化したソールデザイン。620MB/CBだけでなく、Tシリーズアイアンにもこのキャンバー設計を取り入れています」(マーニ・アイネス)

ホーガン・プレシジョンやジャンボMTN IIIは名器アイアンと呼ばれているが、そのソール形状はどちらも“スクープ”である。ソール全体が平らでバウンス角も付けられていないため、少しのダフリも許してくれない厳しさがある。昔のMBアイアンは、ダフったらヘッドが地中深く潜ってしまい抜けなかった。だから“難しい”と言われていた面もあるのだ。

画像: この秋発売!?と噂されているTOUR BのニューMBアイアンも、やや丸みのある最新ソールで抜けが良さそうだ

この秋発売!?と噂されているTOUR BのニューMBアイアンも、やや丸みのある最新ソールで抜けが良さそうだ

筆者は普段、タイトリストの『620MB』を使っているが、やはり過去のマッスルとは明らかに違う振り抜けの良さ、インパクトポイントの多少のズレを救ってくれる“バウンス的な補正効果”を確かに感じている。たまにジャンボMTN IIIやミズノプロTN-87などを打ってみるが、やはりオールドアイアンは、インパクトポイントのズレには非常にシビアだ。MBが難しいと言われるのは、よく言われるフェース面上での打点ズレではなく、ヘッド軌道の最下点のズレに対する許容性のなさにある。最新MBアイアンと打ち比べてみるとそのことがよくわかるのである。

ボールが上がりにくいクラブは“難しい”と思われてしまいがちだが、もともとMBアイアンは、ロフトがノーマルに近いため、同番手比較なら今どきのストロングロフトモデルよりも高さは出しやすい。加えてバックスピンが多めにかかるのでグリーンに止めやすい。ターゲットを狙っていくという点では、非常に扱いやすいモデルなのである。重心距離も短めで、フェースの開閉を自分の感覚で調整できるというメリットもある。

7番で200ヤード飛ばしたい!というニーズを満たすことはできないと思うが、打ってみると意外に思った方向に、安定して飛んでいってくれるのがMBアイアンの魅力だと思う。最新MBの進化したソールが、ある程度の軌道のズレも補正してくれる。消去法で「コレはないな」と購入候補から外す前に、今一度最新MBの“ソール力”を体感していただきたい。MBは難しいのではなく、気持ちいい! そう感じるゴルファーも少なくないはずだ。

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