渋野日向子が連覇を目指した「全英女子オープン(AIGオープン)」の2日目。寒く強風に雨も混じる難コンディションの中、渋野は無念の予選落ちとなった。敗戦の中から、渋野はなにを学んだのか。また他の日本勢はいかに戦ったのか。プロゴルファー・中村修がレポート。

全英女子2日目、グリーンは初日の8.1フィートに対して2日目は8.11フィートと同等のスピード。グリーンの硬さは雨のため少し柔らかくなっているという発表がありました。風は9メートルから14メートル、風向きは海からの方向に変わり、前半アウトコースは右からの風、後半は左からの風になります。気温は19度。ときおり冷たい雨が吹き付ける、初日に引き続き難コンディションでの2日目になりました。

渋野日向子はトータル12オーバー

2日目の渋野日向子選手は出だしから連続してパーを並べ、幸先よく3番でバーディを奪う上々の滑り出し。しかし、この難コンディションの状況では、わずかなほころびも見逃してはくれませんでした。5番でボギー、7番でダブルボギー、8番のパー3でもバンカーに入れてボギーとし、結局前半は3オーバーで折り返します。

後半は10番でボギーのあと、しばらく耐えていましたが、15番で3パットでボギー。その後も左からの強風に翻弄され17番、18番もボギーとし、後半は4オーバー、2日目は7オーバーで終えました。予選ラウンドの2日間はトータル12オーバー。9オーバーのカットラインに3打及ばず、105位タイで予選落ちとなりました。

画像: アイアンの不調もあり12オーバー(105位タイ)で予選敗退した渋野日向子(写真/getty images)

アイアンの不調もあり12オーバー(105位タイ)で予選敗退した渋野日向子(写真/getty images)

2日間を振り返ってみると、ドライバーでのティショットは復調を感じられます。初日は14回使用のうち10回、2日目は11回のフェアウェイをキープしていました。しかし、多くの場合フェアウェイから打っていたにも関わらずパーオン率は50%と、アイアンショットが不調。会見では、自分でもコントロールできていないと話しました。

「ティショットがよくなってきていた分、なんでアイアンにつながらないのか、というのがあって。しっかり体を止めずに回すことができれば真っすぐ飛ぶのに。終わってからの練習ではすごくいい動きができるのですが、なかなか試合になると自分が思ってもいない動きをしてしまうので、自分でもコントロールできていない状態です」(渋野)

結果的には、先週のスコットランド女子オープンに続いて2戦続けて予選落ち。本人いわく「悔しすぎる」2週間になりました。

「楽しんでやろうと思っていましたが悔しい気持ちがすごいですね。この2週間で自分の足りないところを全部見つけたような気がした。いつまでも経験、経験とは言っていられないので、本当にいろんなものを見つけたなと思いました。たとえば、(グリーンの)外からパターを打つ概念がなかったが今週は挑戦し、新しい発見がありました。クッションを使うこともバリエーションが増えました。あとは足りないものばかりでした。悔しすぎるなと思いました」(渋野)

昨年までの渋野日向子選手は、ショットはドローボール一辺倒、アプローチはサンドウェッジのピッチエンドラン一本槍と数少ない武器を使って攻めるゴルフで活躍しました。

その後、オフの期間に2月の海外での試合に向けて体を強化し、仕上がりは上々でした。そこからコロナ禍によるツアーの中断を受け、来季の米ツアー参戦を目指し、前倒しして浮かせるアプローチなど、新たな技術の習得に努めていました。

増えた引き出しは試合の中で実践し、自分のモノにしていくことになりますが、試合が少ない中でまだつかみ切れていないというのが現状ではないでしょうか。しっかりとチームで取り組んでいるので心配ご無用です。この後、渋野選手は渡米し米ツアーに参加すると言いますが、その中で成長を見せてくれることと思います。

