全米オープンでのブライソン・デシャンボーの圧勝劇はゴルフ界の大きなニュースだ。それは彼がこれまでとはまったく違う概念で全米オープンという世界最高峰の大会を“征服”したから。なにをやっても話題になる彼のメジャー初優勝の意義と湧き上がる議論とは?

ニクラスらレジェンドたちは飛び過ぎを危惧

トッププロたちがスコアメイクに苦しんだ決勝ラウンド。ただひとりまるで違うコースをプレーしているかのような痛快なゴルフで後続に6打差をつけ優勝したデシャンボー。

「ハードワークが報われた」と感無量の27歳にレジェンド、トム・ワトソンやゲーリー・プレーヤーはすぐに祝福のコメントをSNSにアップし「これからキミが勝つであろう多くのメジャーの1勝目だ!」と賞賛した。

画像: 圧倒的な飛距離を武器に全米オープンを制したブライソン・デシャンボー(写真は2020年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

圧倒的な飛距離を武器に全米オープンを制したブライソン・デシャンボー(写真は2020年のWGCメキシコ選手権 撮影/姉崎正)

8位タイに終わったローリー・マキロイは「自分たちが全米オープンはこう戦うべきという概念の真逆をいった優勝だった」とため息。

フェアウェイが狭くラフがきつい。グリーンもその周りもトリッキーで厄介な全米オープンのセッティングにおいて、選手たちがまず心がけたのがラフを避けフェアウェイをキープすること。それがマキロイのいう全米攻略のセオリーだった。

ところがデシャンボーはフェアウェイを無視するかのように全力で飛ばしくるぶしほどの深いラフからいとも簡単(決して簡単ではないはずだが)にグリーンを狙うスタイルでアンダーパーを連発した。

74年に今回の舞台ウィングドフットで全米オープンを通算7オーバー(デシャンボーは6アンダー)で制しているヘール・アーウィンは「彼は素晴らしかった。でも我々には考えられない。フェアウェイを外せばペナルティを払わされるのが全米の難しさだったのに、彼はラフにつかまることを恐れていなかった。どこまでも遠くに飛ばす自らのスタイルでタイトルを勝ち取った」とコメント。

「一方でこれがゴルフというゲームの伝統を壊してしまうのではないかと危惧してしまう。どうすればいいか名案があるわけではないがボビー・ジョーンズから続いてきたゴルフのレガシーがここで途切れ、違うゲームになってしまうのではないのか?」(アーウィン)

ジャック・ニクラスやコリン・モンゴメリーもコース設定の観点からも飛びすぎを危惧し「プロには飛ばないボールを使用させた方がいい」と持論を展開する。

そんな議論もデシャンボーはどこ吹く風。「テクノロジーが進化したからといってそれを使いこなしているのは自分の肉体。血の滲むようなハードワークが結果を生んでいる。科学的見地から挑戦してきてこれまで間違ってきたことはなかった」と“自らの力量”を強調した。

練習ラウンドをよく一緒にするタイガー・ウッズも「彼はいかに距離を伸ばし、かつそれを効率的に行うかを自分で解明してきた。多くの時間と試行錯誤を重ねながらね」と後輩の努力を評価する。

横綱の品格が話題になるのは相撲界がその伝統を守ろうとしているからだろう。翻ってゴルフ界は伝統と進化の間(はざま)で揺れているように見える。レジェンドたちの守ろうとしているゴルフの品格とは?

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