今季メジャー初戦「全米プロゴルフ選手権」を制したコリン・モリカワ。23歳にして並いる強豪に競り勝ったスウィングをプロゴルファー・中村修が解説する。

ショット、パット、アプローチともに冴え渡った最終日のモリカワですが、イーグルを奪った16番の短いパー4のドライバーは圧巻でした。今週のアベレージと最終日を比べてみると、アベレージ290.5ヤードに対して301.5ヤード、フェアウェイキープ率はアベレージ69.64%に対して85.71%と飛んで曲がらなかった最終日のドライバーショットが大きく貢献したことを表しています。

画像: 全米プロを制したコリン・モリカワ(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

全米プロを制したコリン・モリカワ(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

「予選落ちより優勝回数の方が多い」というのが彼の代名詞になるくらいで、昨年6月のプロデビュー以来予選落ちは、ツアーが再開した今年6月末の「トラベラーズ選手権」のわずかに1試合のみ。その後、7月の「ワークデイチャリティオープン」で優勝し、やるべきことが見えて自信を深めていたことがメジャー初制覇につながったことでしょう。

スウィングを後方から見てみると、スウィング中のフェースの使い方が見えてきます。グリップは左手は手の甲をターゲット向けて握るウィーク気味のグリップで右手は親指と人差し指で作るV字が右肩を指すオーソドックスなスクェアで握ります。そして、テークバックの早い段階から左手首を手の平側に折るように使いフェースを開かずにバックスウィングします(画像A)。

画像: 画像A:左手首を手の平側に折り、フェースを開かずにバックスウィングしている(写真は2019年のシュライナーズホスピタル 撮影/姉崎正)

画像A:左手首を手の平側に折り、フェースを開かずにバックスウィングしている(写真は2019年のシュライナーズホスピタル 撮影/姉崎正)

切り返してからは左手首はさらに手の平側に折れるように使い、フェースをボールに向けてダウンスウィングしてきます。タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンのようにフェースの開閉を使うタイプに比べて、ダウンスウィングでフェースを開かずに下ろしてくるタイプ。インパクトでは手元が先行しハンドファーストが強くなります。

スピン量の多いクラブとボールをフェースの開閉でボールを操るのではなく、スピン量の少ないクラブとボールで育った23歳らしい今どきのスウィングだと言えると思います。

画像Bのインパクトを見ると、体が半身になるくらいしっかりと回転しボールを押し込むように使っています。フェースを開かずに閉じたまま下ろして来るので、体を止めてリリースすると左に引っかかってしまいます。最終日の優勝争いの中でもしっかりと体の回転量を確保して打てていました。この自分のスウィング、攻めのスタイルを貫いたことがメジャー初優勝を引き寄せた大きな要因だと思います。

画像: 画像B:フェースを開かないぶん、しっかりと体を回転させ、ボールを押し込むようにインパクトしている(写真は2019年のシュライナーズホスピタル 撮影/姉崎正)

画像B:フェースを開かないぶん、しっかりと体を回転させ、ボールを押し込むようにインパクトしている(写真は2019年のシュライナーズホスピタル 撮影/姉崎正)

7234ヤードパー70とタフなセッティングでしたが、175センチ、77キロと決して大柄ではない日系米国人がメジャー制覇したことは、日本選手にも大きな可能性を示してくれたのではないでしょうか。

同世代のマシュー・ウルフやスコッティ・シェフラーも4位タイに入るなど若い世代の台頭著しいPGAツアー。世界ランキングも目まぐるしく入れ替わり、まさに群雄割拠の様相を呈しています。新型コロナウイルスの影響で変則的なスケジュールではありますが、この先に控える全米オープンやマスターズが益々楽しみになって来ました。

This article is a sponsored article by
''.