野村敏京、上田桃子、畑岡奈紗選手は予選通過

7選手が参加した今回の全英女子オープン、日本人選手は3人が予選を通過しました。

日本勢トップは野村敏京選手。バーディを5つ奪い1アンダーで回りトータル2オーバー(9位タイ)で見事に予選通過しました。強い横風が吹く中でも「昨日よりも距離感を合わせやすかった」と言い、トップと3打差で週末の優勝争いの展望を聞かれると、「天候もどうなるかわからないし、この2日間のゴルフを貫くこと」と語りました。

上田桃子選手は4オーバー(52位タイ)で予選を通過しました。徹底的にバンカーを避けるマネジメントが功を奏しているといいます。かつて米ツアーで戦ったこともあり、「改めて海外で頑張っている選手の精神力や引き出しの多さ、強い選手とやるのは楽しい」と話していました。辻村明志コーチとの二人三脚で残り2日間頑張る姿を私たちに見せてくれることでしょう。

画像: バンカーを徹底的に避けるマネジメントが功を奏し52位タイで予選を通過した上田桃子と(左)キャディを務める辻村明志コーチ(写真/getty images)

バンカーを徹底的に避けるマネジメントが功を奏し52位タイで予選を通過した上田桃子と(左)キャディを務める辻村明志コーチ(写真/getty images)

畑岡奈紗選手の2日目は6オーバー、トータル9オーバー(64位タイ)でギリギリ予選を通過。風の影響で強い球を打とうとして上半身に力が入り、余計にコントロールができなくなると話し、苦しいラウンドになりましたが、粘り強さで予選を通過するところはさすがに世界ランク5位の実力者です。

会見ではショートゲームとパッティングを課題に挙げましたが、状況にアジャストして上位進出することを期待します。

画像: 予選カットライン上のプレーで粘り64位タイで予選を通過した畑岡奈紗(写真/getty images)

予選カットライン上のプレーで粘り64位タイで予選を通過した畑岡奈紗(写真/getty images)

河本結、勝みなみ、稲見萌寧は予選通過ならず

初日は95点の出来と語った河本結選手でしたが、2日目は9オーバー、トータル13オーバー(116位タイ)で予選敗退。いいショットだと思っても結果が伴わないと言い、「まだ整理ができていないが改めて全英女子オープンで勝ちたい、勝つためにしっかり準備していきたい」と話していました。

ルーキーとして米ツアーで戦う河本選手。一緒にプレーした選手や上位選手との差について質問すると、こんな答えが返ってきました。

「ゴルフには運や流れがつきものだと思いますが、流れやチャンスはみんなに回ってきて、そのチャンスや流れを自分に引き寄せないと相手のペースに飲まれていってしまう。そこはしっかり自分が成長していかなければならない部分と感じました」(河本)

強い選手は、流れやチャンスをつかむ能力が高いということでしょう。そのためにはなにが必要なのか、前を向いて課題に立ち向かい、成長する姿を見せてくれるでしょう。

勝みなみ選手は、5番ホールまでパーを並べますが7番でダブルボギー、9番でボギーとし3オーバーで折り返します。後半は5オーバーで2日目は8オーバーで終え2日間トータル13オーバー(116位タイ)で予選敗退しました。「(リンクスのゴルフは)日本だと経験できないので楽しめた、低く打つ打ち方など間近に見て学べた」と話しました。

稲見萌寧選手は8オーバーでトータル14オーバー(123位タイ)で終えました。「途中で心が折れすぎて真っすぐになった」と独特の表現で話していましたが同組でプレーしたパワーのレキシ―・トンプソンと元世界1位のパク・インビから学ぶことが多かったようで、多いに今後の糧になったようです。

予選敗退した4名も収穫の多い1週間になったようです。予選を通過した野村敏京、上田桃子、畑岡奈紗の3選手は週末もタフな戦いが予想されますが存分に力を発揮して、優勝争い、上位争いをして欲しいところです。

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