有村智恵選手は2008年に初優勝を遂げると2009年には5勝を挙げ賞金ランク3位へと躍進します。以降2010年に1勝、11年、12年は3勝と順調に勝ち星を重ね米ツアーへと旅立ちました。2017年に国内ツアーに復帰後、2018年の「サマンサタバサ・ガールズコレクションレディーストーナメント」で復活優勝を挙げました。2019年の賞金ランキングは32位で終えています。
今シーズンの有村選手は、河本結を初優勝に導いた目澤秀憲コーチを迎えて行なっているスウィング調整の成果が早々と出ているようです。初戦の「アース・モンダミンカップ」では予選落ちに終わったものの、実戦での感覚をつかんだ2戦目の「NEC軽井沢72」では最終日に66と追い上げ4位フィニッシュ。3戦目の「ニトリレディス」では3日目に65でプレーし39位タイから6位へとジャンプアップし6位タイでフィニッシュ。8月31日から2日間の日程で開催された日本女子オープンの最終予選も8位タイで通過しています。
昨年までと比べると明らかにショットのキレが増し、バーディが獲れるゴルフになっているようです。そのことでまだ今季は3戦目ですがパーオンした際のパット数が52位から7位へとスタッツにも表れています。これは、もちろんパット力が向上したとも言えますし、それだけショットが“ついている”とも言えます。
そのスウィングを詳しく見ていきましょう。まずは画像A左。グリップはオーソドックスなスクェアグリップ。大胸筋に少し緊張を持たせるように胸を張った姿勢がキレイです。足裏全体でしっかりと地面を踏みしめているどっしりとしたアドレスです。
画像A右のトップでは体の運動量(回転量)に対して両腕の運動量が少ないコンパクトなトップを作っています。このコンパクトなトップがキレのあるアイアンショットを生むポイントになっています。体が回らずに腕だけでトップの形をとるような体の運動量(回転量)に対して腕の運動量が多いスウィングだとヘッドスピードのコントロールが難しくなり、距離感が合わせにくくなります。
有村選手の場合は両腕と体の運動量が比例しており、クラブを遊ばせないことでコントロール性の高いアイアンショットにつながっています。
そしてもう一つ、気づいた点は以前よりもテークバックでの右への移動が少なくなっています。頭の位置が右のひざの上くらいまで移動している印象がありましたが、今季は右股関節の上にあります。それでも右股関節とシャツにシワが確認できることから体の捻転はしっかっりと確保されています。
画像Bの左を見ると、左足をしっかりと踏み込んで切り返し、フェードヒッターらしくクラブが少し立って下りて来ていますが、昨年よりはややインサイドから安定した軌道で下りてきているように感じられます。右のインパクトでは左手首が前腕と一直線(フラット)になることでフェースをスクェアに戻し、しっかりとボールを押すように使えていることが見て取れます。
なにより有村選手の持ち味であるキレのあるアイアンショットが復調して来たたことで、伸ばし合いの展開でも上位で戦えるパフォーマンスを見せています。もともと実力は非常に高いものを持っているので、試合を重ねるたびに手応えを感じていることと思います。2018年以来の優勝も近いのではないでしょうか。