連覇がかかった全英女子オープン(AIGオープン)を含むスコットランドでの2試合で予選落ち。その後渡米してからの2試合では復調の兆しを見せる渋野日向子。海外4戦を終えてこれまでの戦いをプロゴルファー・中村修が振り返った。

連覇のかかる全英女子オープンに向けて、前週の8月13日からの「ASIスコットランド女子オープン」に出場した渋野日向子選手。リンクス特有の風やバンカー、グリーンに翻弄され14オーバーで予選落ちします。

オフとコロナ禍による中断期間に会得したはずのアプローチやショットのバリエーションはできるときとできないときの差が大きく、上手く機能しません。

画像: ディフェンディングチャンピオンで臨んだ「全英女子オープン(AIGオープン)」でもリンクス特有の風に翻弄され無念の予選落ちに終わりスコットランドをあとにした(写真/R&A)

ディフェンディングチャンピオンで臨んだ「全英女子オープン(AIGオープン)」でもリンクス特有の風に翻弄され無念の予選落ちに終わりスコットランドをあとにした(写真/R&A)

そして翌週「不安なままスタートした」という全英女子オープンで2戦連続の予選落ち。この2連戦で青木翔コーチたち“チームしぶこ”の面々はドン底を味わうことになったと思います。なんとか浮上のきっかけをつかもうと、土曜日、日曜日と練習場で球を打ち続けました。そして、ここで青木コーチとは一旦別れ、チャーター便で「ANAインスピレーション」からの4戦を戦うアメリカへと旅立ちます。

そして2週間のオフを経て臨んだメジャー2戦目「ANAインスピレーション」の初日、光明が見えます。クロスハンドにしたパッティングスタイルが功を奏して2アンダー19位タイでフィニッシュ。今季初の予選通過が見えてきました。

この間渋野選手は青木コーチが帰国していたこともあり、「自分で考えながら練習する」ということを続けていたと言います。記者会見で、2週間の間にどんなところを意識していたのかを聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

「攻めの気持ちを忘れていた部分があったのか、この2週間はグリーンが速かろうが遅かろうがピンを狙っていく練習をして、しっかり振り切ることを考えて。青木コーチに動画を送ったのも3回くらいしかないので、あとは自分で考えながら、キャディの(定由)早織さんと距離感を覚えて、攻めのゴルフの練習をしていました」(渋野日向子)

ショットに不安を持ちながらの連戦でメンタルもショットも消極的になっていた、渋野選手本来のプレースタイルにもう一度戻ろうという意思の力でドン底から復調して来たことが感じられました。

結果、「ANAインスピレーション」は見事予選を通過。約10カ月ぶりの4日間のプレーということもあり最後はスコアを崩して51位タイでフィニッシュしましたが、ドン底から這いあがり、手応えを実感した1週間になりました。そして「カンビア ポートランドクラシック」ではショットが切れ、グリーン上では苦しんだものの24位タイでフィニッシュしています。

画像: 渡米後「ANAインスピレーション」「カンビアポートランドクラシック」では復調を見せ2試合とも予選を通過。残る2戦へ明るい兆しを見せた(写真/LPGA Gettyimages)

渡米後「ANAインスピレーション」「カンビアポートランドクラシック」では復調を見せ2試合とも予選を通過。残る2戦へ明るい兆しを見せた(写真/LPGA Gettyimages)

スコットランドでの2週間は慣れないリンクスの風や地面の硬さ、バンカーに翻弄され予選落ちに終わりましたが、渡米後はゴルフの内容もメンタル面も調子を取り戻し、攻めるゴルフがよみがえってきました。1週間のオープンウィークののち、残り2戦「ショップライトLPGAクラシック」、「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」と続きます。調子を戻したとはいえ、優勝争いのためには越えなければならない壁もあります。

「カンビア ポート クラシック」最終日のピン位置をご覧ください。米ツアーのセッティングをみると、ピンの位置がえげつないくらい前後左右に振られていることがわかります。

画像: 「カンビアポートランドクラシック」最終日のピン位置(提供LPGA)

「カンビアポートランドクラシック」最終日のピン位置(提供LPGA)

エッジから3ヤード、4ヤードとグリーンの形状や傾斜の度合いにも関係していると思いますが、かなりシビアなピン位置が設定されています。このシビアなピン位置でも、優勝したジョージア・ホールは4アンダー、1打差3位のアリヤ・ジュタヌガーンは5アンダーとスコアを伸ばしてフィニッシュしています。

ピンを攻めるスタイルでこれだけピンを振られるとショットの正確性はもちろんのこと、パッティングの重要性も高まります。米ツアーの2戦で渋野選手と同組でプレーした選手たちのパッティングを見ていると、本当によく入ります。ピンチを切り抜け流れを切らさないですし、悪い流れでもそれを断ち切るパッティングを決めてきます。

「カンビア ポートランド クラシック」の最終日の渋野選手はそんなパッティングができていました。しかし、2つスコアを伸ばしたものの順位は下がってしまっています。ピンが振られた最終日にスコアを伸ばすことは米ツアーでは非常に大きな意味を持ちます。

「試合の中で成長する」と青木コーチが評する渋野選手のスウィングは、現在でも少しづつ変わってきています。改造……という言葉とは少し異なり、マイナーチェンジを止まることなくし続けているという感じです。それも、米ツアーのセッティングに合わせて。

試合の中で課題を見つけ、練習し、手に入れた技術を試合で試すことで成長する。要するに、やっていることは昨年と同じです。ただ、米ツアー参戦を見据え、より高いレベルのショットやショートゲームが求めて、練習や試合をこなしているというふうに見えます。

今シーズンから取り入れているロブショットも、シビアなピンポジを攻め、グリーンを外したときにどうしても必要となるショットです。メジャーのセッティングとなればなおさら必要となります。求められる技術、ひとつひとつに対応し、身につけていく段階なのでしょう。

約2か月に渡る海外遠征も残るは2戦。経験し学び収穫したことを存分に発揮し、笑顔で終えて欲しいと思います。試合の中で成長する姿を楽しみに見届けたいと思います。

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