昨年ツアールーキーながら全英女子オープン制覇という快挙を成し遂げ、賞金女王争いも繰り広げた渋野日向子。そんな彼女をサポートしているコーチ・青木翔は選手とのコミュニケーションで「怒り方」にとくに気をつけているという。果たしてどういうことか、自身の著書「打ち方は教えない」から教えてもらおう。

モチベーションを下げない怒り方のコツ

僕が選手とのコミュニケーションで、特に気をつけているのが怒り方です。

これは諸刃の剣で、使い方を間違えるとモチベーションを下げ、選手との信頼関係を傷つけてしまうこともあります。

怒るときにもっとも重要なことは自分の感情まかせにならないということです。感情で怒ってしまうと、こちらの伝えたいことのほぼ100%が彼らに届きません。

画像: しぶこのコーチは選手とのコミュニケーションで怒り方をとくに気をつけているのだという(写真は2019年のNEC軽井沢72ゴルフトーナメント 撮影/大澤進二)

しぶこのコーチは選手とのコミュニケーションで怒り方をとくに気をつけているのだという(写真は2019年のNEC軽井沢72ゴルフトーナメント 撮影/大澤進二)

子どもにとって怒っている大人というのは、僕らが思っている以上に怖い存在です。おっかない顔をして、大きな声と強い言葉で付け入る余地がない。

怒られたほうは「怒られている」という事実だけが強く残ります。そんなとき、小中学生の子どもたちは、残念ながら怒られている理由なんてこれっぽっちも分かっていません(笑)。

これは大人でも同じことが言えます。毎回感情的に怒られていたら、「この人は自分のことが嫌いなんだ」とか、「威圧的だから嫌だ」という気持ちが先立ってしまうでしょう。

そうすると伝えられた内容が自分にとって的確なアドバイスだったとしても、それを頭に残すのは難しくなってしまいます。

例えばラウンド中にふざけていたり、他人の邪魔をしてしまった子がいたとします。ラウンドで楽しむことが目的だったり、「レッスンでのラウンドは真剣にやるべき」ということが理解できない子は仕方ありません。

怒られている理由を理解すればその先の気づきの到達も早くなる

でもそうではない段階にいる子には、ときに怒らなければなりません。

そこで気をつけたいのが、最初にこちらが「怒っている理由」を説明するということです。

それをしなければ、大半の選手は「スコアが悪かったから」とか「事前の目標が達成できなかったから」という理由で怒られているものだと思い込んでしまいます。

だから「このラウンドは各ショット、自分のプレーに集中することを目標にしていたのに、それをせず同伴者とふざけていたから怒っているんだ」ということを話の冒頭で伝えます。

それを怠ると「楽しいからやってみた→怒られた→つまらない→取り組みのやる気低下」という思考に、陥ってしまうでしょう。

もちろん僕だって、こんな毎回こんなに冷静に賢者のようにコミュニケーションができているわけではありません。時には強く言ってしまうこともある。

特に子どもと一緒に過ごす時間が長い親御さんは、条件反射的に怒ってしまうこともあるでしょう。

でもそのトーンで話をしたら、相手はどう受け止めるかを一度考えてから「怒る」という手段を使ってみてください。

「打ち方は教えない。」(ゴルフダイジェスト社)より

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